ゲームの世界に堕とされた開発者 ~異世界化した自作ゲームに閉じ込められたので、攻略してデバックルームを目指す~

白井よもぎ

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第二章

30話 汚名返上

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 それからアリカはシンの指示に従って薬を作成し、勉強も熱心に行っていた。
 クランに入ったのは村八分から抜け出す為であったが、シンから齎される知識はどれも驚くべきものであり、アリカ自身、学習意欲が高かったこともあって、のめり込むように夢中になっていた。

 そしてそれはシンにとっては非常に都合がいいことであった。
 勉強熱心であれば、それだけ多く教えることができる。
 熱心に学ぶことでマジシャンの能力も、みるみる上がってきているので、攻略パーティのメンバーとして期待できた。


 今日もアリカがクランハウスで勉強に勤しんでいると、シンが声をかけてくる。

「アリカ、ギルド行こうか。そろそろ周知活動もしておかないと」

 ギルドへと誘われたアリカは表情を曇らせる。

「大丈夫かしら?」
「俺が後ろ盾になるんだから大丈夫さ。原因が俺の人気から来るものだから、それでダメなら辻褄が合わなくなる」

 シンが安心するよう言うが、アリカの表情は晴れなかった。



 冒険者ギルド。
 そこは、いつものように冒険者達で賑わっていた。

 ロビーに入ってきた二人に、周りからチラチラと視線が向けられる。

「ちょ、ちょっと近いわよ。何で、こんなに引っ付くの」

 肩が、ぶつかるほど近づいてくるシンに、アリカが小声で文句を言った。

「離れてたらアピールにならないだろ。何なら手でも繋ぐか?」
「違う意味で勘違いされるわよっ」

 シンは仲の良さをアピールする為に、アリカに身体を密着させていた。

 小声で話していると、偶然、近くに居たディックが困惑した様子で話しかけてくる。

「シンさん、何で、そいつと一緒にいるんですか?」

 尋ねられたシンは待ってましたと言わんばかりに、声を大にして答える。

「よくぞ聞いてくれました。紹介しましょう。うちのクランの新メンバーになるアリカです。これから仲間として一緒に活動していくことになりました」

 シンがそう言うと、ディックだけでなく周りも騒然とする。
 周りの様子を窺いながらシンは言葉を続ける。

「昨日の敵は今日の友って言いますしね。アリカとは色々あったけど、和解して今ではマブダチ」

 シンはアリカに肩を組ませてアピールする。
 突然、肩を組まれてアリカは内心驚くが、振り払うと印象悪化することは確実であることは分かっていたので、抵抗せずに受け入れた。
 そしてアピールに乗っかり、ぎこちない笑顔を周りに見せる。

 二人を見て周りがざわめく。

「やっぱりシンさんは凄えな。あんなことされたのに許すなんて」
「やられた時、ギルドに通報することもしなかったんだろ。器が大きすぎるぜ」

 ポツリポツリとシンを称賛する声が聞こえてくる。
 アリカへの非難の声はなく、完全にシンを褒め称える流れになっていた。
 正にシンの読み通りの流れである。

 そうしていると、クロスムーンのメンバーの少年がシンに投げかける。

「すみませーん。シンさんのクランってメンバー募集してるんですか?」

 それにマスターのディックが反応する。

「お前、うちのクランから乗り換える気か? つーか、俺も入りたいぞ」

 すると他の冒険者達も興味ありげにシンに視線を向けてきた。

「あー……一般募集はしてないんです。そんな活発には活動してませんから」
「それは残念です。もし募集していたなら、クランを解散して入ってしまおうかと思っていましたよ」

 ディックは冗談っぽく言っているが、半分本気であった。
 他の冒険者も同様に、募集してるとなれば今のクランを放り出して来そうな勢いである。

「すみませんね。ところで、これ俺が監修して作った薬なんですが、良かったらどうぞ。一般的に売られている薬より、かなり質がいいですよ」

 シンは袋から、アリカに作らせた薬を取り出して、クロスムーンの人達に渡す。

「他の皆さんもどうですか? この薬は彼女のお店で売り出すので、気に入ってくれたら、そちらでお買い求めください」

 アリカの店の宣伝をしながら、二人して他の冒険者の人達にも配り始める。
 アリカが仲間になったことを周知するついでに、店の客足も回復しようという魂胆だった。

――――

「ふぅ……こんなもんか」

 用意していた薬を全て配り終え、二人は息をついた。
 シンの人気のおかげで皆快く受け取ってくれて、試供品は、あっという間に捌けた。

 そこで見計らっていたかのように、ギルドの職員が声をかけてくる。

「シンさん、アリカさんちょっといいですか?」

 呼ばれた二人はカウンターに向かう。

「お二人はオルトライムに所属していますよね? ギルドからの依頼がありますので、時間がある時に引き受けるようマスターにお伝えください」
「ギルドからの依頼……あー、すみません。うちのクラン、今あまり活動できる状態ではなくて」
「ええ、アンジェラさんからの報告で、そちらの状況は理解しています。しかし、こちらも魔獣災害の影響で人手不足でして……。クランの状況を考慮して、簡単な依頼を回しましたので、ご理解していただけると助かります」

 職員が依頼書を出す。
 依頼は街近郊の森の見回りとモンスターの間引きであった。
 魔獣災害の影響により、冒険者の絶対数が減ってしまったので、ギルドは人材を育てる為、新米冒険者への支援に力を入れなければならなかったのである。

 シンは仕方なく、その依頼を受けることにする。
 報酬も少なく、シンにとってはメリットが皆無の依頼であったが、アンジェラと約束した手前、断って信頼を落とす訳にはいかなかった。



 シンは早いとこ終わらせてしまおうと、アリカを連れたまま、その足で近隣の森へとやってきた。

 街の近親は、角兎などの雑魚モンスターしか生息していない為、新米冒険者の狩場として利用されている。
 シンがこの世界に来た当初に苦しめられた角兎だが、上位クラスになり装備も整った今では真面に相手するまでもない。
 指弾の一撃で屠れる。

 シンは見かけたモンスターを指弾で弾きながら進んでいく。
 歩いていると、アリカがポツリと言う。

「ありがとね。あんなことしたのに、ここまでしてくれて」
「いいさ。俺は自分の利益の為に動いたまでだから。それに主導してたのはライルだろ?」
「そうだけど……」
「ま、恩を感じているなら、その分働いて返してくれ。アリカのことは戦力として結構、期待してるから」
「が、頑張るわ」

 期待の重さにアリカは顔を強張らせた。


 歩いていると、シン達が歩く先にモンスターと戦っているパーティを見つける。
 そのパーティのメンバーは、どの子もモコより小さい少年少女だった。
 まだ戦いに慣れていないようで、雑魚モンスターを相手に懸命に戦っている。

 その子達に気付いたシンは足を止める。

「引き返すか」
「え、何で?」

 シンは引き返そうとするが、そこでパーティの一人がこちらに気付き声を上げる。

「あ! ねぇ、あそこ! あれ、もしかしてシンさんじゃない?」
「えっ、ほんと!?」

 シンは、さっと背を向けるが、時既に遅し。
 モンスターとの戦いに、けりをつけたその子達は、その死体も、ほったらかしにして二人の方へと駆け寄ってきた。

 後ろに周り込み、シンの顔を見て騒ぎ出す。

「わっ、本物だ」
「握手してください」

 わいわいとシンに群がってきた。
 シンは子供からも大人気であったのだ。

 シンは、ぎこちない笑顔で対応する。
 その姿を見たアリカは、何故シンが引き返そうとしたのか理解した。

(子供、苦手そうだものね。でも、ちょっと面白いかも)

 困った様子が読み取れて、アリカは少し面白く思えた。


 アリカが微笑ましく見ていると、シンを囲っている一人の少年と目が合う。
 目が合った少年はアリカを指さして声を上げた。

「あ、悪い奴だ!」

 その声で、子供達が一斉にアリカの方を見る。

「ほんとだ」
「何で居るの?」

 少年少女達は嫌なものを見るような目で、アリカを見てくる。
 アリカはシンとは真逆の意味で有名になっていた。
 嫌悪の視線を向けられ、アリカは困惑する。

「悪い奴は、あっち行け」

 そう言って少年はアリカの脛を蹴る。

「あだっ」

 攻撃を始めた子供達をシンは慌てて止める。

「待て待て。彼女は悪い奴じゃない」

 シンがそう言うと、子供達はぴたりと攻撃するのを止める。

「そうなの? みんな悪い奴って言ってたよ」
「悪い奴というか、ちょっと喧嘩しててね。でも仲直りして仲間になったんだ。今は俺と仲良しだから攻撃はしないでくれよ」
「そうだったんだ……。お姉さん、ごめんなさい」

 子供達はシンの言うことを素直に聞き、アリカに謝った。

「いいわよ。でも、これからは悪い人と聞いたからって、攻撃したりしないようにね。違ってただけなら、まだいいけど、本当に悪い人だったら酷いことされちゃうわよ」
「はーい」

 未だに自分がやったことに罪悪感を持っていたアリカは、一抹の心苦しさを抑えながら子供達に言い聞かせた。
 実際にシンには悪いことをしたので、悪人と言われても仕方がないとアリカは思っていたが、せっかくフォローしてくれたことを潰す訳にはいかなかった。

 話に区切りがついたところでシンが言う。

「じゃ、俺達は見回りがあるから」

 背を向けて、そそくさと、その場から離れ始めた。
 早足で去るシンをアリカは慌てて追う。

「あ、待ってよ。みんなじゃあね」

 少年少女達に別れを告げ、二人はその場を離れた。
 はずだったのだが……。
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