60 / 64
四通目 おまけの話
7、木下楓の秘密
しおりを挟む
やぁ、皆の楓お兄さんだよ!
え? お呼びでない? まぁ、そんなこと言わずに、ちょっと俺の独り言に付き合ってよ。
俺の双子の弟が、ある日突然子供を拾ったんだ。
拾った、というより、不法侵入して倒れてるところを助けたんだがね。
びっくりしたよ。突然「声が聞こえる」とか言って他人ん家にずかずか入っていって、ガラスを割り出すんだからな。とうとう気が触れたかと思ったよ。
子供を抱きしめたまま放さないものだから、一緒に病院に行ってもらって。警察なんかへの事情説明は俺。
ついでに今回は人命救助ってことで不法侵入に器物破損も見逃してもらったけど。要が何かやらかして怒られるのはいつも俺。不公平じゃねぇ?
で、警察から聞いたのはあの子がとても酷い環境にいたってこと。
幽霊が視えるとか言って奇行が目立つって両親やご近所さんからかなり気味悪がられていたらしい。
それを聞いて俺はブチ切れた。何だそれ? 親の気を引きたいにしろ本当に視えてるにしろ、一番不安なのはその子本人だろうが!
まぁ、それはともかく。
香月の両親は児童虐待で逮捕されたんだ。で、困ったのが香月の保護をどうするか。
市の児童保護施設に送るってなったんだけど、要がそれを拒否してね。香月の入院治療費全額負担するから引き取りたいって言い出して。
「お前なあ。犬猫拾うのとはわけが違うんだぞ」
「わかってる。でも、俺にはあの子が必要なんだ」
一応説得なんてしたけれど、要は頑として譲らなかった。
同じく子供を引き取るなら、保護施設にいる普通の子供だって良いだろうに。
「俺が引き取ろうか?」
香月が本当に幽霊が視えるって言うなら。それで苦しまされてるってんなら。楓より俺の方が香月を理解しフォローしてやれるかもしれない。
そう思っての発言だったのだが。要は大丈夫の一点張りで。とうとう知り合いの弁護士やらなにやらありとあらゆる人脈を使って引き取ってしまった。
と言っても親権はまだ親元にあるから、単に保護しただけなんだが。
要より俺の方が香月を理解してやれるんじゃないかって思った理由。それは、俺の秘密にある。
俺は二年前、神隠しに遭った。
いなくなっていたのは半年くらいだったが、その間俺はこことは別の世界にいた。それも、マスコットのようなきのこの姿になって。
何言ってんのと言いたい気持ちはわかる。俺だってこれが自分の事じゃなきゃ頭おかしいんじゃないかって言ってるさ。
最初は夢だと思った。何て変な夢だって。
でも、起きたら夢の中で出会った女性がベッドにいて。恐ろしいほど月日が経ってて。仕事もクビになってて。
どちらかというと帰ってきてからの方が大変だったな。失踪していた期間についての事情聴取。
この世界の人間じゃないルナの戸籍を用意して。仕事も無くなって色々逃げるように実家に帰ってきたんだっけ。その時は要からけっこう良いパンチを貰ったもんだ。
身近に異世界人、というか正真正銘の女神様がいる俺だから、たいていの事は受け入れられる。
人には視えない物が視える香月を理解してやれるのと思ったのはそういう理由だ。
そんな香月が「配達人」なんてものを始めた。何でも、彷徨う幽霊達を救いたいんだと。
あんな目に遭ったって言うのに、優しい良い子なんだよな。そんなん聞いたら協力するより他無いじゃんか。
最初のうちは失敗したり危なっかしいこともあったから、陰ながらルナの能力で相手の事を調べて貰ったりする今の体制が出来上がったんだ。
そうこうするうちに香月も大きく成長して、今となっては要の事を「お父さん」って呼んでて、心から笑えるようになってる。
引き取った当時は遠慮してんだか警戒してんだか、わがままどころか碌に喋りもしなかったからな。
これは要が心から香月に向き合ってきた結果だと俺は思う。同時に、香月によって要もようやく本来の姿に戻った。
結果良ければすべて良しってな。
色々反対したりもしたが、今は支えていこうって思ってる。あいつらがこの先何を選択してどう行動しようと、それが法に触れることじゃなければ見守るよ。
人に言えないようなことは全部俺とルナで被ってやる。だから、思いっきりやったらいい。
う~ん、ガラにもなく青くせぇ話を語っちまったな。忘れてくれ。
え? お呼びでない? まぁ、そんなこと言わずに、ちょっと俺の独り言に付き合ってよ。
俺の双子の弟が、ある日突然子供を拾ったんだ。
拾った、というより、不法侵入して倒れてるところを助けたんだがね。
びっくりしたよ。突然「声が聞こえる」とか言って他人ん家にずかずか入っていって、ガラスを割り出すんだからな。とうとう気が触れたかと思ったよ。
子供を抱きしめたまま放さないものだから、一緒に病院に行ってもらって。警察なんかへの事情説明は俺。
ついでに今回は人命救助ってことで不法侵入に器物破損も見逃してもらったけど。要が何かやらかして怒られるのはいつも俺。不公平じゃねぇ?
で、警察から聞いたのはあの子がとても酷い環境にいたってこと。
幽霊が視えるとか言って奇行が目立つって両親やご近所さんからかなり気味悪がられていたらしい。
それを聞いて俺はブチ切れた。何だそれ? 親の気を引きたいにしろ本当に視えてるにしろ、一番不安なのはその子本人だろうが!
まぁ、それはともかく。
香月の両親は児童虐待で逮捕されたんだ。で、困ったのが香月の保護をどうするか。
市の児童保護施設に送るってなったんだけど、要がそれを拒否してね。香月の入院治療費全額負担するから引き取りたいって言い出して。
「お前なあ。犬猫拾うのとはわけが違うんだぞ」
「わかってる。でも、俺にはあの子が必要なんだ」
一応説得なんてしたけれど、要は頑として譲らなかった。
同じく子供を引き取るなら、保護施設にいる普通の子供だって良いだろうに。
「俺が引き取ろうか?」
香月が本当に幽霊が視えるって言うなら。それで苦しまされてるってんなら。楓より俺の方が香月を理解しフォローしてやれるかもしれない。
そう思っての発言だったのだが。要は大丈夫の一点張りで。とうとう知り合いの弁護士やらなにやらありとあらゆる人脈を使って引き取ってしまった。
と言っても親権はまだ親元にあるから、単に保護しただけなんだが。
要より俺の方が香月を理解してやれるんじゃないかって思った理由。それは、俺の秘密にある。
俺は二年前、神隠しに遭った。
いなくなっていたのは半年くらいだったが、その間俺はこことは別の世界にいた。それも、マスコットのようなきのこの姿になって。
何言ってんのと言いたい気持ちはわかる。俺だってこれが自分の事じゃなきゃ頭おかしいんじゃないかって言ってるさ。
最初は夢だと思った。何て変な夢だって。
でも、起きたら夢の中で出会った女性がベッドにいて。恐ろしいほど月日が経ってて。仕事もクビになってて。
どちらかというと帰ってきてからの方が大変だったな。失踪していた期間についての事情聴取。
この世界の人間じゃないルナの戸籍を用意して。仕事も無くなって色々逃げるように実家に帰ってきたんだっけ。その時は要からけっこう良いパンチを貰ったもんだ。
身近に異世界人、というか正真正銘の女神様がいる俺だから、たいていの事は受け入れられる。
人には視えない物が視える香月を理解してやれるのと思ったのはそういう理由だ。
そんな香月が「配達人」なんてものを始めた。何でも、彷徨う幽霊達を救いたいんだと。
あんな目に遭ったって言うのに、優しい良い子なんだよな。そんなん聞いたら協力するより他無いじゃんか。
最初のうちは失敗したり危なっかしいこともあったから、陰ながらルナの能力で相手の事を調べて貰ったりする今の体制が出来上がったんだ。
そうこうするうちに香月も大きく成長して、今となっては要の事を「お父さん」って呼んでて、心から笑えるようになってる。
引き取った当時は遠慮してんだか警戒してんだか、わがままどころか碌に喋りもしなかったからな。
これは要が心から香月に向き合ってきた結果だと俺は思う。同時に、香月によって要もようやく本来の姿に戻った。
結果良ければすべて良しってな。
色々反対したりもしたが、今は支えていこうって思ってる。あいつらがこの先何を選択してどう行動しようと、それが法に触れることじゃなければ見守るよ。
人に言えないようなことは全部俺とルナで被ってやる。だから、思いっきりやったらいい。
う~ん、ガラにもなく青くせぇ話を語っちまったな。忘れてくれ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる