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第三章 スキルの力と金策と裏切り
二十四
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「があああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
掴みあいながら、ガルガさんは雄たけびを上げた。
そして、僕の手を弾き飛ばすと、すぐさま蹴り上げてくる。
僕は慌てて距離をとると、息も荒く唸っているガルガを遠目で見つめた。
強い。
とりあえず、僕が今まで出会った中では一番強い人かもしれない。
すくなくとも、力でも速度でも僕は負けているようだ。
現に、掴まれていた手が今も痺れている。
「逃げてんじゃねぇよ」
「いや、逃げますから」
そう言いながら、僕はさらに距離を取った。
ガルガさんの様子を窺いながらここにいた皆の様子に視線を向ける。
すると、細かい怪我人はいるようだが、重傷者や亡くなっている人はいないようだ。
心の中でほっと息を吐いていると、その隙を見つけたのだろう。
急激に速度を上げ、ガルガさんは僕にとびかかってきた。
爪と剣が交錯する。
「一体何のつもりだ? こいつらをかくまったってお前には何の得もねぇだろうが」
「得? 変なことを気にするんですね。僕はルルルが困ってたから助けただけです」
「だから、それが気持ち悪いっていってんだよぉ!!」
目にもとまらぬ速さとはこのことを言うのだろう。
まるで何本にも見える彼の腕が、あらゆる角度から僕に襲い掛かってくる。
僕は慌てて剣で応戦した。
「くっ――」
「おらおら! 早く本音を吐きやがれ!」
「本音って、さっきから言ってると思うんですが!?」
「まだ、白を切る気かよぉ!」
そういうと、ガルガさんは一度距離をとり、そして息を切らしながらこちらを睨みつけてくる。
ここまでくると言いがかりだ。
僕はさっきから本当のことしか言っていないのに。
きっと、彼の脳裏にはこびりついているんだろう。
自分達を蔑む人間の視線が。
受けてきた行いによる心の傷が。
だが、僕は今までガルガさんを傷つけてきた人とは違う。
それだけは、伝えないといけない。
そんな小さな決意をしていると、再びガルガさんが鋭利な爪を僕に突き立てようとしてきた。
「さっさと死ね! 人間!」
「ガルガさん! ちゃんと僕の話を聞いてください!」
「黙れ! そうやって聞いた話がいい話だったなんてことは、ありえねぇんだよ!」
やはり、攻撃は重くて速い。
が、そこで感じる違和感。
さっきよりも、遅い?
勘違いかと思ったが、なにより色々と考えられる現状がそれを表しているんじゃないだろうか。
思い返すと、ガルガさんは、距離を取る度に息を切らしていたように思う。
だとしたら――。
僕はガルガさんの猛攻に耐える。
所々爪を受けるが致命傷は避けた。
しばらくすると、汗がにじんでいるガルガさんは後ろへと飛びのいた。
――いまだ!
僕はここぞとばかりに距離を詰めた。
驚いたガルガさんは目を見開いているが、ここで逃がしちゃいけない。
僕だって疲れていないわけじゃない。
息を切らしていないわけじゃない。
だが、絶え間ない攻防を、今とめちゃいけない。
「ガルガさん!!」
「っ――!!??」
「僕はあなたのことをしりません。正直、皆を傷つけて、憎しみすら感じます」
僕は、息の続く限り剣を振るう。
「あなたにも、今まで人間に受けてきた傷があるのでしょう。それは否定しない。だけどっ――!!」
言葉すら帰ってこない。
見るからに消耗しているガルガさんを睨みつけながら、僕は自分の想いを吐き出した。
「ここにいる人達は僕が守る! それだけは、譲ってやらない!!」
僕のステータスの数値は高いが平均的だ。
きっと、ガルガさんには力と速度は負けているのかもしれない。だが、体力やそれを補う魔力だって、同じくらいの水準のはずだ。
だから、負けない。
全てを出し尽くせば、速さと力で負ける相手にも、僕は負けない!!
「一つだけ言わせてもらうけど!!」
いつの間にか、肩で息をしているガルガさん。
彼の腕は最早上がらず、僕はすかさず彼を力一杯蹴り飛ばした。
そして、倒れた彼の首元に剣を押し付ける。
「話くらい聞け!!」
こうして、本の世界に訪れた危機は、ひとまず沈静化できたのだった。
掴みあいながら、ガルガさんは雄たけびを上げた。
そして、僕の手を弾き飛ばすと、すぐさま蹴り上げてくる。
僕は慌てて距離をとると、息も荒く唸っているガルガを遠目で見つめた。
強い。
とりあえず、僕が今まで出会った中では一番強い人かもしれない。
すくなくとも、力でも速度でも僕は負けているようだ。
現に、掴まれていた手が今も痺れている。
「逃げてんじゃねぇよ」
「いや、逃げますから」
そう言いながら、僕はさらに距離を取った。
ガルガさんの様子を窺いながらここにいた皆の様子に視線を向ける。
すると、細かい怪我人はいるようだが、重傷者や亡くなっている人はいないようだ。
心の中でほっと息を吐いていると、その隙を見つけたのだろう。
急激に速度を上げ、ガルガさんは僕にとびかかってきた。
爪と剣が交錯する。
「一体何のつもりだ? こいつらをかくまったってお前には何の得もねぇだろうが」
「得? 変なことを気にするんですね。僕はルルルが困ってたから助けただけです」
「だから、それが気持ち悪いっていってんだよぉ!!」
目にもとまらぬ速さとはこのことを言うのだろう。
まるで何本にも見える彼の腕が、あらゆる角度から僕に襲い掛かってくる。
僕は慌てて剣で応戦した。
「くっ――」
「おらおら! 早く本音を吐きやがれ!」
「本音って、さっきから言ってると思うんですが!?」
「まだ、白を切る気かよぉ!」
そういうと、ガルガさんは一度距離をとり、そして息を切らしながらこちらを睨みつけてくる。
ここまでくると言いがかりだ。
僕はさっきから本当のことしか言っていないのに。
きっと、彼の脳裏にはこびりついているんだろう。
自分達を蔑む人間の視線が。
受けてきた行いによる心の傷が。
だが、僕は今までガルガさんを傷つけてきた人とは違う。
それだけは、伝えないといけない。
そんな小さな決意をしていると、再びガルガさんが鋭利な爪を僕に突き立てようとしてきた。
「さっさと死ね! 人間!」
「ガルガさん! ちゃんと僕の話を聞いてください!」
「黙れ! そうやって聞いた話がいい話だったなんてことは、ありえねぇんだよ!」
やはり、攻撃は重くて速い。
が、そこで感じる違和感。
さっきよりも、遅い?
勘違いかと思ったが、なにより色々と考えられる現状がそれを表しているんじゃないだろうか。
思い返すと、ガルガさんは、距離を取る度に息を切らしていたように思う。
だとしたら――。
僕はガルガさんの猛攻に耐える。
所々爪を受けるが致命傷は避けた。
しばらくすると、汗がにじんでいるガルガさんは後ろへと飛びのいた。
――いまだ!
僕はここぞとばかりに距離を詰めた。
驚いたガルガさんは目を見開いているが、ここで逃がしちゃいけない。
僕だって疲れていないわけじゃない。
息を切らしていないわけじゃない。
だが、絶え間ない攻防を、今とめちゃいけない。
「ガルガさん!!」
「っ――!!??」
「僕はあなたのことをしりません。正直、皆を傷つけて、憎しみすら感じます」
僕は、息の続く限り剣を振るう。
「あなたにも、今まで人間に受けてきた傷があるのでしょう。それは否定しない。だけどっ――!!」
言葉すら帰ってこない。
見るからに消耗しているガルガさんを睨みつけながら、僕は自分の想いを吐き出した。
「ここにいる人達は僕が守る! それだけは、譲ってやらない!!」
僕のステータスの数値は高いが平均的だ。
きっと、ガルガさんには力と速度は負けているのかもしれない。だが、体力やそれを補う魔力だって、同じくらいの水準のはずだ。
だから、負けない。
全てを出し尽くせば、速さと力で負ける相手にも、僕は負けない!!
「一つだけ言わせてもらうけど!!」
いつの間にか、肩で息をしているガルガさん。
彼の腕は最早上がらず、僕はすかさず彼を力一杯蹴り飛ばした。
そして、倒れた彼の首元に剣を押し付ける。
「話くらい聞け!!」
こうして、本の世界に訪れた危機は、ひとまず沈静化できたのだった。
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