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一章 魔王城へ
十話 神の子
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「こ、こんな所で寝たら凍え死んでしまいますよぉ…!」
「…そうだな」
肩を抑えてガタガタと震える。春に近づいているとは言え、夜は流石に寒いーーーせめて城下町の中のどこかにいたかった。判断を間違えた。
「火を付けられないんですか?」
「もう火種がない」
「そんなぁ! ツバキさんどうにかならないんですか!?」
メグリが腕にしがみつく。真っ暗で顔は見えないが、輪郭が震えているのが見えた。
「……適度な運動でもすればいいんじゃないか?」
「て、適度な運動…?」
「なあ、さっきそういう場面を見たからって変に意識するなよ」
「し、してませんよ!」
「でも汗かいて余計に冷えるか…」
「じゃあ眠いかもしれないが、先に進むぞ」
「そうですね、それしかないです」
眠い目を擦って立ち上がり、空を見上げながら進んでいく。町から離れる程光は消え、地面の段差に時々つまずく。
眠気でフラフラして来た時、遠くに小さな光が見えた。家だろうか?
メグリの手を引いてそこへ近付く。
段々光が大きくなってくると、窓だと分かった。オレンジ色の光が漏れている。
「よかった…ちょっと泊めてもらいましょう」
「流石に眠いな…」
窓に近付き、中を覗き込んだ。
奥にはベッド、そしてその上にはリンゴを食べていないアダムとイブと同じ格好をした男女がいた。
「お前らもかよ!!!」
「貴方達もですか!!!」
【十話】
怒っている中年夫婦から馬小屋と藁を借りた。
臭いが気になるが外よりはマシである。
少ない藁を被ると、2人ともすぐに眠りについた。
中年夫婦に礼を言って小屋を出て次の街へと向かう。昨日の疲れもあって徒歩は辛い。
「昨日は2度も酷い目に合いました」
「見ても良いもんじゃねえな、ああいうのは」
「悪いのは私達なんですけどねー…」
「これからは夜に人の家覗くのはやめよう」
夕方、大きな屋敷を見つけた。石でできた壁に青い屋根、小さな柵で周りが囲まれている。
扉の前に行って戸を叩く。
少しして老夫婦が出てきた。
「地図ありませんか?」
「地図? はい…ありますよ」
老婆は奥へ行き、黄ばんだ紙を持って戻ってきた。
地図をみると、ここは町から離れていることが分かった。
「…遠いな。馬小屋かしてもらえませんか?」
「馬小屋? 泊まるのかい? それなら遠慮せずとも部屋をかしてあげるよ」
「ありがとうございます」
部屋は前の街と内装はあまり変わらないものの、ベッドが二つあったのでメグリは喜んで寝っ転がった。
簡単な夕食も出され、それを食べると部屋へ戻ってベッドに座る。
まだ眠くはないが、とりあえず布団に入った。
「なあ、その三秒時戻せる魔法は誰でも使えるのか?」
「いえ、基本大魔術師の家系でないと使えず、この世界だと100人程度といいわれています」
「お前はその家系なのか?」
「いえ…何故か才能があったみたいなんですよね。もし家系だとしたら他の魔法も使えるはずですし…」
「すごいじゃんか」
「いえいえ全然。他の方は皆10分以上は戻せますよ。戻した分だけ冷却時間があるみたいですが」
「じゃあ凄くないな」
「ひどい…使えるだけでも大したものなんですよ」
「でも三秒だろ……」
そうこう話している内に眠くなり、いつの間にか2人とも眠りについた。
起きたのは深夜、少し物音がして目が覚めた。
聞こえるのは微かな声で、最初は隣で自慰っているのかと思ったがそうでもないらしい。
よくよく聞くと、それは悲鳴だった。
「おいメグリ、起きろ」
「むにゃ…ん…なんですかぁ?」
「悲鳴が聞こえる」
「え…? ……ホントです、なんでしょう」
「見に行くか?」
「はい」
メグリはベッドから出て起き上がる。
そして2人でこっそり部屋から出た。
「…そうだな」
肩を抑えてガタガタと震える。春に近づいているとは言え、夜は流石に寒いーーーせめて城下町の中のどこかにいたかった。判断を間違えた。
「火を付けられないんですか?」
「もう火種がない」
「そんなぁ! ツバキさんどうにかならないんですか!?」
メグリが腕にしがみつく。真っ暗で顔は見えないが、輪郭が震えているのが見えた。
「……適度な運動でもすればいいんじゃないか?」
「て、適度な運動…?」
「なあ、さっきそういう場面を見たからって変に意識するなよ」
「し、してませんよ!」
「でも汗かいて余計に冷えるか…」
「じゃあ眠いかもしれないが、先に進むぞ」
「そうですね、それしかないです」
眠い目を擦って立ち上がり、空を見上げながら進んでいく。町から離れる程光は消え、地面の段差に時々つまずく。
眠気でフラフラして来た時、遠くに小さな光が見えた。家だろうか?
メグリの手を引いてそこへ近付く。
段々光が大きくなってくると、窓だと分かった。オレンジ色の光が漏れている。
「よかった…ちょっと泊めてもらいましょう」
「流石に眠いな…」
窓に近付き、中を覗き込んだ。
奥にはベッド、そしてその上にはリンゴを食べていないアダムとイブと同じ格好をした男女がいた。
「お前らもかよ!!!」
「貴方達もですか!!!」
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怒っている中年夫婦から馬小屋と藁を借りた。
臭いが気になるが外よりはマシである。
少ない藁を被ると、2人ともすぐに眠りについた。
中年夫婦に礼を言って小屋を出て次の街へと向かう。昨日の疲れもあって徒歩は辛い。
「昨日は2度も酷い目に合いました」
「見ても良いもんじゃねえな、ああいうのは」
「悪いのは私達なんですけどねー…」
「これからは夜に人の家覗くのはやめよう」
夕方、大きな屋敷を見つけた。石でできた壁に青い屋根、小さな柵で周りが囲まれている。
扉の前に行って戸を叩く。
少しして老夫婦が出てきた。
「地図ありませんか?」
「地図? はい…ありますよ」
老婆は奥へ行き、黄ばんだ紙を持って戻ってきた。
地図をみると、ここは町から離れていることが分かった。
「…遠いな。馬小屋かしてもらえませんか?」
「馬小屋? 泊まるのかい? それなら遠慮せずとも部屋をかしてあげるよ」
「ありがとうございます」
部屋は前の街と内装はあまり変わらないものの、ベッドが二つあったのでメグリは喜んで寝っ転がった。
簡単な夕食も出され、それを食べると部屋へ戻ってベッドに座る。
まだ眠くはないが、とりあえず布団に入った。
「なあ、その三秒時戻せる魔法は誰でも使えるのか?」
「いえ、基本大魔術師の家系でないと使えず、この世界だと100人程度といいわれています」
「お前はその家系なのか?」
「いえ…何故か才能があったみたいなんですよね。もし家系だとしたら他の魔法も使えるはずですし…」
「すごいじゃんか」
「いえいえ全然。他の方は皆10分以上は戻せますよ。戻した分だけ冷却時間があるみたいですが」
「じゃあ凄くないな」
「ひどい…使えるだけでも大したものなんですよ」
「でも三秒だろ……」
そうこう話している内に眠くなり、いつの間にか2人とも眠りについた。
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聞こえるのは微かな声で、最初は隣で自慰っているのかと思ったがそうでもないらしい。
よくよく聞くと、それは悲鳴だった。
「おいメグリ、起きろ」
「むにゃ…ん…なんですかぁ?」
「悲鳴が聞こえる」
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「見に行くか?」
「はい」
メグリはベッドから出て起き上がる。
そして2人でこっそり部屋から出た。
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