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03 - 一学年 二学期 冬 -
01
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流石12月、流石師走。
学園祭が終わって2週間。
季節はどっと冬になった。
雪は降らなさそうだけど、空はずっと曇ってる。スッキリしない。
そして、ここ屋上の隠れスポットは、最高に寒い。でもやっぱここに来ちゃう。
「あー…さみぃ…」
ズビって鼻啜りながらここに居る意味は多分ない。
ないけど、ここに居たい。
特に何かあった訳でもなく、ただ何となくここに居たい。落ち着く場所。
学園祭は、うちのクラスが売り上げ1位を獲得して、真琴がすげー喜んでた。
「これも全て大倉くんのおかげだね!」て言ってたけど、大倉は「みんなも頑張ったからやろ」って言って、自分だけの手柄とは思ってなかった。
そう言うとこ、良いよなって思う。
俺は、あの学園祭で大倉と少し過ごして、何故か中学の頃を良く思い出してた。
大倉がいたら楽しかったのかな、とか大倉と出会ってたら何か変わったのかなとか。
そんな事考えたって当時の事は変わらないのに。
中学の時、何で俺はいじめまがいな事をされたんだっけ。
何がきっかけだった?…いや、思い出したくもない。
ほんの些細な事だったんだ。
それで標的が俺になって。
別に思い出したくもなかったけど、何故か考えちゃう。
寒いせいかな。師走のせいかな。12月だからかな。
少しだけ、気分が落ちる。
「相澤おる?」
「…え?」
「あ、いた」
「…大倉。どした?」
柵に背中預けてぼーっと空見てたら目の前にイケメン。大倉が居た。
今日もイケメンだ。羨ましい。
「寒くないん?」
「ん?寒いよ?」
「寒いのにここ居るん?」
「ん?うん」
「…よく分からへん」
「あはっ。俺も」
「…ふはっ」
大倉は、最近よく笑うようになった。
最初の頃の澄ました顔もしてるけど、俺とか真琴の前では笑うようになった。
あと、クラスの奴らとも話すようになった。
多分、学園祭のおかげ。あれのおかげで、一致団結したと言うか、大倉ありがとう!の気持ちがみんな強くて、それで話してみたら普通じゃん!みたいな感じ?良い事だ。
「で、なに?」
「あ、うん。笠井くんが探してた」
「……なんで?」
「期末テストの結果教えてもらってないって」
「…あ、忘れてた」
「んふっ。忘れてやるなや」
学園祭の次の週に、期末テストがあって、今回は真琴に加えて大倉にも教えてもらった。
そのおかげか、赤点なし!補習なし!だった。ま、ギリギリだったけど。
「赤点あったん?」
「なかった!大倉ありがとな!」
「そっか。よかったな」
「うん!」
「じゃあ、笠井くんに教えてあげな」
「だな!」
いやぁ、持つべきものは友だよな。
真琴は、理数系が得意だからそっちの方を教わって、大倉にはそれ以外を教わった。
ほんと、助かった。
色々と他愛もない会話しながら、大倉と共に教室に戻ってる途中で、数名の女子に囲まれた。何故。
「あ、あの!大倉くん!」
「はい?」
「あの…」
「なに?」
…あー、告白か。告白したいのか。そっか。うん、俺邪魔だよね。
大倉に声かけた女子がソワソワしながら俺の事チラチラ見てて、多分心の中で「この人邪魔だな」って思ってるんだろうなって目で見て来てて、ちょっと申し訳なくなる。
「あー、大倉。俺先教室行ってるから」
「え?いや、ええよ」
「は?」
そそくさと教室に行こうとしたら、何故か大倉に腕掴まれて動けなくなった。何故(リターンズ)。
そんな大倉の行動に、「え?」って顔してる女子。
それ、俺も同じ。俺も「え?」って顔してる、確実に。
「話あるならここで聞くから」
「いやっ、あの…っ!」
「ここで話せへんのなら、俺らもう行く」
「えっと…あの…ま、また今度でいいですっ、すみません!」
その女子は、顔真っ赤にして走り去った。多分その子の付き添いで来てた子達も、慌てたように走り去った子を追いかけて行った。
「ちょ、大倉!」
「なん?」
「なん?じゃなくて!あれ、絶対告白じゃん!」
「やろうね」
「は?分かっててあの態度?」
「…もうめんどいねん」
「あー…」
いや、うん。確かに、引っ切り無しに呼び出されて、告白されるのはめんどいとは思う。羨ましいけど。
でもだからって、その断りに俺いらなくないから?
たまたま一緒に居たけど、俺が先に教室行くだけで良かった気もするんだけど…。
「それに」
「え?」
「…それに、あの子相澤の事睨んでたから」
「は?睨んでた?」
「うん」
大倉曰く、大倉に告白してきた子が、俺の事睨んでて、それにちょっと腹立ったと。
用があって呼び止めたにも関わらず、睨むとかあり得ないって、なんか怒ってる。
いや、怒られても…俺は、その睨んでるが分かんなかったし…確かにチラチラ見られて邪魔だと思ってるんだろうなぁとは感じてたけど…あれ、睨んでたのかな?よく分かんない。
結局そのまま教室に戻って、真琴にテストのこと報告して、次の授業の準備をした。
正直、大倉の怒りの沸点がよく分かんない。
分かんないけど、少しだけ友達として大事にされてるのかな?とか思ったら、気分は悪くなかった。
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