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第二章 冒険者の門出、差別、救済

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 僕とレイカは、予定通り次の日の夜には街にたどり着いた。

 その足でギルドに行くと、オルカさんが満面の笑みで迎えてくれる。



「エンド君! よかった、ちゃんと予定通り帰ってきてくれて!」

「こんばんは。思ったよりも大丈夫でした。ちゃんと依頼の品もばっちりです」

「さすがはエンド君ね! じゃあ、モグライラズの花、みせてもらっていいですか?」

「はい」



 僕が出した花をみると、オルカさんは大きくうなづいてくれた。



「それにしても本当にきれいに採取してくれますよね。ギルドとしても本当に助かります」

「エンド様なのだから当然です。むしろ、ちゃんとやらないほかの冒険者への指導が足りないのではないですか?」

「あら? 誰かと思えばレイカさんじゃないですか。どうしたんですか? もうレイカさんは帰ってもらっていいですよ? あ、エンド君はもう少し私とお話してましょうか」

「何を言っているのやら。あなたのほうこそ、ほかに仕事があるのでしょう? さっさとすっこんでいればいいんです」

「残念でした。私はもう勤務時間終わってるのよ。だから、誰と話そうが勝手なの」



 いつも通りのやり取りを始めたレイカとオルカさん。

 年が同じくらいだから仲がいいのかな? そういう気の置けない関係って少しうらやましい。



「二人はいっつも仲がいいよね」

「「よくないです!!」」



 声が重なるくらい気があるってことじゃないのかなぁ。

 いまだ言い争っている二人を後目に、僕はぼんやりと外を見ていた。



「そういえば、エンド君。最初に登録したッきり、ステータスの更新してないですよね。もうずいぶん依頼を重ねてきたんだから一度更新したらどうですか?」

「更新ですか?」

「ええ。ステータスを更新すればこちらとしても、頼める依頼が増えますから。ご自身の成長を感じることもできますし」

「そうなんだ。ならやってもら――」



 会話をしながらも、僕の視線は外にむいていた。

 どうしてか、気になったのだ。

 目が離せないというか、なんというか。



 すると、会話の途中、見覚えのある横顔が飛び込んできた。僕は、その顔をみた瞬間、思わず走り出していた。



「ごめん、レイカ、オルカさん!」

「へ? ちょっと――」

「エンド様、何が――」



 ギルドの窓を横切った横顔。

 おそらくこっちのほうに来てたはずなんだけど。



 そう思って僕はギルドを飛び出して走っていく。やはり見覚えのある外套が目に入る。

 僕は全速力でそこまで走ると、その腕をつかんだ



「ひっ――」

「大丈夫。僕だよ、ルルル」



 怯えが混じった顔を向けてきたルルルだったが、僕の顔を見るや否や、そのまんまるな目からこれでもかと涙があふれ出た。



「エンド! 村のみんなが! 村がぁ!!」



 飛び込んでくるルルルを抱きしめていると、うしろからレイカが追いついてくる。



「一体何を――その子は!?」

「うん。レイカ。とりあえず、宿に向かおう。話はそれからだね」



 何かが始まるかもしれないという予感。

 そんな胸騒ぎを感じつつ、僕は泣きじゃくるルルルをなだめながら宿に急いだ。

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