異世界生活の送り方を間違えている気がする?

香奈恵

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二章 魔族地方

三十五話 魔王城にて

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そうか、剣の所有者を交代させるには元の所有者が死ななくてはならない…、こいつの父親、元所有者は死んだって事か。

「いや、殺してない」

「分かってた。じゃあきっとどこかで息絶えたのね。まあ…そうだと思ってたけど」

「クロメさん…」

「今まで話した事もパパから聞いたの。術について調べてたらしくて…そうだ、原石の事について話してなかったわね」

魔王は「剣貸して」と言って手を差し出す。オレが手渡すと、剣の腹に指を当ててスライドさせた。
中には小さな青色の石が入っていて、薄く光っていた。

「これが原石。術を発動させるために必要なもので、この中に奪った命が吸収されるの」

スライドさせて戻し、剣を俺に渡す。

「調べた所、この原石の欠片が人間の持っている武器全てに含まれてることが分かったの」
「国王は定期的に武器を回収するでしょ?その際に欠片を回収して原石に命を渡してるんだと思う」

「はー、その為に定期回収があったのですか」

「確定とは言えないけどね」

「欠片のみでは術は発動出来ないのか?」

「欠片だけだと収容できる魂の数が少ないから」

「それもお前の父に聞いたのか?」

「ええ」

「この剣、どれくらいの魂を吸ってるんだ?」

「分からないけど…パパは沢山の命を奪っていたから」

自分の剣を眺める。これから俺が命を奪うとして、うっかり発動なんて事になるのも有り得るのだろうか? 
力を手に入れるだけならいいのだが、内容が確定していない以上むやみには殺せないか。

「それで、働く事についてだけど、メグリさんはどうするの?」

「私ですか? 出来れば…一緒にいたいかなって」

「そう。じゃあ聞いてくれるかしら」

「はい」

「まず労働時間は基本24時間、一日中ね」

「おいまて、ブラック過ぎやしねえか」

「というのが本質だけど、実際は8時間。攻めてきた時は何時でも出撃しないといけないから、表面上勤務時間は一日中ってだけ」

「なんだ普通か」

「休暇は一週間に2日、この日も臨時で出撃する時があるけど、そんな事はほぼ無いと思っていい」

「負傷時は回復まで休暇、この時の給料は普通通り支払われるわ」

「因みに1年の給料は400万クレジット、食事台と医療費はこっちが負担してるからこれは自由に使っていい分ね、それと武器の調達、整備代も申請すれば支払われるから覚えておいて」

その後もホワイトな内容を聞かされ続ける。
家は敷地内だそうだ。

「それと…あんたは人間だからたまに人間地方へ売りに出掛ける事もあるかも」

「以上か?」

「まだ。これは一部の兵士のみへの仕事なんだけど、あんたは所有者だから頼むわね」

「何をすれば?」

「術の発動の阻止。これに関しては一刻も早くさせたいからあんたはほぼこれをする事になるわね、潜入とかあるかも」

「分かった。以上か?」

「ええ、長い説明の聞いてくれてありがとう。メグリさんも」

「いえいえ、なんか色々恵んで下さってこちらこそありがとうございます」

メグリは笑顔でそう返す。
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