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第二章
13話 工業都市ビフレフト
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同行ついでに馬車の護衛をしつつ道を進み、程なくして街へと到着する。
到着したのは工業都市ビフレフト。
工業都市として発達したその街は、家庭用品から業務用機器、魔道具まで、様々な商品の製造拠点となっており、街並みは他の町とはちょっと変わった、スチームパンクな景観をしていた。
社用ビルや工場、倉庫などが至る所に見られ、そこで働く従業員やその家族など、多くの人々で活気に溢れている。
凛達は入口の門で、捕えた山賊達を警備兵に引き渡し、街の中へと入る。
その際、獣モードの玖音は街の外に待機と見せかけて、シェルターミラー内に隠れた。
馬車に乗り換えて、表通りを進む。
表通りは店や会社が立ち並び、とても賑わっていた。
進んでいた馬車は、立ち並ぶ建物の中でも一際大きいビルの前で、馬車が停止する。
「ここです」
馬車から降りた凛は、建物を見上げる。
日本のビル程の高さはないが、この世界では珍しい高さをしており、周りと比べても、群を抜いて立派な構造をしていた。
「本当は自宅で持て成したいところだったのですが、来客に対応する準備していませんでしてね。無粋ではありますが、会社で持て成させていただきます。おっと、名刺をお渡しするのを忘れていました」
ふくよかな男性は、懐から取り出した名刺を凛に渡す。
その名刺にはウェルダム商事・代表取締役、ロバート・ウェルダムと記されていた。
(社長……それも、かなりの大企業の? ヤバ、いいコネが出来たかも)
下心から、凛は内心喜ぶ。
総合商社であるウェルダム商事は、様々な産業に幅広く手を伸ばしている領内一の大企業であった。
その代表取締役に恩を売ったとなると、それは強力なコネが出来たも同然と言える。
この世界で後ろ盾がない凛にとって、権力者のコネは、何かあった時の保険として重宝するものだった。
胸を躍らせる凛はロバートに連れられて、端の階段から、社員用出入口のある二階へと上がる。
出入り口前へと来ると、そこに扉に向かって土下座をしている男性と少女が居た。
その異様な光景を見た凛はぎょっとする。
「あぁ、気にしないでください。融資の打ち切りになった人が、気を引こうとしているだけですから。こういうことはよくあるんです。娘連れで同情してもらおうとは、実に浅ましい」
ロバートは、まるでゴミを見るかのような目を、土下座する父娘に向け、その横を素通りする。
凛は非常に気になる様子で、チラチラと父娘を見ながら、ロバートの後を追った。
応接室に案内された凛は、高そうなお茶やお茶請けで持て成される。
「そうですか。旅の冒険者として、世界を周っているんですね。是非とも武勇伝をお聞きしたいものです」
社員に謝礼のお金を用意してもらう間、ロバートが話し相手として、接客してくれていた。
しかし、凛の様子は上の空。
先程の父娘のことが、気になってしょうがなかった。
「あ、あのっ。私への謝礼はいいから、さっきの父娘に融資をしてあげてくれませんか?」
憐れに思った凛は謝礼を放棄して、父娘への融資を頼み込んだ。
だが、その言葉を受けたロバートは溜息をついて言う。
「お気持ちは分かりますが、それは出来かねます。融資を打ち切った理由は、見込みがないからです。利益が期待できないところに融資をしても、無駄金に終わるだけ。それは商売人としてできないことです」
ロバートから返って来たのは、断りの言葉。
冷たい返事ではあったが、商売人として当然の返答であった。
「ですよね。なら、見込みがあったら?」
「見込みがあれば、勿論融資しますが……。もしや経営にも明るいのですか?」
「いえ、明るいとまでは。ただ、私なら何か出来るかもと思いまして」
経営には詳しくなかったが、他人よりも能力が高く、アーティファクトも持っていた為、別の切り口から改善策を出せるかもしれないとの考えだった。
「……普段なら一蹴するところですが、貴方ほどの方なら、本当に何とかしてしまうかもしれませんね。分かりました。利益を見込めるようになったなら、融資を再開することをお約束しましょう」
山賊との戦いで力の一端を見ていた為、ロバートは凛の活躍を期待して、話を取り合ってくれた。
到着したのは工業都市ビフレフト。
工業都市として発達したその街は、家庭用品から業務用機器、魔道具まで、様々な商品の製造拠点となっており、街並みは他の町とはちょっと変わった、スチームパンクな景観をしていた。
社用ビルや工場、倉庫などが至る所に見られ、そこで働く従業員やその家族など、多くの人々で活気に溢れている。
凛達は入口の門で、捕えた山賊達を警備兵に引き渡し、街の中へと入る。
その際、獣モードの玖音は街の外に待機と見せかけて、シェルターミラー内に隠れた。
馬車に乗り換えて、表通りを進む。
表通りは店や会社が立ち並び、とても賑わっていた。
進んでいた馬車は、立ち並ぶ建物の中でも一際大きいビルの前で、馬車が停止する。
「ここです」
馬車から降りた凛は、建物を見上げる。
日本のビル程の高さはないが、この世界では珍しい高さをしており、周りと比べても、群を抜いて立派な構造をしていた。
「本当は自宅で持て成したいところだったのですが、来客に対応する準備していませんでしてね。無粋ではありますが、会社で持て成させていただきます。おっと、名刺をお渡しするのを忘れていました」
ふくよかな男性は、懐から取り出した名刺を凛に渡す。
その名刺にはウェルダム商事・代表取締役、ロバート・ウェルダムと記されていた。
(社長……それも、かなりの大企業の? ヤバ、いいコネが出来たかも)
下心から、凛は内心喜ぶ。
総合商社であるウェルダム商事は、様々な産業に幅広く手を伸ばしている領内一の大企業であった。
その代表取締役に恩を売ったとなると、それは強力なコネが出来たも同然と言える。
この世界で後ろ盾がない凛にとって、権力者のコネは、何かあった時の保険として重宝するものだった。
胸を躍らせる凛はロバートに連れられて、端の階段から、社員用出入口のある二階へと上がる。
出入り口前へと来ると、そこに扉に向かって土下座をしている男性と少女が居た。
その異様な光景を見た凛はぎょっとする。
「あぁ、気にしないでください。融資の打ち切りになった人が、気を引こうとしているだけですから。こういうことはよくあるんです。娘連れで同情してもらおうとは、実に浅ましい」
ロバートは、まるでゴミを見るかのような目を、土下座する父娘に向け、その横を素通りする。
凛は非常に気になる様子で、チラチラと父娘を見ながら、ロバートの後を追った。
応接室に案内された凛は、高そうなお茶やお茶請けで持て成される。
「そうですか。旅の冒険者として、世界を周っているんですね。是非とも武勇伝をお聞きしたいものです」
社員に謝礼のお金を用意してもらう間、ロバートが話し相手として、接客してくれていた。
しかし、凛の様子は上の空。
先程の父娘のことが、気になってしょうがなかった。
「あ、あのっ。私への謝礼はいいから、さっきの父娘に融資をしてあげてくれませんか?」
憐れに思った凛は謝礼を放棄して、父娘への融資を頼み込んだ。
だが、その言葉を受けたロバートは溜息をついて言う。
「お気持ちは分かりますが、それは出来かねます。融資を打ち切った理由は、見込みがないからです。利益が期待できないところに融資をしても、無駄金に終わるだけ。それは商売人としてできないことです」
ロバートから返って来たのは、断りの言葉。
冷たい返事ではあったが、商売人として当然の返答であった。
「ですよね。なら、見込みがあったら?」
「見込みがあれば、勿論融資しますが……。もしや経営にも明るいのですか?」
「いえ、明るいとまでは。ただ、私なら何か出来るかもと思いまして」
経営には詳しくなかったが、他人よりも能力が高く、アーティファクトも持っていた為、別の切り口から改善策を出せるかもしれないとの考えだった。
「……普段なら一蹴するところですが、貴方ほどの方なら、本当に何とかしてしまうかもしれませんね。分かりました。利益を見込めるようになったなら、融資を再開することをお約束しましょう」
山賊との戦いで力の一端を見ていた為、ロバートは凛の活躍を期待して、話を取り合ってくれた。
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