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第一章 死神と呼ばれた男
返り咲く、冒険者へと④
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「冒険者をまた始めるだって!?」
素っ頓狂な声を上げたのは、冒険者であるアルミンだ。
アルミンはルクスに呼び出され、冒険者ギルドに来ていた。ルクスから酒盛り以外で約束を取り付けるなど久しぶりのことだったため、何かあるなとは思っていたのだが。
しまい込んでいた武器や防具を身に着けたルクスから冒険者を始めるといわれ、アルミンは思わず声を張り上げていた。
「ああ。ちょっとなりゆきでな。やりたいことができたんだ」
「やりたいことったってお前……本気、なのか?」
「ああ」
おどけた様子で肩をすくめるルクスに、アルミンは困惑しながら大きく息を吐いた。
「前も言ったけどよ。お前に冒険者は向いてねぇ。それはルクス自身が一番よくわかってるはずだろ?」
「ああ。それでもだ。それでも、俺はやりたいんだ。こんな俺でも、必要としてくれる人がいるからさ」
そういってまっすぐ見つめてくるルクスをみて、アルミンもとやかく言うのをあきらめた。
「なんだよその目は。……しゃあねぇな。で? お前のことだから報告だけってわけじゃないんだろ?」
少しばかり嬉しそうなアルミンを後目に、ルクスは真顔でとんでもないことを呟く。
「ああ。実は教えてもらいたいことがあってな」
「おお」
「極大魔石ってどうやって手に入れればいいんだ?」
「はぁ!?」
話は数日前にさかのぼる。
ルクスがカレラに協力を申し出た日。
つまり、男達からの襲撃があった次の日であるが、その日から数日間はルクスの身辺整理や準備に費やされていた。
ルクスは大道芸人をやっていたのだが、まずは師匠に大道芸人を辞める旨を伝えなければならなかった。ルクスは師匠のことを大層怖がっていたため、置手紙でお茶を濁してきたのだ。そして、芸をやる場所の許可も取り下げて、場所の使用料も返金してもらっていた。
あとは、いまだに捨てられなかった冒険者を志した時の装備の手入れを行ったり、必要なものを買い集めたりしていた。
そんな最中、ルクスはカレラに今後の方針を聞いていた。一緒に動くのだから当然である。むしろ、遅すぎるくらいであった。
ルクスは、カレラが次にどこに逃げるか、を聞いたつもりだったのだが、彼女から発せられた言葉はルクスの想定外のものだった。
「極大魔石を手に入れなければならない」
その言葉を聞いたとき、ルクスの目と口は、これでもかと見開かれていた。そして、その反応は至極当然のものである。
そもそも魔石とは、自然界に存在する魔素が結晶化したものだと言われている。魔力の原料である魔素の量が多ければ多いほど、密度が高ければ高いほど、その魔石の大きさは大きくなる。つまりは、強い魔力を内包する魔物の中にあったり、パワースポットのような魔素溜りと呼ばれる場所に生まれることが多い。
カレラが欲した極大魔石は、自然に生まれる魔石の中でも特別なものだ。
通常の魔石は、小石程度のものから掌大と持ち運べるものが多い。それでも、魔法具や儀式のための核、魔力の増幅装置としてとても有用である。だが、極大魔石というものは、優に数十センチは越え、国同士での戦争の局面を大きく揺るがす程の力を内包しているものだ。
当然、その大きさから、必要な魔素は膨大なものであるのだから、それを持っていた魔物や、魔力溜りは、生半可なものではない。それこそ、魔物に限って言えばだが、街を滅ぼすような力を持った魔物を討伐しなければ手に入らない。
それを、カレラは欲しい言う。ルクスは、聞かずとも何をやらなければならないか容易に想像ができた。
「それは、買えないの?」
「国レベルの財源がないと無理」
「依頼を出すとか?」
「買うのと同じ」
「じゃあ、どっかに落ちてるとか?」
「そんなにごろごろ落ちてるなら、この世はきっと消滅してなくなってる」
「はは……そうだよな」
そんなやり取りをして、自分の発言を後悔したのは余談である。
自分の知識と経験だけでは、どうやったとしても極大魔石を手に入れることは難しかった。だからこそ、冒険者の先輩であるアルミンに知恵をもらおうと考えたのだ。
ルクスが一通りの事情を話すと、アルミンは頭を抱えてうなだれた。そして、どこか諭すようにルクスへと語り掛ける。
「ねぇよ」
「え?」
「ねぇっていったんだよ。お前がもってる知識で十分。それこそ災害級の魔物を倒すか、人が生きていけないような魔境にでも行かない限り、極大魔石なんて手に入れられねぇよ」
素っ頓狂な声を上げたのは、冒険者であるアルミンだ。
アルミンはルクスに呼び出され、冒険者ギルドに来ていた。ルクスから酒盛り以外で約束を取り付けるなど久しぶりのことだったため、何かあるなとは思っていたのだが。
しまい込んでいた武器や防具を身に着けたルクスから冒険者を始めるといわれ、アルミンは思わず声を張り上げていた。
「ああ。ちょっとなりゆきでな。やりたいことができたんだ」
「やりたいことったってお前……本気、なのか?」
「ああ」
おどけた様子で肩をすくめるルクスに、アルミンは困惑しながら大きく息を吐いた。
「前も言ったけどよ。お前に冒険者は向いてねぇ。それはルクス自身が一番よくわかってるはずだろ?」
「ああ。それでもだ。それでも、俺はやりたいんだ。こんな俺でも、必要としてくれる人がいるからさ」
そういってまっすぐ見つめてくるルクスをみて、アルミンもとやかく言うのをあきらめた。
「なんだよその目は。……しゃあねぇな。で? お前のことだから報告だけってわけじゃないんだろ?」
少しばかり嬉しそうなアルミンを後目に、ルクスは真顔でとんでもないことを呟く。
「ああ。実は教えてもらいたいことがあってな」
「おお」
「極大魔石ってどうやって手に入れればいいんだ?」
「はぁ!?」
話は数日前にさかのぼる。
ルクスがカレラに協力を申し出た日。
つまり、男達からの襲撃があった次の日であるが、その日から数日間はルクスの身辺整理や準備に費やされていた。
ルクスは大道芸人をやっていたのだが、まずは師匠に大道芸人を辞める旨を伝えなければならなかった。ルクスは師匠のことを大層怖がっていたため、置手紙でお茶を濁してきたのだ。そして、芸をやる場所の許可も取り下げて、場所の使用料も返金してもらっていた。
あとは、いまだに捨てられなかった冒険者を志した時の装備の手入れを行ったり、必要なものを買い集めたりしていた。
そんな最中、ルクスはカレラに今後の方針を聞いていた。一緒に動くのだから当然である。むしろ、遅すぎるくらいであった。
ルクスは、カレラが次にどこに逃げるか、を聞いたつもりだったのだが、彼女から発せられた言葉はルクスの想定外のものだった。
「極大魔石を手に入れなければならない」
その言葉を聞いたとき、ルクスの目と口は、これでもかと見開かれていた。そして、その反応は至極当然のものである。
そもそも魔石とは、自然界に存在する魔素が結晶化したものだと言われている。魔力の原料である魔素の量が多ければ多いほど、密度が高ければ高いほど、その魔石の大きさは大きくなる。つまりは、強い魔力を内包する魔物の中にあったり、パワースポットのような魔素溜りと呼ばれる場所に生まれることが多い。
カレラが欲した極大魔石は、自然に生まれる魔石の中でも特別なものだ。
通常の魔石は、小石程度のものから掌大と持ち運べるものが多い。それでも、魔法具や儀式のための核、魔力の増幅装置としてとても有用である。だが、極大魔石というものは、優に数十センチは越え、国同士での戦争の局面を大きく揺るがす程の力を内包しているものだ。
当然、その大きさから、必要な魔素は膨大なものであるのだから、それを持っていた魔物や、魔力溜りは、生半可なものではない。それこそ、魔物に限って言えばだが、街を滅ぼすような力を持った魔物を討伐しなければ手に入らない。
それを、カレラは欲しい言う。ルクスは、聞かずとも何をやらなければならないか容易に想像ができた。
「それは、買えないの?」
「国レベルの財源がないと無理」
「依頼を出すとか?」
「買うのと同じ」
「じゃあ、どっかに落ちてるとか?」
「そんなにごろごろ落ちてるなら、この世はきっと消滅してなくなってる」
「はは……そうだよな」
そんなやり取りをして、自分の発言を後悔したのは余談である。
自分の知識と経験だけでは、どうやったとしても極大魔石を手に入れることは難しかった。だからこそ、冒険者の先輩であるアルミンに知恵をもらおうと考えたのだ。
ルクスが一通りの事情を話すと、アルミンは頭を抱えてうなだれた。そして、どこか諭すようにルクスへと語り掛ける。
「ねぇよ」
「え?」
「ねぇっていったんだよ。お前がもってる知識で十分。それこそ災害級の魔物を倒すか、人が生きていけないような魔境にでも行かない限り、極大魔石なんて手に入れられねぇよ」
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