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記憶喪失
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体が呑み込まれそうになる程のフカフカのベッドの上でエネアは目覚めていた。
陽光が窓から差し込み暖かな空気に覆われる。
ベッドから起き上がり、自分の体を確認してみる。
体全体は包帯で螺旋状に巻き付かれており、一目見ればその惨状が分かりそうな程だ。
辺りをグルっと一周見渡すが、自分以外誰もいない。
この場所を確認する為にベッドから出ようとした所で一人の男性が声を荒らげ、慌てて駆け付けてきた。
「おいおい!
状態が良くねぇんだから起き上がってくんじゃねぇ!」
歳は20代後半と言ったところか。
鍛え抜かれた体躯に紺色の髪が目立ち、鋭い眼光がエネアを刺す。
男の声とその眼差しにビクリと体を揺らし、怯えるように再びベッドに横になる。
コツコツと足音を鳴らし近づいてくる一人の男。
そして目の前にある椅子に腰掛け、エネアにいくつかの質問をしてきた。
「お前……名前は?」
「エネア……」
「何であんな所にいたんだ?」
「分からない……」
「お前は何処から来た?」
「分からない……」
探り探りで質問をしてくる男。
エネアは自分の名前以外の全てを忘れていた。
所謂記憶喪失と言うやつで。
それからもいくつかの質問を受け、そしてここまでの経緯を話してくれた。
今いるここは『ベアーノア帝国』という怪星の中で最も大きい大国である。
そこのとある大病院でエネアは約3ヶ月間もの間眠っていたのであった。
目の前のこの男は『ヤイバ・ラッセンロー』といった。
ヤイバはこのベアーノア帝国の陸軍魔攻特殊部隊『ロクドウ』の隊長であり、国を守る為に日々戦っているらしい。
ヤイバがエネアを見付けたのは敵国を潜入し、得た情報を報告する為の帰り道でのこと。
気晴らしに海原を渡り歩いていたところに、丁度エネアが浮かんで流れてきていたのだった。
ヤイバは良心的だった。
海から浮かんでくるガリガリに痩せ細った一人の子供。
エネアを引き上げ、無惨な姿を見たヤイバは言葉を失っていた。
それもそのはず、エネアの体は全身が火傷の痕で爛れており、腹には腕一本分の穴が空いていたのだから。
寧ろこれで生きている方がおかしいだろう。
ヤイバは冷静に脈を測り息があることを確認すると、急いで病院へ運んだのだった。
ちなみにこの時息がなかったらどうしてたのかと問うてみた所、帰ってきた応えはその場で埋めていたとか何とか……。
そんなこんなで治療を受け、一命を取り留め今に至る。
「それで?お前はこれからどうするんだ?」
「分からない……」
ヤイバは真剣な顔付きで聞いてくる。
だが、エネアはそれすらも分からない。
ヤイバは苦悩していた。
目の前の子供、エネアが心配なのは本心だが、自分の意思だけではどうする事もできない。
ましてや部隊の隊長ともあろう者がそんな事をしてしまえば今後に関わってきてもおかしくは無い。
だがヤイバは今、エネアに特別な感情を寄せていた。
否、他の人間とは違うもっと根源的な何かを感じ取っていた。
それ故にこの子供を手放してはならないと本心が叫んでいる。
考えるより先に口が走っていた。
「行く宛てが無いなら俺の所に来い。
俺が面倒を見てやる」
記憶も無く、行く宛ても無く、どうしようか悩んでいたエネアにとってヤイバは一筋の光となった。
「分かった。行く」
「よし!決まりだな!もう少し様子を見てからまた来る!
その時までリハビリしておけ」
ヤイバはエネアの頭をポンポンと軽く叩き笑みを浮かべ病室を出た。
陽光が窓から差し込み暖かな空気に覆われる。
ベッドから起き上がり、自分の体を確認してみる。
体全体は包帯で螺旋状に巻き付かれており、一目見ればその惨状が分かりそうな程だ。
辺りをグルっと一周見渡すが、自分以外誰もいない。
この場所を確認する為にベッドから出ようとした所で一人の男性が声を荒らげ、慌てて駆け付けてきた。
「おいおい!
状態が良くねぇんだから起き上がってくんじゃねぇ!」
歳は20代後半と言ったところか。
鍛え抜かれた体躯に紺色の髪が目立ち、鋭い眼光がエネアを刺す。
男の声とその眼差しにビクリと体を揺らし、怯えるように再びベッドに横になる。
コツコツと足音を鳴らし近づいてくる一人の男。
そして目の前にある椅子に腰掛け、エネアにいくつかの質問をしてきた。
「お前……名前は?」
「エネア……」
「何であんな所にいたんだ?」
「分からない……」
「お前は何処から来た?」
「分からない……」
探り探りで質問をしてくる男。
エネアは自分の名前以外の全てを忘れていた。
所謂記憶喪失と言うやつで。
それからもいくつかの質問を受け、そしてここまでの経緯を話してくれた。
今いるここは『ベアーノア帝国』という怪星の中で最も大きい大国である。
そこのとある大病院でエネアは約3ヶ月間もの間眠っていたのであった。
目の前のこの男は『ヤイバ・ラッセンロー』といった。
ヤイバはこのベアーノア帝国の陸軍魔攻特殊部隊『ロクドウ』の隊長であり、国を守る為に日々戦っているらしい。
ヤイバがエネアを見付けたのは敵国を潜入し、得た情報を報告する為の帰り道でのこと。
気晴らしに海原を渡り歩いていたところに、丁度エネアが浮かんで流れてきていたのだった。
ヤイバは良心的だった。
海から浮かんでくるガリガリに痩せ細った一人の子供。
エネアを引き上げ、無惨な姿を見たヤイバは言葉を失っていた。
それもそのはず、エネアの体は全身が火傷の痕で爛れており、腹には腕一本分の穴が空いていたのだから。
寧ろこれで生きている方がおかしいだろう。
ヤイバは冷静に脈を測り息があることを確認すると、急いで病院へ運んだのだった。
ちなみにこの時息がなかったらどうしてたのかと問うてみた所、帰ってきた応えはその場で埋めていたとか何とか……。
そんなこんなで治療を受け、一命を取り留め今に至る。
「それで?お前はこれからどうするんだ?」
「分からない……」
ヤイバは真剣な顔付きで聞いてくる。
だが、エネアはそれすらも分からない。
ヤイバは苦悩していた。
目の前の子供、エネアが心配なのは本心だが、自分の意思だけではどうする事もできない。
ましてや部隊の隊長ともあろう者がそんな事をしてしまえば今後に関わってきてもおかしくは無い。
だがヤイバは今、エネアに特別な感情を寄せていた。
否、他の人間とは違うもっと根源的な何かを感じ取っていた。
それ故にこの子供を手放してはならないと本心が叫んでいる。
考えるより先に口が走っていた。
「行く宛てが無いなら俺の所に来い。
俺が面倒を見てやる」
記憶も無く、行く宛ても無く、どうしようか悩んでいたエネアにとってヤイバは一筋の光となった。
「分かった。行く」
「よし!決まりだな!もう少し様子を見てからまた来る!
その時までリハビリしておけ」
ヤイバはエネアの頭をポンポンと軽く叩き笑みを浮かべ病室を出た。
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