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第一章
6 淫らな治療
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一体何がなんだか分からない。
ミアが驚いているうちに、いつのまにか足先は彼の熱い口の中に包まれ、ぬるぬるした何かが指を伝っていた。
「やっ、やだっ……どうして?! ……ひッ」
ちゅぷ、と足の親指を咥えられて、ミアは抑えきれない小さな悲鳴を上げる。
たったさっき出会ったばかりの男性の前で素足を露出しているだけでなく、爪先まで口に含まれているなんて。
あまりの出来事にミアはすっかりパニックで、今にも身体中が沸騰しそうだ。
こんな事、もしも母が聞いたら卒倒するだろう。
「やめてっ、もう……ほんとうにだめぇっ」
しかし彼は一向に足を離してくれず、皮の剥けた箇所を舌が丹念になぞっていく。
最初はぴりりとしていたそこも、何度も何度も癒すように舐められているうちに感覚が麻痺してきた。それが舐められた効果なのか、精神的な影響なのか、ミアには知る術もない。
次第に抵抗する気力も失っていく。
足元では、彼が指の1本ずつを口に含み、端から順に丁寧に舐めしゃぶっていた。
桜貝のような小さな爪が見えたり隠れたりを繰り返し、緊張した足の甲には細い骨が等間隔に浮き上がっている。
足の踵から指の付け根までは彼の両手で包み込まれて、絶妙な力加減で揉まれた。柔らかく労わるような手の動きと、淫蕩な舌の動き。
翻弄されて、溺れてしまいそうだ。
「そんなに緊張しなくていい。力を抜いて?」
「そんなっ……、あぁっ」
戸惑ってばかりだったミアの中に、新しい未知の感覚が芽生え始めるのはすぐだった。足の指を刺激されているだけなのに、その不思議な感触が足を伝って駆け上がる。
ぞわぞわとしたそれはミアの腰を甘く痺れさせ、悶えさせた。
熱が臍の奥に溜まって、そしてーーー。
「あっ……、ふぁっ」
親指と人差し指の間、皮膚の柔らかい部分に舌が這わされた時だ。それまで得体の知れない感触に困惑していたミアが、初めて“きもちいい”と認識したのは。
ぴくんと震えながら、知らず知らずのうちに恥ずかしい声が漏れてしまい、ミアは震えながら指を噛む。
ちゅぽ、と音がしてやっと彼の口から指が引き抜かれた。
「……気持ちよかった?」
大人の色香を纏う声色が鼓膜を震わせる。
憂いを湛えたようなその表情があまりにも魅惑的で、ミアは潤んだ瞳で素直に頷いた。
「そう、よかった。じゃあもっと気持ちいいこと、しようか」
「え……?」
彼がしなやかに伸び上がる。
ミアの隣に並んで座ったか思うと同時に、そのままベッドに押し倒された。
ピンで固定してあったはずのティアラが音もなくベッドに落ちる。
それはまるで最初から決まっていたかのように滑らかな動きで、あたかも獲物を見つけた肉食獣のような俊敏さだった。わずかな抵抗すらしようと思う間もない。
「ここで君を、今すぐ私のものにしたい」
吐息がかかる程の距離で告げられ、ミアは困ったように目線を泳がせた。
正直ミアには、彼の言っている意味が分からなかった。
もちろん「自分のものにしたい」というのは分かる。
ミアだって友人の飼っている可愛い子猫を見れば自分も飼いたくなるし、伯爵家に出入りする商人が装飾品を持って来れば、気に入ったものを一つは新調したくなるのだから。
しかしミアは人間だ。お金では買えない。
一応結婚という手段なら「自分の妻にする」という比喩も可能だが、今すぐと言っている時点で当てはまらない。
なぜならこの国の貴族の結婚制度では、まず婚約の公示をしてから国に届け出を出す。その後、重婚や近親婚、不正の可能性がないかの審査を受け、国王の許可が下りてからやっと結婚という非常に手間のかかる手続きが必要なのだ。
そうなると彼の言っている意味がますます理解出来なくて、一体自分に何が起きているのか、少しでいいから考える時間が欲しかった。
黙って目を伏せたミアを見て、それは肯定の印だと受け取ったのかもしれない。
戸惑いばかりのミアの気持ちなどお構いなしに、なんと彼はミアを寝台に押し付けてきたではないか。
ミアの本能的な部分が警鐘を鳴らす。
「な、なにっ? やめて!」
ミアはなんとか押し返そうするが、日頃から鍛えている男の腕には到底敵わない。
渾身の力を振り絞ったミアに対して、彼は涼しい顔をしている。
「大丈夫だ、最初は少し痛いかもしれないが、出来るだけ優しくする」
「えっ? また痛い事するつもりなの?!」
驚きで声が裏返ってしまった。
さっきの一連の動作で治療は終わったのではなかったのか。
もしかして、さっきのは下準備でものすごく滲みる薬がこれから出てくるのだろうか。
……そんなのあんまりだ。一度終わったと見せかけて、一番痛い薬を最後に持ってくるんだから。
ミアの中に、だんだんと不安が湧いてくる。
「もう治ったと思ってたのに!」
本格的に暴れ出したミアを見て、少々面食らった様子の彼が力を抜いて身を引いた。それを機に彼の下から抜け出して、ミアは思いっきり不満をぶつける。
「ひどいわ! もう痛いのはいやよ!」
視界がじんわりと滲んでいるということは、多分涙目になってしまっているのだろう。
そんな顔で凄んでも全く迫力はないだろうが、言わないよりはマシである。
殺気立った子猫のようにふーふーと息を荒くすると、それに対峙した彼は困惑を露わにした。
「ちょっと待て、何が酷いんだ。……ここに何をしに来たか分かってるよな?」
彼は、今までの強引な様子が嘘のようにその秀麗な顔を曇らせている。
だがその口から出た問いの答えは、ひどくありきたりなものだ。
「何って、足を治療しに来たんでしょう?」
それしか思い当たらないため、自信たっぷりに答える。
「それから?」
「……そ、それから?」
予想外に追及され、ミアははたと考え込んだ。他に何かあっただろうか。
一生懸命考えて、考えて、『あとはドレスを綺麗にしないといけないわね』と答えたが、彼は無言で首を振るだけだった。
一体なにがいけなかったのだろうか。
そもそもここは体調が悪い者が使う部屋なのだ。
今日は他にも具合を悪くした者が出て休憩室が埋まってしまっていると言うし、足が小康状態となったミアはもう出て行くのが筋だと思う。
それを目の前の彼に説明すれば、愕然とした表情を浮かべて隣から退き、寝台の端に腰掛けて頭を抱えてしまった。手の指の間から金の髪がさらさらと溢れ、なんだか苦悶の表情を浮かべている。
そんな物憂げな様子も素敵だわと見とれかけて、ミアはハッと我に返った。
「どうしたの。もしかして具合が悪くなったの?」
おろおろするミアに、彼が力なく笑う。
「そうじゃない。まさかここまで純粋培養だとは思っていなかったんだ。……簡単に付いて来たのは、休憩室の意味を知らなかったからか」
「休憩室の、意味?」
ミアは首を傾げる。
体調の悪い者が休む場所ではなかったのだろうか。
「……分からないならいい。君といると、自分がなんて汚れた人間なんだと思わされてしまうよ」
自嘲気味に言う彼は、ミアのよく分からないことばかり口にする。
また子供扱いされている気がして、ミアはちょっと機嫌を損ねた。
ミアが驚いているうちに、いつのまにか足先は彼の熱い口の中に包まれ、ぬるぬるした何かが指を伝っていた。
「やっ、やだっ……どうして?! ……ひッ」
ちゅぷ、と足の親指を咥えられて、ミアは抑えきれない小さな悲鳴を上げる。
たったさっき出会ったばかりの男性の前で素足を露出しているだけでなく、爪先まで口に含まれているなんて。
あまりの出来事にミアはすっかりパニックで、今にも身体中が沸騰しそうだ。
こんな事、もしも母が聞いたら卒倒するだろう。
「やめてっ、もう……ほんとうにだめぇっ」
しかし彼は一向に足を離してくれず、皮の剥けた箇所を舌が丹念になぞっていく。
最初はぴりりとしていたそこも、何度も何度も癒すように舐められているうちに感覚が麻痺してきた。それが舐められた効果なのか、精神的な影響なのか、ミアには知る術もない。
次第に抵抗する気力も失っていく。
足元では、彼が指の1本ずつを口に含み、端から順に丁寧に舐めしゃぶっていた。
桜貝のような小さな爪が見えたり隠れたりを繰り返し、緊張した足の甲には細い骨が等間隔に浮き上がっている。
足の踵から指の付け根までは彼の両手で包み込まれて、絶妙な力加減で揉まれた。柔らかく労わるような手の動きと、淫蕩な舌の動き。
翻弄されて、溺れてしまいそうだ。
「そんなに緊張しなくていい。力を抜いて?」
「そんなっ……、あぁっ」
戸惑ってばかりだったミアの中に、新しい未知の感覚が芽生え始めるのはすぐだった。足の指を刺激されているだけなのに、その不思議な感触が足を伝って駆け上がる。
ぞわぞわとしたそれはミアの腰を甘く痺れさせ、悶えさせた。
熱が臍の奥に溜まって、そしてーーー。
「あっ……、ふぁっ」
親指と人差し指の間、皮膚の柔らかい部分に舌が這わされた時だ。それまで得体の知れない感触に困惑していたミアが、初めて“きもちいい”と認識したのは。
ぴくんと震えながら、知らず知らずのうちに恥ずかしい声が漏れてしまい、ミアは震えながら指を噛む。
ちゅぽ、と音がしてやっと彼の口から指が引き抜かれた。
「……気持ちよかった?」
大人の色香を纏う声色が鼓膜を震わせる。
憂いを湛えたようなその表情があまりにも魅惑的で、ミアは潤んだ瞳で素直に頷いた。
「そう、よかった。じゃあもっと気持ちいいこと、しようか」
「え……?」
彼がしなやかに伸び上がる。
ミアの隣に並んで座ったか思うと同時に、そのままベッドに押し倒された。
ピンで固定してあったはずのティアラが音もなくベッドに落ちる。
それはまるで最初から決まっていたかのように滑らかな動きで、あたかも獲物を見つけた肉食獣のような俊敏さだった。わずかな抵抗すらしようと思う間もない。
「ここで君を、今すぐ私のものにしたい」
吐息がかかる程の距離で告げられ、ミアは困ったように目線を泳がせた。
正直ミアには、彼の言っている意味が分からなかった。
もちろん「自分のものにしたい」というのは分かる。
ミアだって友人の飼っている可愛い子猫を見れば自分も飼いたくなるし、伯爵家に出入りする商人が装飾品を持って来れば、気に入ったものを一つは新調したくなるのだから。
しかしミアは人間だ。お金では買えない。
一応結婚という手段なら「自分の妻にする」という比喩も可能だが、今すぐと言っている時点で当てはまらない。
なぜならこの国の貴族の結婚制度では、まず婚約の公示をしてから国に届け出を出す。その後、重婚や近親婚、不正の可能性がないかの審査を受け、国王の許可が下りてからやっと結婚という非常に手間のかかる手続きが必要なのだ。
そうなると彼の言っている意味がますます理解出来なくて、一体自分に何が起きているのか、少しでいいから考える時間が欲しかった。
黙って目を伏せたミアを見て、それは肯定の印だと受け取ったのかもしれない。
戸惑いばかりのミアの気持ちなどお構いなしに、なんと彼はミアを寝台に押し付けてきたではないか。
ミアの本能的な部分が警鐘を鳴らす。
「な、なにっ? やめて!」
ミアはなんとか押し返そうするが、日頃から鍛えている男の腕には到底敵わない。
渾身の力を振り絞ったミアに対して、彼は涼しい顔をしている。
「大丈夫だ、最初は少し痛いかもしれないが、出来るだけ優しくする」
「えっ? また痛い事するつもりなの?!」
驚きで声が裏返ってしまった。
さっきの一連の動作で治療は終わったのではなかったのか。
もしかして、さっきのは下準備でものすごく滲みる薬がこれから出てくるのだろうか。
……そんなのあんまりだ。一度終わったと見せかけて、一番痛い薬を最後に持ってくるんだから。
ミアの中に、だんだんと不安が湧いてくる。
「もう治ったと思ってたのに!」
本格的に暴れ出したミアを見て、少々面食らった様子の彼が力を抜いて身を引いた。それを機に彼の下から抜け出して、ミアは思いっきり不満をぶつける。
「ひどいわ! もう痛いのはいやよ!」
視界がじんわりと滲んでいるということは、多分涙目になってしまっているのだろう。
そんな顔で凄んでも全く迫力はないだろうが、言わないよりはマシである。
殺気立った子猫のようにふーふーと息を荒くすると、それに対峙した彼は困惑を露わにした。
「ちょっと待て、何が酷いんだ。……ここに何をしに来たか分かってるよな?」
彼は、今までの強引な様子が嘘のようにその秀麗な顔を曇らせている。
だがその口から出た問いの答えは、ひどくありきたりなものだ。
「何って、足を治療しに来たんでしょう?」
それしか思い当たらないため、自信たっぷりに答える。
「それから?」
「……そ、それから?」
予想外に追及され、ミアははたと考え込んだ。他に何かあっただろうか。
一生懸命考えて、考えて、『あとはドレスを綺麗にしないといけないわね』と答えたが、彼は無言で首を振るだけだった。
一体なにがいけなかったのだろうか。
そもそもここは体調が悪い者が使う部屋なのだ。
今日は他にも具合を悪くした者が出て休憩室が埋まってしまっていると言うし、足が小康状態となったミアはもう出て行くのが筋だと思う。
それを目の前の彼に説明すれば、愕然とした表情を浮かべて隣から退き、寝台の端に腰掛けて頭を抱えてしまった。手の指の間から金の髪がさらさらと溢れ、なんだか苦悶の表情を浮かべている。
そんな物憂げな様子も素敵だわと見とれかけて、ミアはハッと我に返った。
「どうしたの。もしかして具合が悪くなったの?」
おろおろするミアに、彼が力なく笑う。
「そうじゃない。まさかここまで純粋培養だとは思っていなかったんだ。……簡単に付いて来たのは、休憩室の意味を知らなかったからか」
「休憩室の、意味?」
ミアは首を傾げる。
体調の悪い者が休む場所ではなかったのだろうか。
「……分からないならいい。君といると、自分がなんて汚れた人間なんだと思わされてしまうよ」
自嘲気味に言う彼は、ミアのよく分からないことばかり口にする。
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