中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

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第六章 俺様、東方に行く

7、俺でさえ我慢しているのに!

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 正直雑貨屋も食堂も外観はほぼ他の住宅と見分けがつかなかった。旗が出ているか出ていないかの違いくらいだろう。
 ログハウスのように竹を組み合わせ編みこんだような作りに、ここは比較的温暖な地域かと推測する。窓はなく、竹を編み込んだ板のようなものが持ち上がっている。夜はつっかえ棒を外して閉めるのだろう。

 道中の簡単な話し合いの結果、バルトヴィーノと要さんが雑貨屋へ、エミーリオとドナートが食堂へと入っていった。
 ベルナルド先生は俺達と一緒に馬車の中。アルベルトは御者台に、チェーザーレが後続の馬車の御者台にいていつでも動かせるようにしている。

「おいっ! そこの御者! すぐにこの邪魔な馬車をどかせ!」

 4人が店に入ってしばらくして、ふとそんな怒鳴り声が聞こえてきた。
 見つからないようそっと覗くと、対面に馬の上でふんぞり返っている小太りのおっさんが。服装こそ先ほどの門衛と同じようなデザインだが、刺繍が金色で意匠も豪華だ。
 その後ろには豪華な彫刻を施された馬車が止まる気配もなくこちらに向かってきている。

「はい、すぐに」

 端に避けていて十分通れるのだから避ける必要もないのだが、先に門衛の話を聞いていて関わらないのが一番だと言っていたからかアルベルトもチェーザーレも店の出入り口を避けるように馬車を進め、建物の壁ギリギリに馬車を停める。

「フンッ、ウスノロが!」

 おっさんはふんぞり返ると偉そうに馬を進める。
 ルシアちゃんが小さく「まぁ、何でしょうあの態度」と憤慨した様子で言ったが、おっさんには聞こえなかったようだ。ふぅ。

『ルシアよ、今は静かに。あれが門衛の言っていた面倒な奴、その従者であろう。関わるべきではない。良いな?』

 ルシアちゃんにだけ念話を送ると、慌てたように口を押えてコクコクと頷いた。可愛い。
 俺達は念を入れて馬車の奥へ行き身を伏せる。ベルナルド先生がローブをかけ直してくれたからぱっと見は荷物に見えるだろう。

「うわっ」

 ドサッ、という音と共に男の短い悲鳴が聞こえた。馬に悪態も吐いている。
 ベルナルド先生が笑いをこらえているのが見えた。
 そのまま息を潜めていると外のやり取りが明瞭に聞こえる。どうやら馬車が停まりおっさんが乗っていた男を店に案内したようだ。

「お待たせ」

 まるで犬小屋のようだ、とおっさんとは別の男の声が聞こえた。嫌な感じ! 馬に蹴られて骨折してしまえ! 
 どっちの店に入っても鉢合わせだなぁ。絡まれなきゃいいけど、と思っていたところに要さん達が戻ってくる。続けてエミーリオ達も。

「すぐ出よう」

 馬車が移動していたことから事情を察したらしく、そう言って乗り込んでくる。最後にドナートが飛び乗り動き出した所で、何かをひっくり返すような音と罵声が聞こえた。

「ええい、良いから出さんか! 篭1杯と言ったらその通りに出すのが貴様らの役目だろう!」

 うわー。なんつう暴論。
 漏れ聞こえてくる罵声に顔を顰めながらその場を後にする俺達の馬車を、先ほどのおっさんが馬で追いかけてきた。
 要さんとドナート、バルトヴィーノが俺とルシアちゃんとベルナルド先生を隠すように場所を移動する。

「そこの馬車、止まれ!」
「……一体何ですかね? 見たところ警吏には見えませんが」

 わぁお、アルベルトが苛ついてるー。そうだよね。一方的に怒鳴り散らされたらむかつくよねー。ねぇあいつ殺っちゃって良い? 良いよね?

(ダメですよ……大人しくしていてください……)

 俺の思考を読んだかのようにベルナルド先生が小声で諫める。ちぇっ。

「良いから黙ってさっきの店で買ったものを寄越せ」
「何故です?」
「何故だも何もない! 貴様らが買ったせいでクレイバー様のお求めの品が足りんのだ! 返せ!」
「クレイバー? そりゃどこの追剥の頭領です?」

 アルベルトの声が低くなる。ちょっと、アルベルトさぁああああん?! 関わらないって言った本人が何煽ってくれちゃってんの?! 俺でさえ我慢しているのに!
 が、それにも動じずにこちらが先ほど店で購入したものを差し出せと要求する声。
 追剥というアルベルトの言葉に笑いをこらえているのか、ドナートとバルトヴィーノの肩が震えている。

「なっ! き、貴様! 下郎の分際で失礼にもほどがある! ここタイラーツの領主が次男クレイバー様を追剥だなどと! そこへ直れ、叩き斬ってくれよう!」
「やっていることは追剥でしょうよ。こちらは買占めにならないよう最低限の分量でしか求めていない。それなのに言いがかりをつけて取り上げようとする。それが貴族のやる事か」
「言うに事欠いて貴様~!!」

 何だかとっても不穏な空気。
 ハラハラしているとシュッ、と金属の擦れる音がした。

「抜いたな、貴様。武器を向けるということは当然、殺されても良いってことだよな」

 アルベルトの存在感がグッ、と増す。
 金属のぶつかる音。それから、ドサッと重たいものが落ちるような音。馬のいななき。

『殺したのか?』
「ふん、日に何度も落馬するような奴に本気出すかよ。ちょっと鬱陶しい髪を短く切ってやっただけさ」
「また落ちたのかよ」

 今度こそ我慢できないとゲラゲラ笑い始める一同。どうやら最初に馬車を移動させるように言ってきた時も落馬したらしい。おまけに乗っていた馬に踏まれたのだとか。それで笑いをこらえてたのか。

「何の騒ぎだ?」

 思わず口元が緩んだ時、気怠げな声が後方から聞こえてきた。
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