異世界生活の送り方を間違えている気がする?

香奈恵

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二章 魔族地方

五十七話 魔王城とリン

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【五十七話】

「本物だ、ほら」

メグリの腕を掴んで引き寄せる。大きく目を見開いた後涙を溜めた目でじっとこちらを見て、そして椅子から立ち上がって勢いよく抱きついた。

「ヅバキさああんっ!!」

「おい…っいだだだだ…!」

思わず顔を歪める程の力で抱き締められる。たった数日離れただけなのにこいつは真っ赤な瞳に涙を一杯に浮かべて耳元で泣き叫ぶ。集まっていた兵士達は魔王の合図で静かに出ていき、広い空間に声がよく響いた。壇上から降りた魔王はメグリの後ろに立ち、ほっとした顔でこちらを見る。

「ほんと何してたのよ…」

「色々あったんだよーーー内容は報告する必要があるのか?」

「ええ、落ち着いたら私の部屋に来て報告書書いてもらうからね。それと怪我があるなら早く治療しなさいよ?」

「わかってる。とりあえずこいつをどうにかしないと…おいそろそろ離れろよ」

メグリの頭を掴んで無理矢理離れさせる。初め抵抗はしていたが、泣き声が収まるにつれて力を弱め、正面で俯いた。

「ーーーそれと、後ろの2人はどなた?」

魔王が後ろのクルトとリンを指さす。リンは慌てたように俯き、クルトは微笑みながらリンの頭を撫で、そして魔王に頭を下げた。

「魔王城にいたいってさ。知り合いで、戦ってる最中に出会った」

「そうーーー住む所はどうするの? こちらで確保しましょうか?」

「…そうだな、どうするんだ? 俺達の部屋も広いしベッドくらいなら」

「お邪魔でなければそれで構いません」

「わかった。とりあえずあんたはメグリを連れ帰っといて。そこの2人…えっと、名前を聞いてもいい?」

「私がクルト、この子はリンです」

「うん、じゃあクルトとリンは私の部屋に来てくれる? 少し用があるの」

「…分かりました」

少し不安そうなクルトと魔王は扉から出ていく。足音が消えると、俺は足元で涙を拭っているメグリの肩を叩いた。

「ほらさっさと行くぞ」

「…はい…でもごめんなさい、私今すっごく眠くて…どこか横になれる所はないです…?」

周りを見ると、斜め後ろに赤い革のソファがあった。メグリの手を引っ張ってそこに連れていくと、うつ伏せになって倒れ込み、やがて寝息を立て始めた。俺はそばにあった椅子に腰を掛け、薄い照明を見つめた。
結局あの戦いはどうなったのだろうか、今の状況を見ると魔王側が勝ったのだろう。カムリは相手側の武器だったのか、それはよく分からないが…ひとまず一件落着、だろうか。
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