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第四章
11 初夜
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「く、口で……?」
「あぁ。このままでグラスを使うと水が溢れてしまうだろう?」
酔っ払っているとは思えないほどはっきりとした口調でアルベルトが言う。
確かに彼の言う通りだが、自分からくちづけをしたことのないミアは大弱りだ。
うろうろと視線を彷徨わせて、だが寝台をびしょ濡れにする訳にもいかず、意を決して透明なグラスに口をつけた。早く飲ませてあげないと彼がかわいそうだ。
冷たい水を口に含んだままグラスをサイドテーブルに置き、ミアは寝台に横たわったままのアルベルトに顔を近付ける。
こちらを射竦めるように見ている彼の目には強い光が宿っており、やはり酔っ払って倒れているようには見えない。
「……ん」
そうっと唇を重ねると、彼はわずかに口を開いた。
そんな気配を感じてとろりと水を流し込めば、彼の喉がそれを飲み下す音がやけに大きく聞こえる。よかった、うまくいった。
しかしもう一口欲しいだろうかと思って顔を上げようとした途端、ぬるりと熱い舌が潜り込んできた。
「やっ?! ……ぁ、ぅ……っ」
とっさに逃げようとしたのに、後頭部をがっしりと掴まれてそれは叶わなかった。
細い腰をきつく抱き寄せられ、舌を吸われ、いつの間にか目の前の景色が一転する。そこで見えたのは苦しそうに眉を寄せる彼の姿と、彼の瞳の色に重なるような淡い空色の天井だ。
「待って……っ、具合が悪いのではないの?! 今晩は、安静にしておいた方が……っ!」
アルベルトの体調を気遣ってぶんぶんと首を振ると、今にもまつ毛が触れそうな至近距離で射竦められた。
「本気で言ってる? 私はこんなに今日の日を待ち望んでいたというのに」
「え……?」
ミアはぱちぱちと目を瞬かせる。
彼が自嘲するように息を吐いた。
「……いや、なんでもない。そんなつれない事を言う口は塞いでしまおうか。私はもう一時も待てない」
言うや否や、再び唇が重なった。
指と指とを絡ませ、寝台に押し付けるようにして与えられた2度目のキスで感じたのは、ほのかな葡萄酒の香り。彼自身という檻に拘束されているミアには抗う術もない。
強引で性急なくちづけは、息を吸う間もない。
だが、彼に強く求められていることだけは分かった。うるさいほどに心臓の鼓動が高鳴り、触れ合っている部分から迸るような情熱が流れ込んでくる。
「ミア……、愛してる。早く君と繋がりたい……」
強引な行動とは裏腹な、切なげに響く声だった。
うっすらと目を開き、涙で滲む視界で見た彼はまるで捨てられることを恐れている幼子のようで。その視線に囚われたミアは、くったりと体の力を抜く。
「私も……早くあなたのものになりたい」
再び唇が合わさって、ミアは一生懸命それに応えた。
上手だねと褒めてもらえた時のように舌を吸って、唇を舐めて。優しく髪を撫でてもらうのが気持ち良い。
そうするうちに彼の手が柔らかい体を這い回り、首元の小さなくるみボタンを探り当てた。ぴっちりとナイトドレスの前を閉じているボタンが上から順番に外されて、少しずつ肌が露わになる。
ひとつめ、ふたつめ、みっつめ、よっつめ、いつつめ、むっつ……
「…………ミア、少しボタンが多すぎないか?」
唐突にボタンを外す手を止めたアルベルトが怪訝な声を上げた。
何しろナイトドレスの前面には、おびただしい量のボタンがずらりと整列しているのだ。これではボタンを外しているうちに夜が明けてしまう。
ところがミアは、あまりにも当然のことを聞かれてにっこりと頷いた。
「そうなの。私ボタン付けをとってもがんばったのよ。素肌を隠すためのボタンは貞節の象徴だと教えていただいたから、全部で58個つけたの」
教えてくれたのはもちろん母だ。
新妻の処女性を示すために初夜のナイトドレスにはたくさんのボタンをつけるものだと教えてもらったので、ミアは隙間がないくらいにびっしりとボタンを縫いつけたのだ。
非常に骨の折れる作業だったし、さすがの母も驚いていたが、出来上がった時の達成感は大きかった。着用する時はとても大変だったが。
得意げに説明すると、ふいに彼が黙り込んだ。
新婚衣装の慣例とはいえ、ボタンが多いのはあまり好きではなかっただろうか。
不安を抱えながら彼を見ると、そっと上半身を抱き起こされた。そして。
「仕方ないな、ではこのまま脱がすか」
「きゃあっ!」
なんと小さな子が親の助けを借りて衣服を脱ぐように、ミアのナイトドレスが頭からすぽっと抜かれたのだ。滑らかな絹の生地は白い肌を滑り、アルベルトによって寝台の下へと投げ捨てられる。
ボタンをひとつずつ外されていくうちに心の準備をしようと思っていたミアは大慌てだ。
「ひ、ひどいわっ」
「何がひどいものか。こんな時間稼ぎで夫を遠ざける君の方がひどいだろう?」
驚いて体を隠す間もなく下着の紐も引っ張られる。
一瞬のうちに裸に剥かれてしまったミアは、何の抵抗も出来ないままあっさりと組み敷かれた。
「ほら、もう観念して。初めてだから優しくしてやりたいのに、これ以上拒絶されると我慢がきかなくなる」
「……ぁ、んっ」
剣呑なことを言ったアルベルトの顔がミアの胸に埋まった。
1年前よりも少しだけ増した膨らみはそれをふんわりと受け止め、大きな手によって好き勝手に形を変えられる。薄紅色に尖った先端はぬるつく粘膜に包まれて、その熱さに火傷してしまいそうだ。
いやらしい水音を立てて吸われるのは、耳からも侵されているようだと思った。
抑えようと思うのに、恥ずかしい声があふれ出して止まらない。
絶対に叶わない抵抗を試みた足先が真っ白なシーツを滑り、ミアはつま先をきゅうと丸める。何度も嬲られた胸はじんじんと熱を持っていて、そこだけ自分の体ではないようだった。
「あぁ。このままでグラスを使うと水が溢れてしまうだろう?」
酔っ払っているとは思えないほどはっきりとした口調でアルベルトが言う。
確かに彼の言う通りだが、自分からくちづけをしたことのないミアは大弱りだ。
うろうろと視線を彷徨わせて、だが寝台をびしょ濡れにする訳にもいかず、意を決して透明なグラスに口をつけた。早く飲ませてあげないと彼がかわいそうだ。
冷たい水を口に含んだままグラスをサイドテーブルに置き、ミアは寝台に横たわったままのアルベルトに顔を近付ける。
こちらを射竦めるように見ている彼の目には強い光が宿っており、やはり酔っ払って倒れているようには見えない。
「……ん」
そうっと唇を重ねると、彼はわずかに口を開いた。
そんな気配を感じてとろりと水を流し込めば、彼の喉がそれを飲み下す音がやけに大きく聞こえる。よかった、うまくいった。
しかしもう一口欲しいだろうかと思って顔を上げようとした途端、ぬるりと熱い舌が潜り込んできた。
「やっ?! ……ぁ、ぅ……っ」
とっさに逃げようとしたのに、後頭部をがっしりと掴まれてそれは叶わなかった。
細い腰をきつく抱き寄せられ、舌を吸われ、いつの間にか目の前の景色が一転する。そこで見えたのは苦しそうに眉を寄せる彼の姿と、彼の瞳の色に重なるような淡い空色の天井だ。
「待って……っ、具合が悪いのではないの?! 今晩は、安静にしておいた方が……っ!」
アルベルトの体調を気遣ってぶんぶんと首を振ると、今にもまつ毛が触れそうな至近距離で射竦められた。
「本気で言ってる? 私はこんなに今日の日を待ち望んでいたというのに」
「え……?」
ミアはぱちぱちと目を瞬かせる。
彼が自嘲するように息を吐いた。
「……いや、なんでもない。そんなつれない事を言う口は塞いでしまおうか。私はもう一時も待てない」
言うや否や、再び唇が重なった。
指と指とを絡ませ、寝台に押し付けるようにして与えられた2度目のキスで感じたのは、ほのかな葡萄酒の香り。彼自身という檻に拘束されているミアには抗う術もない。
強引で性急なくちづけは、息を吸う間もない。
だが、彼に強く求められていることだけは分かった。うるさいほどに心臓の鼓動が高鳴り、触れ合っている部分から迸るような情熱が流れ込んでくる。
「ミア……、愛してる。早く君と繋がりたい……」
強引な行動とは裏腹な、切なげに響く声だった。
うっすらと目を開き、涙で滲む視界で見た彼はまるで捨てられることを恐れている幼子のようで。その視線に囚われたミアは、くったりと体の力を抜く。
「私も……早くあなたのものになりたい」
再び唇が合わさって、ミアは一生懸命それに応えた。
上手だねと褒めてもらえた時のように舌を吸って、唇を舐めて。優しく髪を撫でてもらうのが気持ち良い。
そうするうちに彼の手が柔らかい体を這い回り、首元の小さなくるみボタンを探り当てた。ぴっちりとナイトドレスの前を閉じているボタンが上から順番に外されて、少しずつ肌が露わになる。
ひとつめ、ふたつめ、みっつめ、よっつめ、いつつめ、むっつ……
「…………ミア、少しボタンが多すぎないか?」
唐突にボタンを外す手を止めたアルベルトが怪訝な声を上げた。
何しろナイトドレスの前面には、おびただしい量のボタンがずらりと整列しているのだ。これではボタンを外しているうちに夜が明けてしまう。
ところがミアは、あまりにも当然のことを聞かれてにっこりと頷いた。
「そうなの。私ボタン付けをとってもがんばったのよ。素肌を隠すためのボタンは貞節の象徴だと教えていただいたから、全部で58個つけたの」
教えてくれたのはもちろん母だ。
新妻の処女性を示すために初夜のナイトドレスにはたくさんのボタンをつけるものだと教えてもらったので、ミアは隙間がないくらいにびっしりとボタンを縫いつけたのだ。
非常に骨の折れる作業だったし、さすがの母も驚いていたが、出来上がった時の達成感は大きかった。着用する時はとても大変だったが。
得意げに説明すると、ふいに彼が黙り込んだ。
新婚衣装の慣例とはいえ、ボタンが多いのはあまり好きではなかっただろうか。
不安を抱えながら彼を見ると、そっと上半身を抱き起こされた。そして。
「仕方ないな、ではこのまま脱がすか」
「きゃあっ!」
なんと小さな子が親の助けを借りて衣服を脱ぐように、ミアのナイトドレスが頭からすぽっと抜かれたのだ。滑らかな絹の生地は白い肌を滑り、アルベルトによって寝台の下へと投げ捨てられる。
ボタンをひとつずつ外されていくうちに心の準備をしようと思っていたミアは大慌てだ。
「ひ、ひどいわっ」
「何がひどいものか。こんな時間稼ぎで夫を遠ざける君の方がひどいだろう?」
驚いて体を隠す間もなく下着の紐も引っ張られる。
一瞬のうちに裸に剥かれてしまったミアは、何の抵抗も出来ないままあっさりと組み敷かれた。
「ほら、もう観念して。初めてだから優しくしてやりたいのに、これ以上拒絶されると我慢がきかなくなる」
「……ぁ、んっ」
剣呑なことを言ったアルベルトの顔がミアの胸に埋まった。
1年前よりも少しだけ増した膨らみはそれをふんわりと受け止め、大きな手によって好き勝手に形を変えられる。薄紅色に尖った先端はぬるつく粘膜に包まれて、その熱さに火傷してしまいそうだ。
いやらしい水音を立てて吸われるのは、耳からも侵されているようだと思った。
抑えようと思うのに、恥ずかしい声があふれ出して止まらない。
絶対に叶わない抵抗を試みた足先が真っ白なシーツを滑り、ミアはつま先をきゅうと丸める。何度も嬲られた胸はじんじんと熱を持っていて、そこだけ自分の体ではないようだった。
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