オオカミと赤ずきん

Fio

文字の大きさ
上 下
2 / 2

赤ずきんの日常

しおりを挟む
赤ずきんは季節問わず長袖で、体がすっぽり覆われる赤いずきんを着ていた。
「赤ずきん!今日もおばあさんとこかい?」
「えぇ。お見舞いに行くの」
森の入り口で声をかけられた赤ずきんはにこにこ笑って答えた。
「だが、こんな暑いのにそんな格好じゃ体調を崩しちまうぞ」
親切な村人は汗を拭いながら赤ずきんを気遣った。
「いいの。お母様がくれたお気に入りだから」
これもまた赤ずきんはにこにこと笑って答えた。それでも心配そうに見送る村人を置き去りにずんずんと森の奥深く入っていった。おばあさまは病気だ。赤ずきんが物心ついたときにはもうこの奥深くでたった1人暮らしている。村の一部の人は感染るのではないと恐れているが今まで何百回も訪れた赤ずきんが感染ったことはない。
木の扉を控えめにノックする。
「おばあさま?」
返事はない。
少し躊躇ったが赤ずきんは扉に手をかけた。鍵がついていない扉は糸も容易く開いてしまった。
「だれだい?」
「わたしよ、赤ずきんよ」
ベットで横になる祖母に安堵し、テーブルにバスケットを置いた。
「ワインと果物置いておくわ」
「赤ずきん、わざわざありがとう」
祖母の手が伸び赤ずきんの頭を撫でる。
しばらく固まっていた赤ずきんは我を戻したように立ち上がった。
「またね、おばあさま」
「またね、赤ずきん」
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...