異世界生活の送り方を間違えている気がする?

香奈恵

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二章 魔族地方

四十話 定期武器回収

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【四十話】

「無理だな」

木の下で地図を広げて2人で覗き込み、回収所とその周辺を見る。回収所の周りは何も無く、見渡しが良さそう。

「ですね、どうしましょう」

「…ひと騒ぎ起こすか?」

「ツバキさんがそうしたいなら反対はしません」

「しないけど」

「分かってます」

「…欠片ってどこに入ってるんだ?」

「入れる場所があるとすれば、柄の部分でしょうか。確認します?」

「そうだな、武器屋で安めの買ってこい」

「はい!」

メグリは走っていき、暫くしてから短剣を握って戻ってきた。早速柄の部分を回し、分解してみる。

「あ、ありましたこれでしょうか?」

「みたいだな」

とても小さい、米粒よりも小さい青石が出てきた。自分の剣にある原石に当ててみると、薄く光ってくっついた。融合したようだ。

「これだけで証拠にならないか…?」

「どうでしょうね…」

「そうだ、要は欠片を融合させてるか分かればいいんだろ? それならこうやって…」

原石の角に剣先を当てて割り、入っていたのと同じくらいの大きさに削る。その片面にインクを塗り、また短剣にしまった。

「これでよし、これを回収させて、明日の朝に見に行くぞ」

「おお、その手がありましたかナイスです」

「今まで思い付かなかったのに驚いてる」

「では、預けたらどこかに泊まりましょうか」

「ああ。こうして民宿を探すのって久しぶりだな」

「確かに、前を思い出しますね」


回収所に短剣を預け、近くにあった宿を借りて食事をし、寝床につく。
今回は金があるので別々の部屋にしてもらった。

思い返すと、今までメグリと別々の所で寝るなんて事は殆どなかった。

魔王城に行くまでは金の節約の為に一部屋だけ借りて、そこで2人とも寝ていた。
魔王城では一つ敷地内に大きな家を貰い、そこに2人で住んでいる。寝室は一つしかないのだ。

朝はリビングで朝食を交代で作り、昼は仕事、夜は疲れて帰って来る。夕食も当番はあるのだが、疲れているので結局二人で作る。
風呂に入った後寝室へ行き、そのまま布団に倒れて2人とも眠りにつく。

思えば別々に家を貰う事も出来たのかもしれないが、自然な流れで一つの家を共有する事になってしまった。

少し硬いベッドに横たわり、窓の外にある月を見る。その月で兎は餅をついてなどはいなく、クレーターの少ない衛星は青く光る。

すっかりこっちの世界にも馴染んできた。今では前の世界が夢だったかのようにも思える。
戻りたいなんて、今は全く思わない。

「あの、メグリです」

ドアがノックされ、寝巻姿のメグリが入ってきてベッドの横に立つ。
…なんとなく予想はしてた。

「自分の部屋で寝ろ」

「それが出来ないからきたんですよね、あは」

「金を払ってるんだよ…」

上半身を起こしてメグリを見る。枕を片手で抱え、こちらを見下ろしている。

「金払って寝られなかったら損してますよ、寝ることが出来るのが第一です、さあズレて」

「なに入ろうとしてんだよ」

「だってベッドは一つです」

「そもそも許可してねえからな?」

「じゃあ許可して下さい」

「だめだ」

「いいじゃないですか、あなたがいないとなんか安心できないんです。パンツ履いてない時みたいに違和感があります」

「お前…俺がいない時の事を考えたら今の内に慣らしといたほうがいいだろ」

「それもそうですけど…」

「いいから、とにかく出ていけ」

メグリの肩を押して部屋から出し、鍵を閉めた後またベッドへ戻って目を閉じた。
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