愛されてアブノーマル(旧題:ヒーローも犯罪者)

柳月ほたる

文字の大きさ
27 / 29
新婚編・ヒーローも窃盗中

6 デートの最後はランジェリーショップ

しおりを挟む
「……やっぱりここにも来るんですね……」
「別にいいだろ、これも服の一部なんだから」
 デートの最後に恭介に連れて来られたのは、案の定というか当然の帰結というか、誰しもが想像出来る通り、複合施設内のランジェリーショップだった。
 奈津も好んで使っているブランドなのだが、こうも当然のように連れて来られると呆れてしまう。

「恭介さん、新婚旅行でも散々買ってたじゃないですか」
 トランジットで立ち寄ったシカゴの空港で、有名下着メーカーのショップに興奮した恭介が色々と買い漁っていたのはつい1週間前の出来事だ。
 普段は、『新しい下着を買うのは月に2セットまで!』と奈津が言い渡しているのだが、シカゴでは恭介が『ここはアメリカだから、日本の国内法は適用されない』などと言い張り、結局大量に購入していた。
 下着に関してはなにがなんでも自分を貫く男である。
 奈津は1人しかいないのだからそんなに買っても着用出来ないというのに、一体何に使うつもりなんだろう。いつか、下着は1日3回着替えろ、なんて言われそうで怖い。

「シカゴで買ったのは外国産だ。ここにあるのは国産。全然違うだろ?」
「どこで売ってても、だいたい下着はメイドインチャイナです」
「…………」
 至極真っ当な奈津の反論を無視し、恭介はまた下着の物色に戻ってしまった。都合の悪いことは聞かない主義らしい。
 だが今日は1日中、奈津の趣味全開の可愛らしいカフェや映画に付き合ってもらったり、買い物にも付き合ってもらった。奈津は完全防盗仕様の高価な金庫を買ったせいで金欠気味だからと、全て恭介の財布から出ている。
 だから最後に少しくらい、恭介が行きたいところにも行こうと決意したのだが。

「ほら、一緒に買い物をしているカップルもたくさんいるぞ」
「まぁそうなんですけど……」
 だがよく見て欲しい。
 確かに男女の組み合わせで選んでいる客もいるが、どの男性もなんとなく居心地が悪そうで、少し恥ずかしそうにソワソワしているではないか。
 堂々と商品を物色し、むしろパートナーよりも生き生きとしているのは恭介くらいのものである。
「奈津、腰でリボンを結ぶタイプと、ゴムになっているタイプ、どっちがいい?」
 女性の奈津ですら人前で手に取るのは恥ずかしい紐パン両手に持ち、真剣な表情で恭介が聞く。
「そうですね、敢えて言うならどっちもいやです」
「じゃあ両方買うか」
「ちょっ、私の答え聞いてましたか?!」
 紐パンはどうにも落ち着かないから好きではないのだ。
 奈津は必死の形相で恭介の紐パンを取り上げ、丁寧に売り場に戻す。

 ちなみに恐ろしいことに、恭介はたまに単独でこの店に寄り、奈津の下着を勝手に買って帰ることもある。
 以前、1人で女性下着の店に入って購入するなど恥ずかしくないのかと聞いたところ、『合法的に売っている商品を買うのに、一体どこに恥ずかしい要素があるんだ?』と眉を顰めて返事をされた。
 この時奈津は、恭介とは一生分かり合えないと悟ることになった。

 結局今日は、淡い水色のナチュラルなブラとショーツのセットを買うことになった。
 恭介は今月分の制限である2セットとも買いたいと主張していたが、『今月もまだあと半分残っているんだから、これから欲しいものが出てきたらどうするんですか?!』と説得して1セットに抑えてもらったのだ。

 2人でレジに並ぶと、すぐに順番がやってくる。
 綺麗なネイルを施したお姉さんが商品を受け取って、恭介の顔を見た瞬間にハッとした。
「いつもお世話になっております」
 丁寧に礼をしたお姉さんに、恭介は笑顔で会釈している。どうやらいつの間にか顔見知りになっていたらしい。
「真山様、春の新作はもうご覧になっていただけましたか?」
「ええ、ダイレクトメールを受け取ったから今日来たんですよ。繊細な色使いと柔らかいシルエットが春らしくていいですね」
「お褒めに預かって光栄です」
 レジを通して包装する間、彼らはにこやかに会話していた。どう見ても常連扱いだ。
「恭介さん、名前も覚えられてるし……っ」
 購入金額も多いが、なにかと目立つ容姿の恭介が1人で下着を買って行くから覚えられてしまったのだろう。

 恥ずかしくてもうこの店には来られない……!
 奈津はプルプルと震えながら、今度からは違う店舗に行くことを誓った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

ハイスペックでヤバい同期

衣更月
恋愛
イケメン御曹司が子会社に入社してきた。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。