中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

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第九章 俺様、ダンジョンに潜る

8、またか

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 色々不安要素もあることはあるが、すっかり準備の整った俺達は「女神の寝所」と呼ばれるダンジョンへと出発した。
 馬車で二日の距離とは言っていたが、道中周辺のモンスターを殲滅しながら進むため実際にはもっとかかるだろう。
 そのため、俺達が先行し、輜重部隊の歩兵が追いつくまで索敵と殲滅。合流したら小休憩、という流れで進んでいる。

「しかし、こう連戦だとさすがに疲れるな」

 俺が尻尾で弾き飛ばした熊型のモンスターに、アルベルトが止めを刺しながら愚痴る。
 ダンジョンに近づくごとに、遭遇するモンスターが増えてきているのだ。
 ステータス差がありすぎるのか経験値がいくらも入らない俺と違い、エミーリオがレベル49、ルシアちゃんがレベル40に上がったという点からどれだけ連戦だったか察してくれ。

「そろそろ日暮れです。野営地を用意しましょう」

 エミーリオの提案に賛成する。俺も索敵をかけてみるが、先ほど殲滅したからか周辺には何も反応が無い。
 いや、実際にはあるのだが俺達の方へ向かってくる気配はない。

『さては俺様の強さに怯えたな? クァーハッハッハッハツ!』
「いや、暗黒破壊神の下へ馳せ参じる方を優先してるだけだろう」
『グッ……おのれ、俺様など眼中にないと言うのか……! 良かろう、明日追いつき次第とくと思い知らせてくれるわ!』

 高笑いする俺に、同じく探索のできるベルナルド先生のクールなツッコミが入る。
 ベルナルド先生が竃の用意をし、エミーリオが馬を休ませている。他のメンバーは遅れてくる輜重部隊の馬車が停められるよう、広範囲の草を刈り、本庄が調理を始める。
 いつもより人数が多い分、準備も大変そうだ。

 俺とルシアちゃんも草刈りの手伝いに回り、竃の用意が終わったベルナルド先生とエミーリオが倒したモンスターの解体に行き暫く経った頃、それは起きた。

「ふざけるな! 誰が貴様の指図など受けるか! 身のほどを知れ!」
「そうだ! そのような雑事、貴様がやれば良いのだ!」

 突如響き渡るジルベルタの怒声と、それに同調する男どもの声。
 またか、と俺達はため息を吐く。ルシアちゃんに至っては明らかに苛ついていた。
 実はここまで来る間にも、警護すべき輜重部隊を置いて俺達についてきたジルベルタ(先行してモンスターを殲滅しておくのも警護の内だというのが彼女の言い分だ)が、散々足を引っ張ってくれたのだ。

 ベルナルド先生が戦闘指示や警告を発しようものならいちいち噛みつき。
 ベルナルド先生が攻撃魔法でモンスターを倒そうものならいちいち「これだから黒の使徒は野蛮だ」と突っかかり。
 エミーリオが俺の補佐でモンスターを足止めしようものなら、攻撃魔法と勘違いして「エミーリオ、貴様まで黒の使徒に堕ちたか」と喚き。
 おかげで要らぬ怪我人が続出で。ルシアちゃんのレベルがめっちゃ上がったのは、回復魔法や結界を使いまくったせいでもある。
 まぁ、今夜の野営に関してはあらかじめ祈りを込めておいた結界石を使うから問題ないらしいが。

『いったい何があったのだ。騒々しい』
「これは、聖竜殿!」
「あぁ、今夜で本庄君が帰るだろう? 食べ物の保存が利くように、燻製にするのを手伝ってもらおうと声をかけたんだが……」
「黙れ! 誰が発言して良いと言った!」

 騒ぎを起こしていた連中の間に割って入ると、やはりジルベルタとベルナルド先生がいた。
 声をかけた俺に敬礼したまま、ジルベルタが事情を説明しようとするベルナルド先生に突っかかっている。
 俺は深いため息を吐いて周囲にいる連中とその手元を見る。
 血や煤で汚れたベルナルド先生。一方、綺麗なまま仁王立ちしているジルベルタ。ジルベルタと一緒にベルナルド先生を非難していたらしい男連中に至っては、酒や肴を配って既にチビチビやり始めている様子だ。

『貴様ら、いい加減にしろ! そもそも、ベルナルドがやろうとしていることは貴様らの仕事であろう! 役目を果たさず、我らに先んじて酒を飲み我らの糧食に手をつけるとは何事だ!』
「な……せ、聖竜殿! こ、これはですね!」
『何だ? 申してみよ。確か、我々が雑事に煩わされず暗黒破壊神討伐に集中できるように、との名目で貴様らはついてきたのだったよな? その役目以上に大事なことがあったのであろう?』

 俺が一喝してやると、酒を仰ごうとしていた連中は気まずそうに酒を隠す。ジルベルタも役目を果たしていない自覚があったのか、たじたじだ。

「こ、こ奴が悪いのだ! 黒の使徒の分際で、我らに指図するなど! 陛下の温情で生かされている身ならば、隅で目立たずこそこそとしていれば良いのだ!」
「いい加減にして下さい!」

 ベルナルド先生を指差してなおぶちまけるジルベルタ。
 いい加減キレそうになったのは俺だけでないようで、アルベルトもバルトヴィーノ達も皆怒り顔でいつの間にか寄ってきてベルナルド先生を庇うような位置に立っている。
 俺が言いたいことはそれだけかと怒りの咆哮を上げようとした時、割って入ったのはまさかのルシアちゃんだった。

「今日だけで、貴女が何度ベルナルド様の警告を無視したかわかりますか! そのせいで何度治療が必要になったか!」
「そ、そんなの、こ奴らが未熟なだけでは」
「ふざけないでください! 貴女が和を乱さなければ、戦闘だって上手くいっているのがわからないほど周囲が見えなくなっているのですか!」

 おーおー、言うねぇ。
 ルシアちゃんがここまで怒るのはオーリエンのバカ貴族に絡まれた時以来か。
 ジルベルタは王族には絶対的な忠誠心を持っているらしく、ルシアちゃんに叱られて涙目でシュンとしている。

「ベルナルド様は私達の大切なメンバーであって、奴隷ではありません。弁えるのは貴女の方です。これ以上、貴女の勝手で彼らを危険に晒すのであれば、もう帰ってくださって結構です!」
「そ、そんな……殿下は騙されておいでなのです! あの黒の使徒に!」
「はいはい、そこまで」

 平行線になりそうな気配に水を差したのは1号だ。
 ぽむぽむと間抜けな音で拍手をしながら、ルシアちゃんとジルベルタの間に割って入る。

「お前さん、陛下の命令で国を代表して来ているんだろ? お前さんの意見が陛下の意見ってことで良いのか?」
「無論だ!」
「ほぉ、そうかい。陛下はそうは言ってないがな」
「貴様のような化け物に陛下の何がわかる!」
「お前さんこそ忘れたのかい? 俺は意識を全個体と共有できる。そして、今、俺の分体が陛下の隣にいるって。つまり、この会話もこれまでのお前さんの動向も陛下はご覧になっているってことをさ」

 1号の言葉に、まさか、と顔を青褪めさせるジルベルタ。
 1号は悪い笑顔でジルベルタに告げた。

「陛下の言葉を伝えるぜ。『ジルベルタ・デイ・アルコ、貴殿にその任はまだ早かったようだ。即刻帰還せよ』」
「そ、そんな……お待ちください、陛下!」

 もう一度チャンスを、と拝み倒すジルベルタ。
 1号を通じてその向こうにいるおっとり国王に言っているわけだが、きのこに土下座する絵面はかなりシュールだ。ねぇ、笑って良い?
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