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次の日、相も変わらず、いつも通りに学校へ通い、いつも通りの一日を過ごすと思ってたのに、いつも通りと違うことが起こった。




「えーっと…」
「大原くんと仲良しだよね?」
「なかよし…なのかな?」
「しょっちゅう話してるよね?」
「ま、まぁ…?」
「じゃあさ、これ渡してくれない?!」
「え?」
「絶対渡してよね?!」
「あ、ちょっと!これなに!!…て、行っちゃった…」




突然、女子に呼び出され、渡された封筒。
表には「大原くんへ」と可愛らしい字で書いてあった。裏には多分手紙を渡してきた子の名前とクラスが書かれてて、ああ…ラブレターか…と。
なんで僕に頼むのかな…。大原くんの友達なんて他にいっぱいいるのに…。
僕はただの隣の席なだけなのに…はぁ…困ったな…。

結局、呼び出した女の子には会えず、手紙を返すこともできずに放課後になってた。
もう、僕が渡すしかないよね…。これをどうするかは、大原くん次第なわけだし…僕はただの伝書鳩になればいいわけだし…でも、なんか、憂鬱だな…。




「ぁ、ああ、あの!大原、くん」
「え、な、なに?!」
「あ、あのね…これ」
「え?」
「大原くんに、渡して欲しいって、頼まれて…」
「………」
「も、もうちょっと早めに渡そうとは…思ったんだけど…」
「………」
「というか、本当は手紙書いた本人に返したかったんだけど…会えなくて…その…」
「………、で」
「え?」
「…いや、うん。ありがと」
「う、うん…?」




小さな声で何か言った気がしたけど、聞こえなかった。
そのあと見た大原くんの笑顔は、どこかぎこちなく見えて、そして寂しそうな顔をしてた。




◇◆◇




ラブレター騒動から数日、大原くんはどこか元気がなくて、あまり話しかけてこなくなった。
突然のことでちょっと驚いてるけど、まぁ…前に戻ったと思えば、そこまで気にはならないけど、でも、元気ないとそれはそれで気になるというか…。




「大ちゃん、どう思う?」
「どう思うもなにも、何にもわからんからどう言えばいいのか」
「…だよね」
「こうちゃんはさ」
「うん?」
「大原と、話したいの?」
「え?」
「こうちゃんの話聞いてる限り、大原と話したいのかなぁって」
「……そうなのかな?」




大原くんと話したい、のか。そうなのかな?
確かに、突然話しかけられなくなってちょっと寂しとか思っちゃってるけど、でも前までは、隣の席に大原くんがくるまでは話さないのが当たり前だったし…。
それに、僕みたいなのが大原くんと話していいわけないし…。
でも…寂しい…かも、しれない。




「まあ、悩め」
「うーん…」
「でさ、話変わるけど…、」




結局この話も結論が出ないまま、違う話題に変えられた。

僕はどうしたいんだろう。何がしたいんだろう。
ただ、話がしたいのかな?構われなくなって寂しいのかな?あのラブレター、やっぱり渡さない方が良かったのかな?よくわからない。




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