ゲームの世界に堕とされた開発者 ~異世界化した自作ゲームに閉じ込められたので、攻略してデバックルームを目指す~

白井よもぎ

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第一章

18話 ルシフェル

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「はぁはぁ……何なんだこいつは」

 壊された城壁から少し先の南通り。
 オルトライムのメンバー達がルシフェルと対峙していた。

 周りには冒険者や住民の死体や動けない重傷者が転がっている。
 既にメンバーに死傷者が出ており、アンジェラやガウルも満身創痍であった。
 今まで見たこともない圧倒的な強さのモンスターを前にして、中には震えて戦意喪失しているメンバーもいる。

「マジで天罰じゃないのか? こんなの有り得ないだろ……」
「アンジェラ、このままでは全滅する。撤退しよう」
「でも、あたしらが逃げたらもう……」

 ガウルが撤退を促すが、アンジェラは躊躇う。
 外を守っていた部隊は壊滅してしまい、この区画の防衛に残っていたのはオルトライムだけであった。
 アンジェラ達が撤退してしまえば、一気に内部まで進行される。

「どの道、俺達では抑えきれない。これ以上仲間に被害が出る前に逃げよう」

 撤退を勧めるガウルは、先程から頻りに後方を気にしていた。
 後方には支援組や実力不足で下がっていたメンバーがいる。
 その中には娘のモコの姿もあった。
 ガウルも撤退すれば街が破壊されると分かっていたが、娘だけは死なせたくなかった。
 アンジェラも、その気持ちは分かっていた。

「……くっ」

 アンジェラは懐から煙玉を出して、ルシフェルの顔面に投げつける。
 当たった煙玉が破裂し、ルシフェルの頭部周りが煙に包まれた。

「撤退だ! みんな走れ!」

 アンジェラの掛け声に、皆一斉にルシフェルに背を向け走り出す。
 だがその時、ルシフェルの口から大きなエネルギー弾が放たれた。

 煙を突き破った、そのエネルギー弾は一直線に飛んで、近くの建物の上部を破壊した。
 それによって倒壊した建物が逃げるオルトライムの人達の頭上に降ってくる。

「!!」

 アンジェラ達は避ける間もなく、瓦礫の下敷きとなった。


――――


「くぁ!」

 ガウルが慌てて瓦礫を押し退けて出てくる。
 すぐさまルシフェルを確認するが、ルシフェルは建物を無差別に破壊しているところだった。
 こちらに注意が向かっていないことに一先ず胸を撫で下ろす。

 そこで自分の前に埋もれていたアンジェラに気付き、慌てて引き摺り出す。

「アンジェラ、大丈夫か」

 目を閉じてぐったりとしているアンジェラを軽く揺すり、脈を確かめる。
 脈が確認できてガウルは安堵するが、そこでモコのことを思い出して声を上げる。

「モコー! 何処にいる!?」

 必死に周りを見渡す。
 周りは倒壊した瓦礫で酷い有様であった。
 呼びかけていると、モコの声が聞こえてくる。

「お父さーん」

 モコは端の大きな瓦礫の前に座っていた。
 ガウルは急いで駆け寄る。

「良かった。怪我はないか?」
「怪我はないけど、足が抜けない」

 モコの足は大きな鉄柱の間に挟まれていた。
 すぐにガウルは出してやろうと鉄柱に手をかけ、持ち上げようとする。

「ぐううう」

 全力で持ち上げるが、びくともしない。

「一人では厳しいな。誰かー!」

 ガウルは周りに助けを求める。
 しかし、周りの人々は逃げ惑っていて耳を貸す人はいなかった。

「お父さんっ」

 モコの切羽詰まった声に、ガウルはすぐさま振り返る。
 先程の助けを求める声でガウル達に気付いたルシフェルが、こちらに向かってきていた。

「くっ」

 ガウルは大急ぎで再び鉄柱を持ち上げようとし始める。
 だが、どれだけ力を入れても全く持ち上がる様子はない。

「お父さんっ、私のことはいいから逃げてっ」
「馬鹿言うな! すぐに出してやるから二人で逃げるぞ」
「もう無理だよ……。このままだとお父さんまで死んじゃうから逃げて」
「そんなことできる訳ないだろ……! 妻だけでなく、娘にまで先立たれてて堪るか。絶対に出してやるからな」

 ガウルは力を振り絞って持ち上げる。
 しかし、それも虚しく持ち上がることはなく、とうとうルシフェルが目前にまで着てしまった。

 ルシフェルが拳を振り上げ、二人に向かって振り下ろす。
 迫ってくる拳に、二人は死を覚悟した。

 だがその時、間に人影が入ってくる。
 その者はルシフェルの拳を受け流し、カウンターを顔面に食らわせる。
 カウンターが的確な位置に上手く入り、ルシフェルは後ろに倒れた。

「何やってる! 早く逃げないと死ぬぞ!」

 それはシンであった。
 ガウルは驚くが、すぐに我に返ってシンに頼む。

「モコが挟まれて動けないんだ。手を貸してくれっ」

 シンはガウルの後ろにいるモコに目を向ける。
 モコの足に乗っかっている鉄柱は太く長いものであった。
 非常に重そうであるが、それ以前に鉄柱の先には剥がれた建物のフロアがくっついており、鉄柱だけの問題ではなかった。
 シンが手を貸したところで持ち上げられるものではない。

「頼む……」

 ガウルも内心分かってはいたが、諦めることができなかった。
 その姿を見てシンは悩む。

 ガウルが娘を見捨てて逃げることはない。
 しかし、モコを今すぐに助けることは不可能である。
 この場所は非常に危険であるので、二人のことは諦めて即座に離れなければならない。
 そう頭では分かっていたが、決断ができなかった。

 ルシフェルは今まさに起き上がろうとしている。
 悩んでいる時間などなかった。
 見捨てることができなかったシンは腹を括る。

「ガウルさん、俺があれを暫く引き付けますから、その間に助けを呼んできてください」
「引き付けるって、そんなこと……」
「早く! あまり長く持たせる自信はないですから」
「! ……分かった。モコを頼む」

 ガウルはシンを信じて駆け出した。
 その背を見送ったシンはルシフェルと向かい合う。

「茂、ちょっとは手加減しろよ」
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