中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

文字の大きさ
51 / 228
第四章 俺様、西方に行く

3、この世界の女神って奴は絶対性格が悪いに違いない。

しおりを挟む
 翌朝。天気は雨天。これからの道幸を不安にさせる黒雲が空一面を覆っていた。
 エミーリオの話だと、こういう天気は暗黒破壊神の日と言われ人々は固く戸締りをして息をひそめて過ごすのだと。

「恵みの雨なのにな」
「本当に、こんな天気の中出立されるのですか?」

 騎士団長ともあろう者が、こんな天気の中で歩くなんて暗黒破壊神に食われに行くようなものだと反対する。

『エミーリオ、私は勝手にしろと言ったぞ。暗黒破壊神と戦おうという者が恐れてどうする?』

 来るなら来い! むしろ好都合だ!
 ちょっと当たってダメそうなら撤退すればいい。どうせ今のレベルじゃ敵わないだろうし。

『奴が弱っている今がチャンスなのだ。一日でも無駄にせず研鑽せねば、本来の力とやらを取り戻した奴に敵う日など来ぬぞ』

 俺らが籠っていようと活動していようと、偽物は黒モンスターを操ってどんどん強化されていくのだろうからな。
 日を追う度にどちらも強くなるっていうなら、地力の強い方が有利。サボっていた方が敗れるのだ。


「さすが、聖竜様! 自分が間違っていました! 時間を無駄にせず鍛錬、ですね!」

 キラキラした顔で荷物をまとめるエミーリオ。
 辞めてきたって言ってたけど、俺を追いかけてきたスピードからしてそんな時間はなかったはずだ。現に、荷物すらほとんど持っていない。あの日の恰好、荷物のままだ。
 馬は馬車を繋いでいた栗毛の馬を拝借してきたのだとか。

 聞けば、「ウェルナー殿に辞めると言って後を任せてきました!」と。ダメだろ、それ。
 で、そんな着の身着のままの人間がどうやって昨夜スープとか作れたのかって言うと。
 人っ子一人いないのを良いことに拝借したわけだ。これぞまさに火事場泥棒。

 で、鍋なんかは持って行くみたいで、これまた倒壊した家から失敬した布を袋に仕立て直して調味料とか色々詰めている。他にも寝具に使わせてもらった毛布っぽい厚手の布とか。
 ロープで繋ぐと、馬の両側にぶら下がるように括りつけている。正直無断で持ち出すのってどうなのって思ったけど、背に腹は代えられない。

「持ち主が名乗り出たら返しますよ」

 とは言ってたけど。
 エミーリオは昨日倒した狼の群れを昨夜見張り番をしている間に残らず解体していたらしく、今朝の食事は肉テンコ盛りだった。それでも食い切らずに残った肉を雨に濡れないようこれまた拝借した布で包んでいる。



「さぁ、参りましょう!」

 ニコニコしながら雨に濡れるイケメン。
 雨で視界が悪いので馬の背に乗せてもらい街道を駆け抜ける。迷信を信じる人が多いからか、雨天のせいか。昨日と違い通行人は一人もいない。

 代わりに少しモンスターが多い気がする。昨日は街道までは現れなかったのに、今は兎のような鼠のようなものが街道をチョロチョロしている。
 馬の速さについてこれる様子はないので無視して進む。




 平和だなぁ、なんてぼんやりし始めた頃、ぼろい服を着た少女が急に街道沿いの茂みから飛び出してきた。
 何だかまたトラブルの予感。この世界の女神って奴は絶対性格が悪いに違いない。
 ちょっとくらい平和に浸らせてくれたっていいだろ?!


「助けて、助けてください!」
「何があった?」

 エミーリオが馬から降り少女に近づく。
 後を追うようにボロ服で身を包んだ男達がぞろぞろと出てきた。
 少女がエミーリオの後ろに隠れる。

「持ち物全部置いて行け! その馬も貰おうか!」

 叫ぶ男の手には鎌。
 おいおい、相手を選べよ。ぱっと見優男一人でいけると思ったか。
 こんなんでも騎士団長を務めた男だぞ。


 エミーリオ、やっておしまい。と思った瞬間エミーリオが片膝をついて倒れた。
 少女の手には何やら毒々しい紫色の液体滴る小ぶりのナイフが。

「この俺様の下僕に危害を加えたこと、後悔せよ。天罰!」

 俺は翼に光を集め、武装した男達に放つ。
 男達は避ける間も与えられず上半身を喪い、そのまま血を噴き出しながら倒れる。


『――≪リージェ≫が経験値16366を入手しました――』
『――スキル≪天罰≫がLv.2になりました――』

 何だろう。教皇の時も思ったけど人間相手だとやたら経験値入る。薄汚れたおっさん6人殺しただけで万越えとか。
 偽暗黒破壊神が人間の街襲いまくってるのわかるわ。手っ取り早いもん。
 さて、あと一人か。

「ひっ」

 少女が俺を見て尻餅をついた。
 後ずさりしているその足元に倒れているエミーリオが目に入る。そうだ。女に構っている場合じゃなかった。

「ちっちゃく天罰!」

 取り敢えず、毒塗れのナイフは危ないから没収。蒸発しちゃえば使えないでしょ。勢いで肩を抉っちゃったみたいだけど、自業自得ってことで。

「反転せよ」

 毒に負けるなエミーリオ。そんなもん体の中から追い出しちまえ。

『――リージェのスキル≪反転せよ≫がLv.3になりました――』

 よし。もう一回。
 レベルアップしたら毒消しの効果も出たのか、エミーリオの顔色が一気に良くなった。
 もともと軍人で体力あるから、あとは大丈夫だろ。


『さて、娘。いったいどういう了見だ?』

 俺は怯えて命乞いする少女に向き直ると、苛立ちを隠さず話しかけた。


しおりを挟む
感想 289

あなたにおすすめの小説

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...