Dランク水魔法使いが実家を追い出された後、真理を手に入れて死神と呼ばれる冒険者となる話

卯月 みつび

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第一章 死神と呼ばれた男

返り咲く、冒険者へと⑤

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 ルクスは、アルミンの言葉に悲鳴のような声をあげた。

「そんな! 何かいい方法はないのかよ!?」
「馬鹿いえ。あったら誰かがやってるよ! 手に入れられればそれこそ一生遊んで暮らしてもおつりがくるわ。馬鹿なこといってないで、さっさと師匠に謝ってきたらどうだ?」

 本気で心配したような顔でアルミンはルクスを見ていた。その視線に気まずさを感じたルクスは、思わず視線を明後日の方向に向けた。

「悪いことはいわねぇよ。そんな博打みたいなことやってたら命がいくつあっても足りねぇぞ? やめておけ。そして、一人前の大道芸人になればいいじゃねぇか」
「そういうわけにもいかないんだよ。それじゃあ、あの子の役に立てないんだ……」

 ルクスが漏らした呟きを、アルミンは耳ざとく拾った。

「ん……あの子?」
「いや! 違うんだっ! 別に、カレラがどうとか――」

 慌てた様子のルクスに、途端にアルミンはにやつきながら腕を組む。

「ははーん? どうにも様子がおかしいと思ったら、女に入れ込んでやがるんだな? 恰好つけたい年頃なのはわかるがよ、貢がされておわるぞ?」

 からかう様子のアルミンの言葉に、ルクスは顔を真っ赤にしながら頭をぐしゃぐしゃとかきむしっている。

「そんなんじゃないって……」
「はは! まあ、社会勉強もいいもんだ。お前がしたいようにやればいいさ。……だがな」

 調子の高かったアルミンの声が突如として低くなる。

「冒険者は遊びじゃねぇんだ。何があっても、死ぬんじゃねぇぞ」

 その鋭い視線に、一角の戦士の風格を感じ取ったルクスは、思わず背筋を伸ばして力強く頷いた。その様子を見ていたアルミンは途端に表情をくずして笑みを浮かべる。

「お前とは馬が合うんだ。飲み友達がいなくなったら寂しいからよ」
「わかってる」

 そういって、アルミンはおもむろに立ち上がった。

「もう話は終わりだな? そろそろ依頼があるんだ。何かあったらまた呼んでくれ」
「ああ。時間を取らせて悪かったな?」
「いいんだ。どっちかっていうと、ルクスが冒険者になるのは歓迎すべきことだからな。無茶はすんじゃねぇぞ」
「ありがとな」

 手をふって見送ると、途中で何かを思い出したように立ち止まるアルミン。すぐに踵を返してルクスのいるテーブルへと戻ってきた。

「そういやぁよ」
「どうした? 時間は大丈夫か?」
「ああ、すぐ行くがな? 小さい魔石を大量に集めて極大魔石を錬成したって噂を聞いたな。まあ、眉唾もんだけどよ」

 アルミンのもたらした情報に、思わずルクスは活気づく。

「本当か!?」
「あくまで噂だ、噂。裏付けは勝手にとれよな。じゃあ、今度こそ行くぞ」
「ああ、ありがとな! アルミン!」

 嬉しそうなルクスの声を背中に受けながら、アルミンはギルドを出ていった。それを見届けると、ルクスも立ち上がり駆け足で宿へと向かった。
 
 カレラの無茶な願いも、もしかしたら叶えられることができる。そのことを早く伝えたくて。
 
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