ゲームの世界に堕とされた開発者 ~異世界化した自作ゲームに閉じ込められたので、攻略してデバックルームを目指す~

白井よもぎ

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第三章

57話 再挑戦

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 天獄の大迷宮前。
 準備を整えたシン達は再び挑むべく、天獄の大迷宮へとやってきた。

「さーて、いよいよ本気のリベンジマッチですね。仲間を失い、一度は心折れそうになったパーティが、苦難の末にそれを乗り越え、再び復活! しかも、失った仲間の友が、遺志を引き継いで参戦するなんて何と熱い展開ですか。映えます。超映えますよ。記事にするには最高のストーリーです」

 ミリアが片手に持ったメモ帳に興奮気味にペンを走らせる。
 今度はクリアできる見込みがあるとのことでミリアに声をかけたら、快くもう一度、密着取材をしてくれることとなった。

 メンバー一同、準備は万全である。
 ガウルの代役として入ったアンジェラは装備をルシフェル素材のものに一新し、連携の練習もして、シン達と息の合った戦いができるようにしてある。
 後衛とミリアは前回と同様に大量のアイテムの入った袋を背負っているが、モコは袋の他にもう一つ、ガウルの形見である盾を装着していた。
 ガウルが居なくなったとはいえ、それでも前衛の防衛が手厚い、このパーティで後衛が盾を持つ意味は薄いが、気持ちだけでもガウルと共にクリアしたいとのことで形見を持っていくことにしたのである。

 みんなが平然としている中、アンジェラは一人強張った面持をしていた。

「ここが世界最難関ダンジョンか……。あー、柄にもなく緊張してきた」

 アンジェラがここに来るのは、初めてであったので緊張していた。
 反対にアリカは余裕の表情で返す。

「最初はそうなりますよね」
「……アリカ達は平然とし過ぎじゃないか? 何度も来てるのは分かってるが、世界最難関のダンジョンだぞ」
「確かに他のダンジョンのモンスターよりは強いですけど、言うほど危ない所じゃないですよ。ねぇ?」

 アリカがモコに同意を求める。

「そうですね。私は二回目ですけど、ダンジョン自体は思ってたより大したことなかったです」
「大したことないって……。そりゃあ、このパーティが滅茶苦茶強いことは分かってるけど……おかしいだろ」

 天獄の大迷宮前は、世間では世界一危険な場所として通っている。
 長年冒険者をしているアンジェラは一度も行ったことがなくても、その恐ろしさを十二分に理解していた。
 だから、クリアを見込める実力があるとはいえ、二人の反応が異常に思えたのである。

 三人が喋っていると、ミリアもその話に入ってくる。

「シンさんが関わっている時点で、常識は通用しませんからね。私なんて、この前、ここと同じ感覚で他のパーティに同行したら死にかけましたよ。ははは」
「それは笑いごとじゃないだろ……」

 アンジェラは呆れた顔で突っ込みを入れた。


――――


 第二形態となったルシフェルがシンに向けて爪を振り下ろす。
 シンはそれに合わせうように拳を打ち込んだ。
 攻撃が、ぶつかり合い、互いに弾かれる。

「ミイ! アンジェラさん!」
「あいよっ」「おうっ」

 ミイが間に入り、透かさず高速連続斬りを行った。
 凄まじい勢いで斬撃を入れる。
 そして最後に一閃をかますと、ルシフェルは大きく仰け反った。
 直後、ルシフェルの身体を後ろから剣が貫く。
 すると、その身体から光が抜け、ルシフェルは力尽きた。
 剣が抜け、後ろからアンジェラの姿が現れる。


 完全に息絶えたことを確認したシン達は勝利を喜ぶ。

「勝ったー」

 攻略は順調に進んでいた。

 シンはルシフェルの死体に駆け寄り、素材を剥ぎ取り始めた。
 剥ぎ取っているとアンジェラが話しかけてくる。

「前の魔獣災害の時は、こいつをとんでもない化け物だと思ってたけど、シンの方がずっと化け物だな」

 アンジェラは実際にシンと一緒に戦って、その凄さを身に染みて理解した。

「俺はただ、適切な指示や行動をしているだけですよ」
「それが完璧すぎるからヤベぇんだよ。本当に人間かよ」
「失礼な。人間ですよ。紛れもなくね」

 この世界の人間とは少し違うが、とシンは心の中で付け加えた。

「信じられねー。……でも、ガウルがまた夢を追いたくなった気持ちも分かるな。これだけ凄えリーダーなら、どんな相手が来ても負ける気がしない」

 アンジェラも曾てはガウルと同じく天獄の大迷宮の踏破を夢見ていた。
 このパーティにはモコを守る為に志願したのだが、共に戦っていくうちに彼女も同様に忘れていた情熱が、ふつふつと蘇ってきていた。


 二人で話していると、アリカがシンに声をかけてくる。

「ねぇねぇシン、もう装備作る予定ないのよね? これ、売るといくらぐらいになるの?」

 獲得品を売却したお金はパーティの皆で分配する。
 天獄の大迷宮のモンスターは雑魚でも非常に高額だったので、アリカとしてはボスモンスターの値段がいくらになるかは非常に気になるところであった。

「いくらだろうな……。現状、俺達が流さない限り市場には流れないものだから、腕次第でいくらでも吊り上げられそうだが。普通にギルドに売るとしたら、雑魚が数百万から数千万だったから……十億、もしかしたら百億いくんじゃない?」

 シンがそう言うと、周りの空気が一瞬で変わる。

「そんなに……。ど、どうしよう、もう十分お金持ってるのに……」
「最難関ダンジョンのボスだもんな。それくらい行くか……」
「帰ったら、みんな大金持ちですね」

 シンはそんな様子を見て、何を今更と思う。
 既にルシフェル二体とエンシェントドラゴンの素材を手に入れている。
 装備品に加工しているが、シンの監修によって極めて高品質に加工されたことから、売れば素材以上の値段で売ることが出来るだろう。

 この世界の住人ではないシンは、どれだけ大金を手に入れようとも、自分の世界では使えないお金であると考えていたので、攻略を進める為の道具としか見ていなかった。

「興奮するのはいいが、金に気を取られてミスはするなよ」
「分かってるわよ。はぁ……最近、お金が入り過ぎて、金銭感覚おかしくなるわ」

 シンが注意をするが、アリカ達は桁違いの大金持ちになるという事実を受け、半ば、のぼせたような様子であった。

 素材を剥ぎ取り、皆が落ち着いたところで、シン一行は再び奥へと進みだした。




 折り返し地点を過ぎ、ダンジョンの後半へと入る。

 後半の構造は、前半の地獄を思わせるデザインと打って変わって、ルシフェルが第二形態となった時に変化した部屋模様と同じく天国を思わせるようなデザインであった。
 長閑な公園のような自然的な風景だけではなく、宮殿のような気品のある石の柱や大理石の床など人工的なものも見受けられる。

 シン達が整備された床を歩いていると、一匹のモンスターが現れた。
 白い翼に頭には丸い輪っかが浮いている、まるで天使のようなモンスター、エンジェルである。

 エンジェルと遭遇したシン達は、即座にアリカの閃光手榴弾で目を潰し、両羽を破った。
 そして総攻撃を行い、あっという間に倒す。

 このエンジェルは能力的に前半に出てきたデーモンの亜種とも言えるモンスターだった。
 基礎能力が若干上がったのと、状態異常の効果が違うだけで、攻撃パターンは殆ど同じなのである。
 後半に出てくるモンスターは、大体このような前半のモンスターの強化版であった。
 対処法は基本的に変わらない為、十分な戦力さえあれば問題なく倒せる。


 それからもシン達は出てくるモンスターを難なく倒していく。

 ガウルが抜けた穴としてアンジェラが入ったが、グラディエーターは防御には向いていない為、盾役はシンが代理で務める。
 防御や引き付け性能は専門クラスに及ばないものの、絶妙なタイミングでの往なしによってノーダメージで敵の攻撃を凌いでいた。

 そしてシンが攻撃役を外れた代わりをアンジェラが務めていた。
 ルシフェルの素材で作った最強クラスの武器に、シンの指導によって強化されたスキルが合わさって放たれる攻撃は凄まじく、攻撃特化のクラスでしか出せない高い殲滅力を叩き出していた。

 パーティ全体としての防御面は薄くなったが、より攻撃寄りになったことで殲滅時間が飛躍的に短くなったのだ。


 出てくるモンスターを倒しながら進んでいると、途中、美しい壁画が立ち並ぶ通路に差し掛かった。
 素通りしようとするシンだが、他のメンバーは足を止めて壁画を眺め始める。

「こんなところに壁画が……」
「神様が描かれてるわね」

 壁画には神である茂、シーゲルが大地や人々を作る様子が描かれていた。

「天地創造の絵でしょうか。教会のものとは微妙にデザインが違いますね。……これ、結構凄い発見なんじゃないですか?」

 ミリアはカメラのマジックアイテムを取り出し、写真を撮り始めた。
 だが、立ち止まるメンバー達をシンが咎める。

「そんなところで道草食ってないで、さっさと進むぞ」
「ま、待ってください。これは考古学的に非常に価値のある発見なんですよ。それこそ簡単に行ける場所だったら、国が派遣団送るくらいに」
「今日は攻略目的で来たんだ。調査する為じゃない」

 職業柄、ミリアはこの大発見を無視することはできなかった。
 だがシンは、それを作った当の本人である。
 曾て教会で描かれた絵を適当に弄って張り付けただけなので、シンからしたら何の面白みもないものであった。

 取り付く島もないシンをアンジェラが窘める。

「ちょっとくらい、いいじゃないか。モンスターも見当たらないことだし、休憩がてら調査させてやっても問題はないだろう?」
「む……分かりました。少しの間だけですよ」

 シンは早く進みたかったが、休憩なしに進んでいては、精神の疲労で戦いが不安定になる。
 どの道、休憩は何処かで取らなければならなかったので、ここで休憩を取ることにした。
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