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第六章 俺様、東方に行く
20、気が付いたか
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「落ち着いて。首輪の効果で主を害した相手に報復しようとしているんだ。支配者が死んだ今、首輪は簡単に外せる」
動揺する俺にリザイアがほら、と襲い掛かってきた女性を抑えると首輪を外して見せる。
『おお……ルシア、今外してやるからな』
俺も、とルシアちゃんに向かうが、猫の威嚇のような鼻息で殴りかかってくるのでなかなか近づけない。
リザイアが手際よくちぎっては投げ状態で次々と他の人達の首輪を外していくのを横目に見ながら俺は何度もルシアちゃんに殴られ投げられしながら、何とか爪をその首輪に引っ掛けることに成功した。そのまま首を傷つけないよう加減しながら爪を引き首輪だけを切り裂く。
「ふぅ。うまく行ったか。我ながら力加減が上達したもんだ」
力が抜けたように倒れ込むルシアちゃんの下敷きになりながら安堵の息を吐く。
あ、そうだ。ついでに回復もしてやらなきゃ。傷だらけだもんな。可哀想に。
「あら……? わたくしは、いったい……?」
『気が付いたか、ルシア。取り敢えず、俺様の上からどいてくれないか?』
「キャァッ! リージェ様っ?! も、申し訳ありません!」
回復魔法をかけて暫くすると、ルシアちゃんの寝惚けたような可愛らしい声が聞こえた。
キャァだって。可愛いなーもう。慌てて身体を起こすその反応からちゃんと正気に戻っているのがわかって安心した。
俺がルシアちゃんに潰されている間に、リザイアが他の人達の首輪を全て外してくれていたようだった。そのやり方は荒っぽいものの、俺の爪よりかはよほど安全だろう。
俺は未だに状況を理解していないルシアちゃんと協力して回復魔法をかけて回る。
「それで、リージェ様。あの……殴ってしまい申し訳ありませんでした」
最後にルシアちゃんは俺に向かって回復魔法をかけながら涙交じりに何度も謝ってきた。どうやら首輪をかけられていた間の記憶もあるらしい。
初めは夢かと思ったらしいが、自分の恰好や周りの光景、自分の手に残る生々しい感触を思い出してしまったのだと。
『気にするな。ルシアは何も悪くない』
「リージェ様……」
ギュッと抱きしめてしくしく泣くルシアちゃんの気が済むのを待つ。暗黒破壊神たるもの寛容さも大事なのだ。
「お父様は……死んだのですね」
「ええ。自分に責があります。領主様の凶行に気付けず、お諫めすること叶いませんでした」
豚野郎の死骸を呆然と見下ろしながら呟くマリアに、跪いて罰を求めるリザイア。けれど、マリアはリザイアを罰することはなく微笑んで見せた。それは今にも泣きだしそうな顔にも見える。
「貴方のせいじゃないわ。それを言うなら、気が付いていながら止めることのできなかった私の方こそ……」
おやおやおや? この二人、何だかいい雰囲気じゃね?
でも二人して自分が自分がとかばい合っているそのやり取りには少しイラっとする。
『そう感じるなら、その分苦しめられてきた人々を助けて行けば良い。マリア、リザイアも。そのための答えはもう貴様らの中にあるだろう?』
これからどうするのだ、と聞くとマリアもリザイアも決意に満ちた表情に変わった。
「リザイア、私は領主になります。そのためにまず、兄ではなく私がタイラーツ家の当主として認められる必要があります。ついてきてくれますね?」
「ハッ!」
まずは捕まる前に隠しておいた不正の証拠となる書類を取りにあの村へ戻るのだと。あの中には、父親にくっついて私腹を肥やしいていた兄の名もあり、それを国王に提出すれば正式にクレイバーは失墜。他に親族もいないため当主の座はマリアのものになるそうだ。
見通しが甘いと言えなくもないがこの世界の貴族世襲の仕組みを俺は知らないし関わる気もない。取り敢えずこの死体を厚く葬り、領主が連れてきた人達を家に帰す段取りもつけないといけないそうでマリアとはここでお別れになった。
と、これからの事を話している時にバンッ、と勢いよく扉が開き、騎乗したままのエミーリオが飛び込んできた。
「リージェ様、ご無事で……す……?」
『遅い』
俺やルシアちゃんを助けるつもり満々で強引にここまで駆け抜けてきたのは、エヴァとエミーリオのボロボロの姿でわかる。が、この状況では何とも間抜けでしかない。
それを察したようでそんなぁ、と崩れるように脱力していた。
『まぁ、ちょうど良い足ができたな』
荒い息のエヴァに回復魔法をかけ、その背に乗るエミーリオにルシアちゃんを押し預ける。
一瞬顔を顰めたルシアちゃんがエミーリオに清浄の魔法をかけてたのは見なかったことにしてタイラーツ家を出発した。もう少し休んでいけば、というマリアの声を背に受けながら。
エミーリオやエヴァ、ルシアちゃんには休息が必要かもしれないが、今は一刻も早く心配して待っているだろうアルベルト達に合流したかった。
……決して、俺が壊した屋敷の壁や家具、殺した人達の片付けや弁償をしたくなかったからではないよ?
『しかし、結局世直ししてしまったな』
間接的にではあったが。マリアなら公正に領民のための統治ができるだろう。
これから大変だろうが、リザイアが傍にいるのだ。数年後にはリザイア・タイラーツなんて名乗っていたりして。そんな空想をしながら王都へ続く道をこちらに向かっているだろうアルベルト達のもとへ急ぐのだった。
動揺する俺にリザイアがほら、と襲い掛かってきた女性を抑えると首輪を外して見せる。
『おお……ルシア、今外してやるからな』
俺も、とルシアちゃんに向かうが、猫の威嚇のような鼻息で殴りかかってくるのでなかなか近づけない。
リザイアが手際よくちぎっては投げ状態で次々と他の人達の首輪を外していくのを横目に見ながら俺は何度もルシアちゃんに殴られ投げられしながら、何とか爪をその首輪に引っ掛けることに成功した。そのまま首を傷つけないよう加減しながら爪を引き首輪だけを切り裂く。
「ふぅ。うまく行ったか。我ながら力加減が上達したもんだ」
力が抜けたように倒れ込むルシアちゃんの下敷きになりながら安堵の息を吐く。
あ、そうだ。ついでに回復もしてやらなきゃ。傷だらけだもんな。可哀想に。
「あら……? わたくしは、いったい……?」
『気が付いたか、ルシア。取り敢えず、俺様の上からどいてくれないか?』
「キャァッ! リージェ様っ?! も、申し訳ありません!」
回復魔法をかけて暫くすると、ルシアちゃんの寝惚けたような可愛らしい声が聞こえた。
キャァだって。可愛いなーもう。慌てて身体を起こすその反応からちゃんと正気に戻っているのがわかって安心した。
俺がルシアちゃんに潰されている間に、リザイアが他の人達の首輪を全て外してくれていたようだった。そのやり方は荒っぽいものの、俺の爪よりかはよほど安全だろう。
俺は未だに状況を理解していないルシアちゃんと協力して回復魔法をかけて回る。
「それで、リージェ様。あの……殴ってしまい申し訳ありませんでした」
最後にルシアちゃんは俺に向かって回復魔法をかけながら涙交じりに何度も謝ってきた。どうやら首輪をかけられていた間の記憶もあるらしい。
初めは夢かと思ったらしいが、自分の恰好や周りの光景、自分の手に残る生々しい感触を思い出してしまったのだと。
『気にするな。ルシアは何も悪くない』
「リージェ様……」
ギュッと抱きしめてしくしく泣くルシアちゃんの気が済むのを待つ。暗黒破壊神たるもの寛容さも大事なのだ。
「お父様は……死んだのですね」
「ええ。自分に責があります。領主様の凶行に気付けず、お諫めすること叶いませんでした」
豚野郎の死骸を呆然と見下ろしながら呟くマリアに、跪いて罰を求めるリザイア。けれど、マリアはリザイアを罰することはなく微笑んで見せた。それは今にも泣きだしそうな顔にも見える。
「貴方のせいじゃないわ。それを言うなら、気が付いていながら止めることのできなかった私の方こそ……」
おやおやおや? この二人、何だかいい雰囲気じゃね?
でも二人して自分が自分がとかばい合っているそのやり取りには少しイラっとする。
『そう感じるなら、その分苦しめられてきた人々を助けて行けば良い。マリア、リザイアも。そのための答えはもう貴様らの中にあるだろう?』
これからどうするのだ、と聞くとマリアもリザイアも決意に満ちた表情に変わった。
「リザイア、私は領主になります。そのためにまず、兄ではなく私がタイラーツ家の当主として認められる必要があります。ついてきてくれますね?」
「ハッ!」
まずは捕まる前に隠しておいた不正の証拠となる書類を取りにあの村へ戻るのだと。あの中には、父親にくっついて私腹を肥やしいていた兄の名もあり、それを国王に提出すれば正式にクレイバーは失墜。他に親族もいないため当主の座はマリアのものになるそうだ。
見通しが甘いと言えなくもないがこの世界の貴族世襲の仕組みを俺は知らないし関わる気もない。取り敢えずこの死体を厚く葬り、領主が連れてきた人達を家に帰す段取りもつけないといけないそうでマリアとはここでお別れになった。
と、これからの事を話している時にバンッ、と勢いよく扉が開き、騎乗したままのエミーリオが飛び込んできた。
「リージェ様、ご無事で……す……?」
『遅い』
俺やルシアちゃんを助けるつもり満々で強引にここまで駆け抜けてきたのは、エヴァとエミーリオのボロボロの姿でわかる。が、この状況では何とも間抜けでしかない。
それを察したようでそんなぁ、と崩れるように脱力していた。
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エミーリオやエヴァ、ルシアちゃんには休息が必要かもしれないが、今は一刻も早く心配して待っているだろうアルベルト達に合流したかった。
……決して、俺が壊した屋敷の壁や家具、殺した人達の片付けや弁償をしたくなかったからではないよ?
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