その腕に囚われて

禎祥

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10、俺のものになって *(side 真)

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 眼鏡を外した俺はリオの足を開き、その間に膝を割り入れる。
 ギシ、とベッドが軋んだ。
 少しだけあばら骨の浮いた白い肌。半年前はもう少し肉付きが良かったのに。

 夢にまで見たリオの肌に、そっと触れる。
 これまで触れてきたどんな女性よりも滑らかで掌に吸い付くように感じる。

「ンッ……」

 リオから甘い吐息が漏れる。
 だけど、まだ起きたわけではないようだ。
 俺は用意しておいたローションを手に取ると、手の熱で温まるのを待つ。

「本当は、起きている時に合意の上でやりたかったけど……仕方ないよね」

 リオの片足を肩に乗せ、リオの腰を浮かせる。
 片手で掴めるくらい細い足だ。脛毛は色素が薄いらしくほとんど目立たない。
 中心に自分と同じモノがついていなければ、少々筋肉質の女性と思ってしまうような身体だ。

 恋焦がれたリオを組み敷いている。それだけで、俺の中心は昂った。
 逸る気持ちを抑えて、リオの蜜口にローションを塗る。
 クルクルと円を書くように塗ってから、蕾をこじ開けるように指を潜らせた。

「んっ……ふ」
「感じやすいんだね。可愛い」

 眠っていても、触れる度に鼻に抜けるような吐息が漏れるリオ。
 可愛いと思う反面、誰かにそういう風にされたのかも、という不安は強くなる。
 襞を丁寧に伸ばすように指を何度も抜き差しして、ローションを中に塗りこめていく。

 この日のために男性同士のSEXについてはたくさんネットで勉強した。
 本当は洗浄した上でコンドームを使わないと、挿れる側は大腸菌が尿道から入り膀胱炎になるらしい。
 でもその程度のこと、無理矢理リオを抱く自分への罰にちょうどいい。
 受ける側の方は数倍負担が大きいらしいのだから。

 指を2本に増やし、今度はもう少し奥まで入れてみる。
 半年近くほとんど食べていないからか、腸内は洗浄の必要がないのでは、と思うくらい何もなかった。
 ローションの滑りのお陰で難なく入るが、やっぱり男を受け入れるようにはできていないからか凄くキツい。

「守は本当に手を出していないみたいだね」

 少しだけ安心した。
 指を増やした時に苦しそうになったリオの呼吸が落ち着くまで、抜き差しはせずに中を拡げるようにゆっくりと指を開いたりして待つ。
 リオのペニスがゆるゆると形を変えてきたところで、再び指を増やす。

「ふっ……アッ?!」

 ビクリ、と体を仰け反らせ、リオが目を開けた。
 寝惚けているのか、ぼんやりとしている。
 俺は構わずに指を動かした。

「あっ……え、な、何? 誰……?」

 リオは俺がわからないらしい。
 さっき名乗ったのに。俺はイラっとして指を乱暴に動かしてしまった。

「ひっ……何、して……やっ、やめてくださ……あぁっ」

 乱暴にしていても、感じてくれているみたいだ。
 首をもたげ始めたリオのペニスは、萎えることなく更に持ち上がっている。
 ジタバタと足を動かすリオ。けれど、全然俺には当たらない。
 当たらないけれど、抵抗されて面白いわけがない。

「暴れるんじゃねぇよ。俺はあんたを傷つけたいわけじゃないんだ。大人しくしていれば、気持ちよくしてやるからさ」
「やっ、あっ……あぁっ」

 俺は指を増やす。これで4本目。
 暫く動かしているうちに、他より弾力がある部分に触れた。
 リオの体が大きく仰け反る。ビクビクと痙攣したように打ち震える。
 ここが前立腺というやつか。
 俺はそこを執拗に攻めた。

「ああっ……ンッ……はっ、あっ」

 リオの口からは嬌声が漏れる。
 それが恥ずかしいのか、耳まで朱に染まる。
 潤んだ瞳で、やめて、と弱々しく懇願してくるリオ。
 その表情だけで俺はイってしまいそうだ。

「可愛い。リオ……もう、俺のものだ……」
「! なん、名前……あっ! 嫌だ! ああああああっ!」

 リオのアナルに、限界まで怒張した俺のペニスを突き入れる。
 流石に苦しかったのか、悲鳴のような声を上げるリオ。
 力が籠ってしまい、せっかく解したのに途中までしか入らない。

「くっ、力を抜け」
「む、り……んっ……抜いて、くださっ……放し、て……」

 これは、俺も痛いがリオも痛いだろう。
 力を抜くよう言ってもますます力が入ってしまうようだ。
 仕方ない。

 俺はリオを抱き寄せると、体勢を変えた。
 俺が座位になりリオを腰の上に乗せる、騎乗位というやつだ。
 宙に浮かせたリオの腰を支えていた手を放すと、リオはストンと俺の杭の上に落ちる。

「ぐっ……あぁぁああああああ!」

 痛かったのだろう、リオが悲鳴を上げる。
 俺も潰れるかと思うくらい痛かったけど、きっとリオの方が痛い。
 俺はすっかり萎んでしまったリオのペニスをゆるゆると撫で、少しでもリオの気が紛れるようにしてやる。
 暫くすると、再びリオが嬌声を上げた。
 どうやらまた前立腺に当たったようだ。意識してそこに俺の先端を当てる。

「ひあぁっ! あんっ、あっ、あぁああっ……!」
「リオ、リオっ……可愛い、リオ」

 突き上げる度に声を上げるリオ。
 仰け反りビクビクと体を震わせ、大粒の汗を浮かばせながら腰をくねらせる様子は、とても色っぽい。
 情けないことに俺はすぐに達してしまった。

 イってすぐの敏感なペニスに、リオの中が吸い付くように収縮する。
 そんなことをされたら、すぐに元気を取り戻すに決まっている。
 いや、そんなことをされなくても、想像以上のリオの痴態を見れば何度だって勃つ。

「ひっ……も、無理ぃ……やめっ……ああっ、んっ」
「リオ、すごい……ハッ……また、搾り取られそう」

 朱に染まった白い肌。浮かぶ汗は真珠のようで。
 桜のような淡いピンクの乳輪と、ささやかに主張する小さな突起。
 あまり使ってないような薄ら赤いペニスは歓喜に震え、自分と同じモノだとは思えない。
 苦しそうに眉根を寄せ、潤んだ瞳で俺を見るリオはどんな女性より美しい。

 何度も何度も中出ししても、俺はすぐにムクムクと硬さを取り戻す。
 リオもまた俺に感じてくれているのが嬉しい。
 もう大丈夫そうだ、と少しでもリオが疲れないよう正常位に戻る。
 ポッコリと膨らんだお腹も、精液に塗れるリオも、俺がそうしたのだと意識するとますます興奮してしまう。

「はっ、リオ、妊婦さんみたい。わかる? ここに俺の子種たっぷり入っているの。リオが女の子だったら、孕んでいたかもね」
「あっ、やめっ……」

 リオが女の子だったら良かったのに。
 そうしたら、俺の子を産んでもらえるのに。
 リオの膨らんだお腹を撫でながら、無意識に子種を奥に送り込むように腰を動かしてしまう。
 その刺激で、俺はまた大きくなってしまった。

「やっ……あ、あぁっ、ああんっ……もう、やめて、くだっ、んあっ」
「リオは本当、男を煽るのが上手いね。どこで覚えたんだか」
「ち、ちがっ。やめっ! あぁっ!」

 こんなに善がり狂ってなお俺を拒否する言葉を言うリオに、征服欲が再燃する。
 これほど愛しても、まだ俺のものになってくれないの?
 それとも、こういう風にしろと教え込んだ誰かがいる?
 許せない。

「嫌だって言っている割には、どこもかしこも気持ちよさそうだよ?」
「ちが、違うっ。知らなっ、こんな、こと、んっ、誰とも……」
「誰とも? 本当に? 俺が初めて? 嬉しい、リオ」
「あっ! んんっ……あっ、あぁ、ん」

 なら、もっと優しくしなくちゃ。
 さっき噛みついてしまったリオの乳首にしゃぶりつく。
 小さくて、可愛い。
 舌先でつつく度、吸い付く度、リオはビクビクと感じてくれる。

「あっ……もっ、ゆるしてぇ」
「だめ」

 先走りで滑るリオの根元を思い切り握る。
 リオが俺に縋るように身体を寄せてくる。
 泣き顔も可愛い。もっと見たい。もっともっと。

「3つ約束してくれるならイかせてあげるよ」
「あっ、んんっ」
「1つ、二人きりの時は真って呼んで。2つ、俺の用意した食事をちゃんと食べて。3つ、俺以外の男にリオの可愛いとこ見せないで」

 本当は俺以外の男と話さないで、と言いたいけどそれは無理だから。
 俺が恋人に求めることは、衣食住全て俺に依存してってことだけど、また「貴方の人形じゃない」って言われたくないから。
 これでも妥協してるんだよ。

「返事は? 約束、してくれるよね?」
「んっ、するっ! する、からっ……あっ、はな、し、てぇっ」
「なら、俺の名前を呼んで、リオ」

 もう俺のこと忘れないで。
 俺の事を誰、なんてもう言わないで。
 恋人らしく、俺の名をちゃんと呼んで。
 お願いだから、俺を見て。俺のものになって。俺だけのリオでいて。

「あっ、し、シン、シンッ」
「良い子だ、リオ」
「シン、あっ、あああああっ!」

 やっと、俺の名を呼んでくれた。
 リオが俺の名を呼びながら善がっている。
 それは予想以上の破壊力で。
 手を放してあげると同時に、俺もイってしまった。

 ぐったりと俺にもたれて気を失ったリオ。
 少し無理をさせ過ぎた、と我に返る。
 申し訳ない気持ちもあるけれど、これでようやく本当の恋人になれた、という幸せな気持ちでいっぱいだった。
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