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第七章 俺様、南方へ行く
9、骨までこんがり。
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ルシアちゃんが駆け寄ってきて俺に回復魔法をかけてくれる。
痛いのが消えて、体がぽかぽかしてくる。やっぱ魔法って凄いな。
さて、傷は消えても疲れは取れず、このままルシアちゃんに抱っこされていたいのだが、もう一仕事。
「お、やっぱりあったか」
熊の心臓辺りをざくざく切り裂いていたバルトヴィーノが俺を手招き、例の黒結晶を見せてきた。これまで見た中で一番小さい。
『ふむ、欠片がこれだけ小さいということは、暗黒破壊神の力の恩恵も少ないということか』
道理でルシアちゃんの結界を破れないわけだ。暗黒破壊神は何故か結界すり抜けやがるらしいからな。
……え? ちょっと待って、じゃああの熊のバカみたいに高いステータスは自前のってこと?
ぞっとした。“オルソ種の中でも最凶最悪、死の紫斑と呼ばれるモルテヴィオーラの変異種”とか鑑定で出てたな。しかも子連れ。そりゃ、俺以外の人間じゃ太刀打ちできねぇよ。
『さて、新手が来ないうちにここを発とう』
「そうだな。ベルナルドかエミーリオがいれば死骸を埋めて血の匂いを消していくんだが……」
『ならば、少し離れているが良い』
威力を抑えて無詠唱でブレスを浴びせる。骨までこんがり。地面もこんがり。ついでに森もこんがり……えっ?!
やばいやばい! 延焼した!
慌てて水魔法を使って消化する。ふう。覚えていてよかった水魔法。危うく火災を起こすところだったよ。
「お前今……」
『何かな?』
何か言おうとするバルトヴィーノを視線で黙らせ、馬車に乗り込む。
そこには、既にクドウとミドウが乗り込んでいた。泣きじゃくるミドウをクドウが抱き寄せて慰めている。
「ごめんなさい……私、足引っ張ってばかりで……何もできなくて……」
「気にするなよ。誰も大きな怪我してないんだしさ」
おやおやおやぁ? この二人もしかして……。そうかぁ、それで戦えないのに残ったのかぁ。良いねぇ、青春だねぇ。くそ、爆ぜろ。
「リージェ様怖いお顔……」
え、そんなことないよ? きゃるん、とかわい子ぶりっ子のお顔を作ってルシアちゃんにスリスリ頭をこすりつける。俺ドラゴンで良かった。前世のままだったら通報案件だよ。
『女、怖いと思うのは正しい。1号が貴様らを彼方に帰そうとしているのだ。こちらの殺伐とした生活に慣れなくていい』
「えっ……?」
「えっと、最初にアルベルト様達が申しました通り、私達はあなた方勇者様に無理をして欲しくありません。怖くて逃げるのは、生き延びるための正しい行為だとリージェ様も仰っています。誰も貴女を責めてはいませんから、どうかご自分を責めるのはおやめ下さい」
ガタガタと揺れる馬車の中、泣き続けるミドウをみんなで宥める。
無理をするな、とかやらなくていいとかは一転すると期待していないという風にも聞こえるかな、と思いつつ俺達は言葉を重ねる。
ようやく少し落ち着いてきたか?
『まだ理解していないようだから改めて言おう。貴様らに戦うことは求めていない。だがそれは戦力として期待していないのではなく、貴様らを生きて帰らせたいという1号の願いからだ。クドウとやら、貴様もだぞ? 自ら進んで命のやり取りをするな。その力は生き延びるためだけに使え』
「……はい、すみませんでした」
何だろうな、戦いには勝ったってのにめちゃくちゃ空気が重苦しい。
ふぅ、疲れてるのにいっぱい喋らせるなよ。
『そうは言ったが、皆を逃す時間を稼ぐために自ら残ったその気概は他の誰よりも勇者であったと思うぞ。今は休むが良い』
俺ももう寝る! と俺はルシアちゃんの膝の上で丸くなった。
それにしても……念話を使っている俺はともかく、ルシアちゃんもこいつらもよくこんな揺れる馬車の中で舌も噛まずに喋ってられるな。
そんなどうでもいいことを考えながら、疲れの溜まっていた俺はすぐに眠りに落ちたのだった。
「あ、リージェ様起きましたね。食事ですよ」
『むにゃ……ごあん?』
「ふふ、起きてくださーい」
寝惚けてたらルシアちゃんにほっぺたむにむにされた。
寝ている間に先行していたメンバーと無事合流できたらしい。日は中天にあり、目の前には熱々のスープが盛られた皿とパンが用意されていた。
一瞬スープに具が無い、と思ったのだが、固パンの間に醤油で煮込んだ角煮風の燻製肉が挟んであって、それをあっさりした出汁のスープに浸して食べたら激旨だった。
「美味しいですか?」
『うむ!』
天才か! とばくついていたら、嬉しそうにルシアちゃんが頬を染めた。
おお、ルシアちゃんも料理のレパートリーが増えたなぁ。良いお嫁さんになれるよ。
「ちょっと良いか?」
「はい、どうしました? アルベルト様」
俺が夢中でパンを頬張っていると、アルベルトが話しかけてきた。
「少し先を見てきたんだが、分かれ道になっているんだよ。恐らく、北に延びている方がセントゥロに向かう道で西に延びてるのがアスーに向かう道だと思うんだが……リージェ、高空から様子を見られないか?」
あまり気が進まないが、食べてるとこすまんと頭を下げられてしまっては仕方がない。
俺は上空へと飛び上がり、周囲を見渡した。するとどちらも小さな町が道の先にあるが、どちらがどっちの国に繋がっているかわからない。
ふむ、どっちに進むか……。
痛いのが消えて、体がぽかぽかしてくる。やっぱ魔法って凄いな。
さて、傷は消えても疲れは取れず、このままルシアちゃんに抱っこされていたいのだが、もう一仕事。
「お、やっぱりあったか」
熊の心臓辺りをざくざく切り裂いていたバルトヴィーノが俺を手招き、例の黒結晶を見せてきた。これまで見た中で一番小さい。
『ふむ、欠片がこれだけ小さいということは、暗黒破壊神の力の恩恵も少ないということか』
道理でルシアちゃんの結界を破れないわけだ。暗黒破壊神は何故か結界すり抜けやがるらしいからな。
……え? ちょっと待って、じゃああの熊のバカみたいに高いステータスは自前のってこと?
ぞっとした。“オルソ種の中でも最凶最悪、死の紫斑と呼ばれるモルテヴィオーラの変異種”とか鑑定で出てたな。しかも子連れ。そりゃ、俺以外の人間じゃ太刀打ちできねぇよ。
『さて、新手が来ないうちにここを発とう』
「そうだな。ベルナルドかエミーリオがいれば死骸を埋めて血の匂いを消していくんだが……」
『ならば、少し離れているが良い』
威力を抑えて無詠唱でブレスを浴びせる。骨までこんがり。地面もこんがり。ついでに森もこんがり……えっ?!
やばいやばい! 延焼した!
慌てて水魔法を使って消化する。ふう。覚えていてよかった水魔法。危うく火災を起こすところだったよ。
「お前今……」
『何かな?』
何か言おうとするバルトヴィーノを視線で黙らせ、馬車に乗り込む。
そこには、既にクドウとミドウが乗り込んでいた。泣きじゃくるミドウをクドウが抱き寄せて慰めている。
「ごめんなさい……私、足引っ張ってばかりで……何もできなくて……」
「気にするなよ。誰も大きな怪我してないんだしさ」
おやおやおやぁ? この二人もしかして……。そうかぁ、それで戦えないのに残ったのかぁ。良いねぇ、青春だねぇ。くそ、爆ぜろ。
「リージェ様怖いお顔……」
え、そんなことないよ? きゃるん、とかわい子ぶりっ子のお顔を作ってルシアちゃんにスリスリ頭をこすりつける。俺ドラゴンで良かった。前世のままだったら通報案件だよ。
『女、怖いと思うのは正しい。1号が貴様らを彼方に帰そうとしているのだ。こちらの殺伐とした生活に慣れなくていい』
「えっ……?」
「えっと、最初にアルベルト様達が申しました通り、私達はあなた方勇者様に無理をして欲しくありません。怖くて逃げるのは、生き延びるための正しい行為だとリージェ様も仰っています。誰も貴女を責めてはいませんから、どうかご自分を責めるのはおやめ下さい」
ガタガタと揺れる馬車の中、泣き続けるミドウをみんなで宥める。
無理をするな、とかやらなくていいとかは一転すると期待していないという風にも聞こえるかな、と思いつつ俺達は言葉を重ねる。
ようやく少し落ち着いてきたか?
『まだ理解していないようだから改めて言おう。貴様らに戦うことは求めていない。だがそれは戦力として期待していないのではなく、貴様らを生きて帰らせたいという1号の願いからだ。クドウとやら、貴様もだぞ? 自ら進んで命のやり取りをするな。その力は生き延びるためだけに使え』
「……はい、すみませんでした」
何だろうな、戦いには勝ったってのにめちゃくちゃ空気が重苦しい。
ふぅ、疲れてるのにいっぱい喋らせるなよ。
『そうは言ったが、皆を逃す時間を稼ぐために自ら残ったその気概は他の誰よりも勇者であったと思うぞ。今は休むが良い』
俺ももう寝る! と俺はルシアちゃんの膝の上で丸くなった。
それにしても……念話を使っている俺はともかく、ルシアちゃんもこいつらもよくこんな揺れる馬車の中で舌も噛まずに喋ってられるな。
そんなどうでもいいことを考えながら、疲れの溜まっていた俺はすぐに眠りに落ちたのだった。
「あ、リージェ様起きましたね。食事ですよ」
『むにゃ……ごあん?』
「ふふ、起きてくださーい」
寝惚けてたらルシアちゃんにほっぺたむにむにされた。
寝ている間に先行していたメンバーと無事合流できたらしい。日は中天にあり、目の前には熱々のスープが盛られた皿とパンが用意されていた。
一瞬スープに具が無い、と思ったのだが、固パンの間に醤油で煮込んだ角煮風の燻製肉が挟んであって、それをあっさりした出汁のスープに浸して食べたら激旨だった。
「美味しいですか?」
『うむ!』
天才か! とばくついていたら、嬉しそうにルシアちゃんが頬を染めた。
おお、ルシアちゃんも料理のレパートリーが増えたなぁ。良いお嫁さんになれるよ。
「ちょっと良いか?」
「はい、どうしました? アルベルト様」
俺が夢中でパンを頬張っていると、アルベルトが話しかけてきた。
「少し先を見てきたんだが、分かれ道になっているんだよ。恐らく、北に延びている方がセントゥロに向かう道で西に延びてるのがアスーに向かう道だと思うんだが……リージェ、高空から様子を見られないか?」
あまり気が進まないが、食べてるとこすまんと頭を下げられてしまっては仕方がない。
俺は上空へと飛び上がり、周囲を見渡した。するとどちらも小さな町が道の先にあるが、どちらがどっちの国に繋がっているかわからない。
ふむ、どっちに進むか……。
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