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二章 魔族地方
五十六話 魔王城とリン
しおりを挟む「ったく…俺が帰還したってのにどこにいやがるんだ奴らとメグリは…」
外をうろうろしても魔物は少ない。見回りをしているような兵士は見掛けるが、それ以外の上級兵士は全く見かけない。
「…魔王もいないし」
一階の部屋には魔王、秘書もいなかった。
残すは最上階と広間だけ。
「あの…どうかしたのですか?」
「魔物がいないんだ。もしかしたら戦闘で…」
「戦闘?」
「ああ、俺が来る前に国の奴らが攻めてきてな。それに応戦してたんだ」
「その中にカムリも?」
「正確には違うが…とにかくその途中で会った」
「誰かに聞いてみては?」
「…そうする」
一つ一つ階を見て周り、兵士を探す。ほぼいなくて諦めかけた頃、司書室に一人老人を見つけた。
見た所人間、眼鏡をかけて本をめくっている。
「お前人か?」
「おお、あなたはツバキ殿、ですな」
「ああ。他の奴らは何処へ?」
「広間です。今回の事で集会がありまして…そしてあなたは死んだと思われ、葬儀も行っているかと」
「は? 俺は生きてるぞ」
「たまにあるんですよね…三日間帰らなくなると嫌に心配して最悪の事態を考えている…とりあえず行ってみて下さい」
「ああ。いくぞクルト、リン」
葬儀って…希望を失うのが早すぎるんだよアイツら…! メグリも受け入れるんじゃないのか?
そんな事させないぞ。
【五十六話】
その頃、広間では暗い顔をした魔王とメグリが壇上に上がり、その前には心配そうな顔をした兵士が並んでいた。
「えー…何人か知っているかとは思うけど、数ヶ月ぶりに死者が出たの」
「ツバキか?」
魔王の言葉に対し前列の分厚い筋肉をした兵士が質問をする。彼はツバキと同じ、魔王軍の幹部である。
「ええ、その通りよ」
「ごめんなさい…私の不手際で死者を出してしまい…」
「…クロメさんのせいではありません」
「でも…」
「俺もすまなかった。近くにいたのは分かっていたんだが…助けられなくて」
さっきの男が謝る。その後ろにいた部下も頭を下げた。
クロメは前に向き直り、魔物へと呼びかける。
「死にゆく魂に黙祷を捧げましょう。全体一分間の黙祷!」
広間にいた数千人の兵は目を閉じ、死んではいないがツバキへ天国での幸福を願った。
【五十六話、2】
「…やっぱり!」
広間の廊下から様子を伺う。こいつら本当に勘違いしてやがる。誰も疑問を持たないのか?
広間の扉をバン、と勢いよく開け、壇上へ走り出す。目を開けた数人の兵士がこちらを向いてざわめき出す。
真面目なやつはそのざわめきも気にせずに黙祷をしていた。それは魔王とメグリも同じだ。
「おいっ!」
壇上に駆け上がってメグリの肩を掴み、強引にこちらを向かせる。
「俺は死んでねえぞ!」
恐る恐る目を開けたメグリはこちらを見て目を見開いた。そして一歩下がる。
「幽霊ですか…?」
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