記憶。

ひとしずく

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1章「出会い」

11話「2人に待つ未来」

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彼が着いた時には、敵は全て倒されていて…
祭壇に吊るされた彼女を救い出し、部屋を出るところだった

「おや、シンラ。遅かったねえ」
「良かった、また捕まったのかと思ったわ。それでもいいのだけれど」

何も言えなかった。
ただただ…俺かっこ悪!!と。
何も出来ぬままただ中性の人物に助けられただけではないか

「彼女は僕に任せておいて、しっかり帰しておくから。先に出ているといいよ、あんたもね」
「あ、ありがとう…」

惨めすぎる

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
私は2人が城から去るのを見て、また部屋に戻ってきた。
あの祭壇の上に置かれた手鏡と剣を見つめる。
きっとルアとネスのものだろう…彼らの唱えと今の国名からして、2人はもう亡くなってるはず
なら――私の魔法で、見てやる

「…"記憶再現-memory recall-"」

ネスの剣と手鏡に触れる。
その瞬間流れてきた記憶に、私は息を飲んだ


深夜…兄妹は互いに愛し合っていることを、確かに伝えた。
その瞬間――親である彼らは心の底から失望した

母は泣き崩れ、叫び、父は怒り狂う
親も兄妹もこうなるなんて予想していなかったであろう
認められない、認めるべきではない禁断の恋愛

この日以降、兄妹は引き裂かれた

「ねえどうして!?私は、私は兄様と一緒にいれるだけで、それだけでいいのに…!」
「これでいい…これでいいんだ」

ルアは遠い親戚に送られ、ネスは次期国王として準備が進められた。他国から訪れる数々の女性から、ルアの代わりを見つけないといけなかった

"これ以上、私から何を奪うっていうの"
"こうするしかなかった"

「……兄様と一緒にいれないのなら…死んだ方がマシだわ

返して…私の、私だけの兄様を…返して!!」

親戚に送られてから1週間。
ネスから手紙を受け取った彼女は絶望した表情をしてそう叫び崖から飛び降りた――

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ねえ、お兄様。」
「どうしたの、ルア」

城の庭でくつろぐ2人。
妹である女の子が隣に座る兄に声をかける

「私、血の繋がった子ではないのかしら…」
「どうして?」
「その、学校でそう言われたから」

少し切なげに顔を伏せる彼女
兄はふ、と口元を緩ませて頭を撫でてやる
だから今日は帰ってきてからずっと元気がなかったのか、と納得しながら

「なに、しっかり血の繋がった兄妹だよ。ルアが心配することじゃない」
「本当に?良かった…私、お兄様の近くにいたいから」

控えめに告げた彼女からふわりと香った花の匂いに兄は少しだけ頬を赤く染めた

そんな会話をしたその日の夜、兄は現国王である祖父に部屋に招かれた。
兄と祖父、この2人の交わした会話によって…国の未来を変えた

「ルアは現女王とその召使いとできた間の子であること」
「国王は召使いを強く恨み、ルアですらも愛せない」

「なんとしてでも兄であるネスが彼女を陥れろ」

数年後、妹は直接的ではないとはいえ、兄の手によって命を落とした。
あの日送った手紙をきっかけに…

「――確かに愛してた。でも、こうするしかなかったんだ、だって君は穢れた血なのだから」

"なのに…何故涙が止まらない?"
ルアの死を聞いたあと、兄である彼は涙を流しながら両親を強く睨みつける。
"仕方のないことだ"と他人事のように話す彼らを。

「…お母様、お父様、私は許しません
妹と私を引き離し、ルアを殺したこと」

「この国を壊したら…地獄まで、追いかけてやりますから」

"ルアに会うまで、私は絶対に貴方達を許さない"
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みんなの感想(1件)

レトロ
2022.02.21 レトロ

感想失礼します

主人公ユキのこれからの出会い、展開が気になってきました☺️
キャラが一人ひとり、キャラがあって面白かったです。続き楽しみにしてます✨

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