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23 魔女って……
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「……う、う~ん」
普段よりも開けずらい目を擦る。ボーっとする脳のまま、自分の宿の部屋を見渡す。
「……ん?宿?」
さっきまでどこかの高台にいたはずだ。あの怪しい占い師に動揺して、がむしゃらに街を駆け回ってそこにたどり着いた記憶がある。あと、なにかを忘れているような。
「あっ」
思い出した。そういえば、あそこでテディさんに会ったんだった。それで、彼にそのまま……。
「……お姫様だっことか、羞恥の極み……」
おそらく、テディさんが私をここまで運んでくれたのだろう。運ばれているうちに、私は眠ってしまっていたようだ。輸送中の記憶がないことは、不幸中の幸いかもしれない。
(それにしても、どれくらい寝てたんだろう……)
少ししか寝ていないと思っていたが、窓の明るさから夜ではないことを悟る。昨日、高台にいた時間帯は夕刻に近かった。だから、今が夜じゃないとなると答えはひとつだ。
「……日をまたいだ?」
自分の眠りの深さに恐れおののきつつ、急いで身支度を整え始めた。
ある程度身だしなみを整え、テディさんにお礼を言いに行こうと騎士団の建物に向かっていた時だった。
「ん?シロか」
「あれ、ケイ?こんなところで何してるんですか?」
シンプルな白いシャツに黒いパンツ姿のケイが、建物の塀に凭れていた。おそらく非番なんだろう、私服の姿を見たのは初めてだった。
「誰かを待ってるんですか?」
明らかに待ち合わせをしているような感じから、誰を待っているんだろうと興味をもった。彼は誰かと仲良く出掛けるような人じゃない。なんせお祭りを歴史の授業にするような人だから。
「もしや……デート!」
「違う」
「あ、違った」
ケイから呆れたような視線を受け、私は頭の後ろを手で掻く。
どうしても色恋沙汰にもっていきたくなるのは、人の性だと思う。
「君はどうしてこう……、ハア……」
「人の顔を見てため息をつかないでください」
気だるそうに塀に凭れ、憂いを帯びた顔をするケイ。
そんな彼の駄々洩れの色気を受けた一般通行人の方々に被害が及んでいる。
そこの人、よそ見しながら歩いてると……、あっ、木にぶつかった。
「祭りを案内すると約束しただろう」
「魔女祭を教えてやるとは言われましたが、案内するとは言われてません」
「屁理屈いうな!」
「嫌だ!また歴史の授業は受けたくない!」
抵抗も虚しく、私は屋台で賑わう大通りへと引きずられていった。
掴まれた手を必死に振りほどこうとしたが、軽くいなされた。手を捕えて離さない極悪人はどんな顔をしているのかと思い、ケイの横顔を見る。しかし、彼はなぜか口元をおさえていて表情はわからなかった。
「意外です」
「何がだ」
「まさか、ケイが屋台を堪能させてくれるような慈悲をもってたとは思いませんでした」
「その手に持っている物を渡してもらおうか」
「ごめんなさい!」
現在、私とケイは並んでベンチに座り、私だけクレープを食べている。
ケイはそれをただ見ているだけだ。
まあ、そのクレープをたった今没収されかけたわけだが。
「前回の歴史の授業は一体何だったんですか?」
「君はこの王都のことも魔女のことも知らなすぎるから、教える必要があったまでだ」
「………そんなしょうもない理由で」
「聞こえてるからな」
じっとりとこちらを見てくるケイからクレープを守りつつ、彼に話しかける。
「それにしても、テディさんが仕事に駆り出されているのは胸が痛みます」
「胸が痛むわりには、よく食べるんだな」
「消化してるのは胃の方ですから」
「減らず口だな」
ダラダラとベンチで話していると、目の前に花が舞ってきた。
それはひらひらと宙を舞い、私の膝の上にのった。
淡く青い花。
がくに触れていたであろう部分は少し黄色くなっている。
花粉で黄色くなったのだろうか。
「この花は………」
「ああ、もうそんな時間か」
ケイは私の手のひらにある花を見て、なにかを思い出したように言った。
親指の爪ほどの大きさの小ぶりなこの花に、一体どんな意味があるのだろう。
「この花になにか意味があるんですか?」
「そういえば、君はこの魔女祭は初めてだったな」
何も理解できていない存在がいるとやっと気づいた彼は、宙を舞う花を指しながら説明してくれた。
「この花自体に特に意味はないんだが、花を撒くという行為自体には意味がある」
「……?」
「魔女は花が好きだから撒く。以上だ」
「いや、シンプル!」
あまりにも簡単だった理由に、ベンチからズリ落ちかける。
視線が下を向き、地面に落ちた花たちが目に入る。
私が踏んでしまったのだろう、淡かった花びらが深い青になっていた。
「……とりあえず、この地面に落ちた花たちはどうするんです?」
「それらは騎士団が清掃する」
「………」
騎士団の仕事が案外、雑用的なものだった。なんだか微妙な感情になる。
労いの意味を込めてケイを見つめていると、ゴーンという音が聞こえてきた。
どうやら遠目に見える時計台から鳴っているようだ。
「―――って、あんな遠い時計台から花撒いてたんですか!?」
「そうだが、何か問題でもあったのか」
「いや……ないですけど………」
てっきり近場の高い所から撒いているのだろう思っていたが、180度ひっくり返された。
まさか遠くから花を飛ばしてきているとは………。
「魔法なんて珍しいものじゃないだろう」
「魔法で花は飛ばしても、魔法で花を保護するとかはしないんですね……」
楽しげに駆け回る子どもたちに踏まれる花を見る。
やはり、魔法も万能ではないのかもしれない。
「魔法で保護はできるが、それは禁止されている」
「なんで?!」
どうやら魔法は万能のようだ。
花が踏んずけられているのは、謎ルールのせいだったらしい。
「え、なんで……?」
きっと深いわけがあるのだろうと、ケイの顔をそっと窺う。
すると、彼の眉間には深いしわが刻まれていた。
「まあ、あれだ、花は自然のままがいいという意見があってだな」
彼は頭痛を押さえるように、眉間に手をあてながら言った。
しどろもどろな彼の様子に、慈愛の笑みを向ける。
「本当は?」
「……魔女たちは人々が花を愛でることを嫌うからだ」
「魔女の懐が狭いっ!」
想像の斜め上をいく理由に、私はため息をつく。
まさか自分の同族がこんなに狭量だったとは思わなかった。
「そうですか……。魔女が花を好きだからって、わざわざ撒いてるのにそれを愛でることは許さないんですね……」
「花は自分たちが楽しめればよく、たとえ花でも自分たち以外を称賛するのは嫌らしい」
「魔女が思った以上に我が儘!」
今回の祭りの一番の成果としては、魔女のとんでもない一面を知ったことだろう。
それなりに気疲れしたが、総合的にはとても楽しい日となった。
「大変だ!」
祭りが終わり、王都も少し落ち着いた頃。
薬窯をかき回していた私の元に、騒がしい人がやってきた。
「キリルさん、仕事の邪魔です」
「シロちゃんが冷たい!」
薬窯の火の調整をしてから、この賑やかな客人を出迎えることにした。
白い制服をピシッと着こなしてはいるが、髪の方は多少乱れていた。
彼がそれなりに急いできたことがうかがえた。
「それで、一体どうしたんですか」
とりあえず落ち着かそうと、近くにあった椅子を引っ張り出して座るよう促した。
キリルはそれに座ることなく、すごい勢いで言ってきた。
「継承者が現れたんだよ!」
「修飾語をつけてください」
一体なんの継承者なのか。全く情報が入ってこない。
彼は何も理解できていない私に詰め寄る。
頼むから、椅子に座って一旦落ち着いてほしい。
「魔女の力の継承者だよ!自分こそが本物だってね!」
眉を吊り上げてまくし立てる彼の様子から、その人物によっぽど腹に据えかねていることがわかる。このお調子者だけど大人なキリルさんをこんな風にした人物に関して気になるが、それよりも重要なことがわかった。
「つまり、私はもう家に帰っていいってことですね!」
「違うよ?!」
彼は勝利のガッツポーズをする私に慌てる。
そんな混沌とした空間の中にやってきた人物がいた。
「……何をしているんだ」
「あっ、テディさん」
「ディアクロス!お前からも言ってやってくれ!」
テディさんはキリルさんの言葉に少し眉をひそめた後、私と彼を交互に見た。
そして、少し沈黙してから言った。
「……状況を説明してくれ」
普段よりも開けずらい目を擦る。ボーっとする脳のまま、自分の宿の部屋を見渡す。
「……ん?宿?」
さっきまでどこかの高台にいたはずだ。あの怪しい占い師に動揺して、がむしゃらに街を駆け回ってそこにたどり着いた記憶がある。あと、なにかを忘れているような。
「あっ」
思い出した。そういえば、あそこでテディさんに会ったんだった。それで、彼にそのまま……。
「……お姫様だっことか、羞恥の極み……」
おそらく、テディさんが私をここまで運んでくれたのだろう。運ばれているうちに、私は眠ってしまっていたようだ。輸送中の記憶がないことは、不幸中の幸いかもしれない。
(それにしても、どれくらい寝てたんだろう……)
少ししか寝ていないと思っていたが、窓の明るさから夜ではないことを悟る。昨日、高台にいた時間帯は夕刻に近かった。だから、今が夜じゃないとなると答えはひとつだ。
「……日をまたいだ?」
自分の眠りの深さに恐れおののきつつ、急いで身支度を整え始めた。
ある程度身だしなみを整え、テディさんにお礼を言いに行こうと騎士団の建物に向かっていた時だった。
「ん?シロか」
「あれ、ケイ?こんなところで何してるんですか?」
シンプルな白いシャツに黒いパンツ姿のケイが、建物の塀に凭れていた。おそらく非番なんだろう、私服の姿を見たのは初めてだった。
「誰かを待ってるんですか?」
明らかに待ち合わせをしているような感じから、誰を待っているんだろうと興味をもった。彼は誰かと仲良く出掛けるような人じゃない。なんせお祭りを歴史の授業にするような人だから。
「もしや……デート!」
「違う」
「あ、違った」
ケイから呆れたような視線を受け、私は頭の後ろを手で掻く。
どうしても色恋沙汰にもっていきたくなるのは、人の性だと思う。
「君はどうしてこう……、ハア……」
「人の顔を見てため息をつかないでください」
気だるそうに塀に凭れ、憂いを帯びた顔をするケイ。
そんな彼の駄々洩れの色気を受けた一般通行人の方々に被害が及んでいる。
そこの人、よそ見しながら歩いてると……、あっ、木にぶつかった。
「祭りを案内すると約束しただろう」
「魔女祭を教えてやるとは言われましたが、案内するとは言われてません」
「屁理屈いうな!」
「嫌だ!また歴史の授業は受けたくない!」
抵抗も虚しく、私は屋台で賑わう大通りへと引きずられていった。
掴まれた手を必死に振りほどこうとしたが、軽くいなされた。手を捕えて離さない極悪人はどんな顔をしているのかと思い、ケイの横顔を見る。しかし、彼はなぜか口元をおさえていて表情はわからなかった。
「意外です」
「何がだ」
「まさか、ケイが屋台を堪能させてくれるような慈悲をもってたとは思いませんでした」
「その手に持っている物を渡してもらおうか」
「ごめんなさい!」
現在、私とケイは並んでベンチに座り、私だけクレープを食べている。
ケイはそれをただ見ているだけだ。
まあ、そのクレープをたった今没収されかけたわけだが。
「前回の歴史の授業は一体何だったんですか?」
「君はこの王都のことも魔女のことも知らなすぎるから、教える必要があったまでだ」
「………そんなしょうもない理由で」
「聞こえてるからな」
じっとりとこちらを見てくるケイからクレープを守りつつ、彼に話しかける。
「それにしても、テディさんが仕事に駆り出されているのは胸が痛みます」
「胸が痛むわりには、よく食べるんだな」
「消化してるのは胃の方ですから」
「減らず口だな」
ダラダラとベンチで話していると、目の前に花が舞ってきた。
それはひらひらと宙を舞い、私の膝の上にのった。
淡く青い花。
がくに触れていたであろう部分は少し黄色くなっている。
花粉で黄色くなったのだろうか。
「この花は………」
「ああ、もうそんな時間か」
ケイは私の手のひらにある花を見て、なにかを思い出したように言った。
親指の爪ほどの大きさの小ぶりなこの花に、一体どんな意味があるのだろう。
「この花になにか意味があるんですか?」
「そういえば、君はこの魔女祭は初めてだったな」
何も理解できていない存在がいるとやっと気づいた彼は、宙を舞う花を指しながら説明してくれた。
「この花自体に特に意味はないんだが、花を撒くという行為自体には意味がある」
「……?」
「魔女は花が好きだから撒く。以上だ」
「いや、シンプル!」
あまりにも簡単だった理由に、ベンチからズリ落ちかける。
視線が下を向き、地面に落ちた花たちが目に入る。
私が踏んでしまったのだろう、淡かった花びらが深い青になっていた。
「……とりあえず、この地面に落ちた花たちはどうするんです?」
「それらは騎士団が清掃する」
「………」
騎士団の仕事が案外、雑用的なものだった。なんだか微妙な感情になる。
労いの意味を込めてケイを見つめていると、ゴーンという音が聞こえてきた。
どうやら遠目に見える時計台から鳴っているようだ。
「―――って、あんな遠い時計台から花撒いてたんですか!?」
「そうだが、何か問題でもあったのか」
「いや……ないですけど………」
てっきり近場の高い所から撒いているのだろう思っていたが、180度ひっくり返された。
まさか遠くから花を飛ばしてきているとは………。
「魔法なんて珍しいものじゃないだろう」
「魔法で花は飛ばしても、魔法で花を保護するとかはしないんですね……」
楽しげに駆け回る子どもたちに踏まれる花を見る。
やはり、魔法も万能ではないのかもしれない。
「魔法で保護はできるが、それは禁止されている」
「なんで?!」
どうやら魔法は万能のようだ。
花が踏んずけられているのは、謎ルールのせいだったらしい。
「え、なんで……?」
きっと深いわけがあるのだろうと、ケイの顔をそっと窺う。
すると、彼の眉間には深いしわが刻まれていた。
「まあ、あれだ、花は自然のままがいいという意見があってだな」
彼は頭痛を押さえるように、眉間に手をあてながら言った。
しどろもどろな彼の様子に、慈愛の笑みを向ける。
「本当は?」
「……魔女たちは人々が花を愛でることを嫌うからだ」
「魔女の懐が狭いっ!」
想像の斜め上をいく理由に、私はため息をつく。
まさか自分の同族がこんなに狭量だったとは思わなかった。
「そうですか……。魔女が花を好きだからって、わざわざ撒いてるのにそれを愛でることは許さないんですね……」
「花は自分たちが楽しめればよく、たとえ花でも自分たち以外を称賛するのは嫌らしい」
「魔女が思った以上に我が儘!」
今回の祭りの一番の成果としては、魔女のとんでもない一面を知ったことだろう。
それなりに気疲れしたが、総合的にはとても楽しい日となった。
「大変だ!」
祭りが終わり、王都も少し落ち着いた頃。
薬窯をかき回していた私の元に、騒がしい人がやってきた。
「キリルさん、仕事の邪魔です」
「シロちゃんが冷たい!」
薬窯の火の調整をしてから、この賑やかな客人を出迎えることにした。
白い制服をピシッと着こなしてはいるが、髪の方は多少乱れていた。
彼がそれなりに急いできたことがうかがえた。
「それで、一体どうしたんですか」
とりあえず落ち着かそうと、近くにあった椅子を引っ張り出して座るよう促した。
キリルはそれに座ることなく、すごい勢いで言ってきた。
「継承者が現れたんだよ!」
「修飾語をつけてください」
一体なんの継承者なのか。全く情報が入ってこない。
彼は何も理解できていない私に詰め寄る。
頼むから、椅子に座って一旦落ち着いてほしい。
「魔女の力の継承者だよ!自分こそが本物だってね!」
眉を吊り上げてまくし立てる彼の様子から、その人物によっぽど腹に据えかねていることがわかる。このお調子者だけど大人なキリルさんをこんな風にした人物に関して気になるが、それよりも重要なことがわかった。
「つまり、私はもう家に帰っていいってことですね!」
「違うよ?!」
彼は勝利のガッツポーズをする私に慌てる。
そんな混沌とした空間の中にやってきた人物がいた。
「……何をしているんだ」
「あっ、テディさん」
「ディアクロス!お前からも言ってやってくれ!」
テディさんはキリルさんの言葉に少し眉をひそめた後、私と彼を交互に見た。
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