中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

文字の大きさ
138 / 228
第七章 俺様、南方へ行く

(閑話)俺にできること

しおりを挟む
「っと、今日はここまでか」

 閉館時間となり、俺は図書館を出た。
 調べていたのは大豆の発酵方法。自宅で味噌や醤油を作る本を多数見て、若干異なるその手法から最も失敗の少なそうなものを調べていた。
 あちらの世界では調味料がまだまだ高額だ。こちらから持って行くにも限度がある。あちらで作れる方法を考えなければ。

「要、今日も行くんだろ?」
「ああ、頼むよ楓」

 異世界と日本を行き来するようになって早一ヶ月。
 あちらの世界と日本との違いを理解した俺は、足りない知識を得るため夜勤の前や休日などちょっとした時間に図書館や本屋に通うようになった。
 リージェ達がオーリエンの首都に入ったため、人数が増えたり減ったりすると怪しまれると楓が言うので合流できずに日本で待機になっていたが、何度も楓に拝み倒しリージェ達と合流しない場所で、とその後もあちらに連れて行ってもらっている。
 その結果「聖者」という称号と、「祈祷」なんてスキルが増えていたけどどんな効果なんだろう?

 最初に行ったのは楓が作ったという村。
 楓の保護した小さな子供たちが協力し合いながら暮らすその村に、食料を提供したり村を広げる手伝いをしたり、料理を教えたり。
 香月を探すっていう本来の目的からは逸れているとはわかっているが、虐げられていたという子供達を放ってはおけなかった。

 そして、待ちに待った休日。
 俺が行けるのは、楓が行ったことのある地点。楓の分体のいる場所をポイントとして転移する。その分体も無数にいるから、ある程度は行き先が選べるんだ。

「で、今日はどこに連れて行ってくれるんだ?」
「そうだな……」

 俺はいつもの如く大きめのリュックに大量の食糧や調味料を詰め込みながら、行先の候補を楓に尋ねると、少し考えた感じで楓が驚くべき場所を言ってきた。

「セントゥロにしないか? 国王の下で働いているんだが、会いたいと国王も言っている」
「へ? や、やだよ。何でそんなことになってんだよ」

 あまりにも住む世界の違いすぎる存在に臆する俺に、楓はいつもの調子で大丈夫大丈夫って手を振る。
 礼儀とかそういうのは気にしなくて良いって。そんなわけあるか!
 ……って思っていたのに、結局通された豪奢な部屋で迎えたのは、何故か土下座のような態勢で俺を出迎える国王陛下。

「ご子息のこと、もうしわけなかった」
「へ?」
「こちらの都合で連れ去り、お返しすることもできない。何の詫びにもならないが、どうか勘弁してほしい」

 自分にできることであれば何でも言って欲しいと頭を下げたままの陛下。
 オロオロするが、俺の横に頼りになる兄はいない。代わりにいるのは、ふざけた姿の分体だけ。

「あ、あの。顔を上げてください。そもそも、貴方のせいではないでしょう?」
「む、それはそうだが……」
「そこで提案なんだが、弟がこの世界を自由に行動できるよう身分証を作ってやって欲しいんだが」
「ちょ、楓何言って」
「そのくらいならお安い御用だ」

 俺が何も言わないうちに楓が勝手に要望を出し、陛下がそれを快諾してしまった。
 他国を行き来するなら冒険者ギルドに登録してギルド証を作るのが良いのだそうだが、それだと定期的に依頼を受ける必要があるそうだ。呆然としている俺に変わって楓がそれは困ると言い出し、それでは税を納めるだけの商人ギルドのギルド証が良いだろうってなった。

「取り敢えず前金で1年分を納めておこう。主な商品は何にしておくかね?」
「じゃあ、宝飾品で」
「ちょ、楓?!」

 慌てる俺の肩に飛び乗って、落ち着けと楓が耳打ちする。百均に売ってるガラス玉のようなアクセで良いんだって。
 あのレベルの加工技術がないから、こっちでは重宝されるって。特にビー玉なんかは魔法を籠めて魔石として販売している業者もいるくらいだからって。

「セントゥロで商売するなら胡椒や塩などの調味料が喜ばれるし、オチデンなら魔石の原料、オーリエンなら単純にアクセサリーが良いな。アスーは何が喜ばれるか不明だが」
「アスーか。アスーは果物が名産品だったな。こちらと違ってかなり暑い気候であったぞ」
「ふむ、ならば扇子とかかね。まぁいざとなったら仕入に来たんだとでも言えば」

 当事者であるはずの俺を抜きにしてどんどん話がまとまっていく。
 そうして、一日城で滞在して旅をする際の注意事項なんかの説明をウェルナーと名乗る青年から受けている間に出来上がったこちらの世界での身分証には、「商人、取扱品:日用雑貨」と書かれていた。

「これで次回からはアスーに向かって徒歩の旅になるな」
「いきなりアスーには行けないの?」
「残念ながらまだアスーに辿り着けていない」

 リージェ達の方はオーリエンを出てアスーに向かっているらしい。
 式典の最中や野営中にモンスターに襲われたとかで、俺がいなくて良かったと笑う楓。そのふざけた風貌と相まって、凄く馬鹿にされている気になるのはきっと気のせいだ。
 旅に出て早々襲われて、しかも奴隷同然の扱いをされていたっていう生徒達が心配だ。

「それなんだけどさ、オーリエンを出たっていうなら、一度合流したって良いんじゃないか?」

 そもそも俺が待機しているのだって、モンスターの侵入を防ぐために街に入る人数と出る人数をチェックしているって理由だったし。それなら野営している今なら同行しても構わないはずだ。

「身分証を手に入れたんだし、出る時人数が違うっていうなら途中で同行させてもらっている商人として別口で入れば良いし。そうすれば出る時だって関係ないだろ?」
「……お、おう! もちろんそのつもりで身分証を作らせたんだぜ!」

 両手を腰(?)に当てて高笑いするけど、一瞬その手があった、って顔をしたのはばっちり見ているからね?
 俺は臨床心理士の資格も持っているから、不安定な生徒たちのカウンセリングをしてやることだってできるはずだ。
 うん、俺にはまだまだできることがある。

 一人で移動するより、リージェ達と行動を共にさせてもらうほうが早いし安全だ。
 香月を探しに行くためには、リージェ達について行くためには、俺が有用だと示さなければ。
 待っていろ、香月。父さん必ずお前を迎えに行くからな。
しおりを挟む
感想 289

あなたにおすすめの小説

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...