こっち向いて、運命。-半神騎士と猪突猛進男子が幸せになるまでのお話-

だいきち

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「ミハエルちゃんってんだ。僕シス。淫魔とのハーフ、よろしくね。」
「あ、よ、よろしくお願いします…。」
「ミハエルちゃんってさ、童貞しょじっ、いたい!」
「だから変なことばかり言うなって言ってるだろう。」
 
 スパン。と、先ほどの鈍い音とはちがって、今度は手首のスナップを効かせたサディンの一髪がシスの頭をひっ叩く。呆れ顔のサディンがチラリとミハエルを見ると、どうやら下ネタに耐性がないらしい。顔を赤らめながら俯いてしまっていた。小さな声で。そのような認識で誤りはないです…、などと言ってはいるが。全く、いったいどんな育て方をすればこんなウブに育つのかと、粗野な父親に育てられたサディンはそんなことを思った。
 
「ミハエル、聞いているとは思うが、今回の任務は男娼館の潜入だ、お前が経験がないのは十分に知ってはいるが、今回ばかりは危険を孕むかもしれん。その辺はわかっているよな?」
「もちろん、承知しています。サリエルもいますし、何かあった時はしっかりと自分を守る手段だって考えています。」
 
 本当は何も考えていないが、つい強がってしまった。サリエルはどうやらミハエルの動揺を嗅ぎとったらしい。にこりと笑うと、楽しげにたしたしと尾を揺らす。
 
「ならいいが、シスが目をつけられたからな、次はミハエルが市井で釣る番だ。相手は…、」
「サリエルがいますから。」

 つい口をついて出てしまった。言ってから、何を意地になっているのだと、自己嫌悪に陥ったが、もう後の祭りである。サディンは少しだけ目を見張った後、ゆっくりと口をつぐんだかと思えば、そうか、と小さく言った。

「えっ、サディンじゃなくていいの?」
 
 シスが驚いたようにそんなことをいう。どうせ経験もないなら、親しい仲のものに頼んで、ふりをしてもらう方がいいのではないかとミハエルにアドバイスをしたが、ミハエルは頑なであった。
 
「俺は一向に構わないですよ。ミハエルは可愛らしいしな、うん、挿入はありか。」
「なしに決まってるだろう。」
「それは団長が決めることじゃないだろう。」
 
 ニコニコ顔のサリエルが、サディンに言い返す。挿入という言葉を聞いて、ミハエルの耳が赤くなる。初めてをサリエルで経験するのは嫌だ。だって、ミハエルはサディンに渡したかった。だけどそのチャンスは自分で無碍にした。まあ、指名したところでサディンがミハエルを抱くことはないだろうが。
 
「えー、なんかサリエルに食われるの嫌だなあ。なら挿入なしでふりもしてくれる人材探してこようか。」
「んな都合のいいやついるか。」
「男娼相手に照れまくって挿入に至らなかったジキルがいるじゃん。」
「ああ、ジキル…」
 
 シスが、突然庭師のジキルの名を出してきたことに首を傾げる。あの二人が蜘蛛の巣のメンバーだと言うことは知らなかったらしい。サリエルは、ミハエルを抱けないのは残念だが、近くで見ている分には構わないなどとなかなかにマニアックなことを言って、ミハエルを引かせていた。 

「挿入はなし、ペッティングだけ。それならミハエルだって安心でしょ。まあヴァージンなんて急いで捨てるもんでもないしね。」
「なんか、すごい複雑な気持ちになってきた。」
「何目線だよサディン。そう言うのが一番うざったいんだよ。知ってる?」
 
 妙な落ち込み方をするサディンの目の前で、ミハエルも居た堪れなくて俯いてしまった。とりあえず、ジキルにはお世話になりますと挨拶をしたほうがいいのだろうか。そんなことを真剣に悩んでいるあたり、クソ真面目と言われる所以なのだが、本人はそれに気がついている様子はない。
 
 こうしてミハエルの初めての任務、大人への第一歩を踏み出すことが決まったその日の夜。支給された衣装を部屋で広げ、そのあまりに破廉恥な生地面積の少なさに、カインへの評価が大幅に落ちたことは余談である。
 
  
「セイセイセイセイ。待てって、え?嘘だろ今日が俺の命日になるの?」
「うるっさいわジキル。とりあえずお前は優しく触れるだけ。挿入はなし。入れたらお前の竿と玉袋がバイバイすることになるからな。サディンの手で。」 
「そうだぞジキル。俺に汚いものを触らせないでくれ。」
「え、素手で引きちぎる前提?」
 
 たまひゅんなんですけど。そう言って顔を真っ青にさせたジキルは、任務当日の夜になって、自分の相手がミハエルだと言うことを聞かされた。シスによって、やけにしつこくシャワーを浴びろだの、歯を磨けだの言われた疑問が一掃された。なるほど確かに、医局の白百合に触れるのならどうりだろう。
 花売りは見目がよく、半魔の男娼がスカウトされる。そして、相手にするものも、金持ちか地位のあるもの。その情報を掴んでいたシスによって磨き上げられたジキルは、普段の粗野な雰囲気は鳴りを潜めていた。ただし、口を開かなければだが。
 
「いいじゃん、雌の一本釣りしてそうなヤリチン貴族にみえる。」
「お前それ絶対褒めてないだろう!?」
「うるさいお前ら。準備ができたのならさっさと支度して市井へいけ。ミハエルはもう構えてるぞ。」
 
 少しだけ苛立ちを含んだような声色でサディンがいう。ジキルもシスも、サディンが機嫌が悪い理由もなんとなく察している。要するに、散々断ってきたくせに、ミハエルが自分のことを指名すると思っていたのだ。しかも質が悪いことに、周りはそれを気づいていても、本人が気が付いていないパターンだ。
 
「サディンってさあ…」
「なんだ。何か文句あるのか。」
「こっわ。顔面の治安がいつも以上に悪すんませんなんでもないっすマジイッテェ!!!」
 
 ぎろりと睨みつけられたかと思うと、シスの一言が勘に触ったらしい。しかしそれを丈夫だからという理不尽な理由だけでジキルにお鉢が回ってくるのは絶対に違うと思う。
 絶対男の趣味悪いよなミハエルせんせー。ジキルは蹴り上げられた尻を押さえながら、そんなことを思った。
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