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「ここ…だよね…?」




先生に渡されたメモを見ながら、書かれてる住所に向ったら、そこは小さなアパートだった。
見た感じ、古めのアパートで、家族で暮らしてるとは思えなくて。
ちょっと緊張しながら、大原くんの家のチャイムを鳴らした。




「…ぁい」
「ぁ、ああの!鈴木、です」
「……っ、ぇ?!」




名前言ったら、家の中からガタガタ音がして、ちょっとびっくりする。
そして出てきたのは大原くんで、顔を真っ赤にして具合悪そうだった。




「な、え、ゴホッ」
「だ、大丈夫?!」
「ごめっ、ゴホッ…」




ドアノブを持つ手がかすかに震えてて、本当に具合悪そうで。
気づいたら大原くんのこと支えてた。




「大丈夫?!」
「ごめっ…、」
「お、お邪魔するね?」
「ん…、」




大原くんを支えながら家の中に入ると、キレイに整頓された部屋があって、どう見ても家族で暮らしてる部屋じゃなかった。

とりあえず、大原くんをベッドに寝かせて、ベットのそばに腰掛ける。
顔が真っ赤で、息も辛そうで、今きっと熱上がってる。
くる途中で買ってきた冷たいシートをおでこに貼って、他にも勝手に買ってきた飲み物とかを、冷蔵庫に入れた。




「、こうき」
「あ、うん?なに?大丈夫?」
「ぅん…。なんで…?」
「え?」
「なんで…きたの…、?」
「ぁ、し、心配で…」
「………」
「あ、あと…謝りたくて…」
「あやまる、?」
「う、うん…」




目を少し潤ませながら、辛そうにしてるのに、僕は、不謹慎にも大原くんと話せてることが嬉しくて。




「あの、ね?」
「ん、?」
「あの…ぼ、僕たちって友達とかじゃ、ないじゃん?」
「え?」
「それなのに…その…、知らない子からの手紙とか、渡しちゃって」
「ぁー…、」
「友達でもないのに…無神経に渡しちゃって…嫌な思いさせちゃって…ごめんね?」
「え?」
「だ、だから…あの…話してくれなくなっちゃったの、かなって…」
「………」
「ご、ごめ「ちがうよ」ん?」
「ちがうよ」




大原くんはそういうと、僕に手を伸ばしてきて、僕の頬に触れた。
触れた手は、やっぱり熱かった。




「お、おはら、くん?」
「ちがうんだよ」
「な、にが?」
「…、こうきに、はなし、かけなかったのは、おれのせい」
「え?」
「こんなときにいうの、なんだけど」
「………」
「おれ、こうきのこと、すきなんだよね」
「………へ?」
「れんあいかんじょうでね?」
「れんあいかんじょう…」




…うん?え、え?
あの…え?す、すき…?大原くんが…僕を?え?




「だから、こうきから、てがみもらうの、いやだったんだ」
「………」
「すきなやつから、ちがうこの、てがみもらうとか、じごくじゃん」
「……ぁ、」
「それで…、かってにおこって、はなしかけなかっただけ」
「大原くん、」
「だから、おれのせい。こうきのせいじゃないよ」
「………」




そ、うなんだ…そっか…そうなんだ…。
あ、れ?なんか…なんか、心があったかい。
なんだろ、この感情。嬉しいのと恥ずかしいのと、なんか満たされる感じがする。なんだろ、これ。




「、こうき」
「ぁ、う、うん?」
「すきだよ」
「っ…、」
「めちゃくちゃ、すき」
「…大原くん、」
「こうきは?」
「え?」
「すき?おれのこと」
「あ、ぼ、僕は…、」




すき…好き?
僕は…僕はどうなんだろう?
大原くんと話せなくなって、寂しくて、つらくて。
知らない子から手紙渡されて、渡すのに少し戸惑って。
大原くんから好きって言われて、心がぽかぽかして。




「……、も」
「ん?」
「す、すき…かも」
「ふはっ。かも、なの?」
「わ、わからないんだ…。す、すきとか」
「そっか」
「う、うん…」
「じゃあ…これからすきにさせるから、かくごしといて?」
「へ?」




優しい笑顔を僕に向ける大原くんの顔を見たら、身体中熱くなるのを感じた。
なに、今の殺し文句。かっこよすぎない?ずるくない?そんなの。




「こうき」
「え、わっ!」




頬にあった手が、いつの間にか僕の手を掴んでて、そのまま引っ張られて、僕の唇に大原くんのそれが優しく触れた。




「っ!!」
「へへ。かぜうつったら、ごめんね?」
「!!!!」
「ま、こうきがかせひいたら、こんどはおれが、かんびょうしてあげるから」
「………」




なにそれ…なにそれ…なにそれ!!ず、ずるい!


その後、大原くんは本当に無理だったらしく、盛大に咳き込んで、気絶するように眠った。




◇◆◇




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