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プロローグ
1...転生はやめておけ
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俺の名前は宇多川 士郎助。
若い頃に引きこもり始めてから、気がついたら、俺は既に38歳になっていた。
両親が元気なお陰で、衣食住に困ることはない。
もちろん心配はされるが、きつく責められる事も無い。
だが、俺だって、別に引きこもりになりたくてなったわけではない。
今の生活は楽しいか、と問われれば、正直、楽しくはない。
雨露をしのぐ家、温かいご飯に、温かい風呂、温かい寝床、ありがたい事だと感謝はするのだが、人間とは欲深いもので充足感は少ない。
親を脅し、時には殴って金を奪い、パチンコ、風俗、酒場などに通うような底無しのクズでは無い。
ゆえに、俺の一日は平坦だ。
朝起きて、ゲーム、漫画、アニメなど見て日中を過ごして、夜が来たら眠る。
オナニーは週に何回か程度で、若い頃に比べて精力も落ちてきたな、とは思う。
ちなみに、外に出ることがないので、今だに童貞だ。
このまま、この部屋の中で年老いて死んでいくのかと思うと、切なさと寂しさで辛い。
俺は椅子に座りながら、今夜も窓を開けて、中途半端な都会の星空をぼんやりと眺めている。
最近はWEB小説で異世界転生が大流行だ。
読む分には楽しく読んでいるが、内心ではある部分に関してのみ「なんだかな」と思っている。
テンプレだからと、トラックに引かれました、死にました、神様がチートくれました、と気軽に書いているのだろうが、俺は危険な思想だと思うのだ。
だって、死ねば良い所に好条件で生まれ変わるなんて、死ねば極楽に行けると言って昔に大流行した危険な教えと同じではないか。
死んだ先に極楽があるのなら、生まれてこなければ良いはずだ。
つまり、生まれてくることには何らかの意味があるのだ。
もし極楽から追い出されたのだとしたら、何もせずに死んで極楽に帰れるはずもなかろう。
宗教的な難しい事が分からなくとも、道理から考えてみてアホの俺でもこれぐらいは分かる。
だが、何をすれば良いのかは、今だに分からない。
ただ、死ねば楽になる、というのだけは違うと信じている。
しかし、そういう確信めいたものを持たない人もいることだろう。
だからこそ、俺みたいにぼんやりした仲間に対して、死後の楽園世界に誘う様な夢物語を量産するのは心配なのだ。
心配なのだが、俺のような引きこもりが一人で心配した所でどうしようもない。
どうせ、今も、死ねば異世界でハッピーな物語が量産されている。
どうか、誘蛾灯に飛び込むような事はしないで欲しいなと願うばかりだ。
せめて、自分がそのまま移動して頑張る「異世界転移」にして欲しいものだよ。
そんな事を考えていると、次の瞬間、俺の脳内に無機質な棒読み台詞が響いていた。
《……コードSSS、重力波形B、ニュートリノ群が対象物通過による目標反射波を観測》
俺は「は?」と呟きながら部屋をキョロキョロと見回すが、不気味な幻聴は止まらない。
《……再確認の為、探査波を再発信、、、3、、、2、、、1、、、素粒子通過、目標反射波確認。対象と記録データの照合を開始、、、一致率99.9999999999999%》
「おいおい、何だよ怖いよ、何だよ」
《……並列宇宙V01897563B214556A78Q9Z、対象の魂を確認。位置を特定。これより異世界転移フェーズへと移行します》
俺は、「異世界転移」という言葉に反応した。
「――は!? ちょ、まてまて、急に勝手に何を言っているんだ!?」
しかし、俺の抗議も虚しく、俺が座る椅子の真下に黄金色に輝く魔法陣の様なものが現れた。
「うわ!? 嘘だろ!? 止めて止めて!! 止めてくれ!!」
美しい黄金の魔法陣がぐるぐると回転を始める。
《……登録プログラムに従い、対象者に祝福の加護を注入開始、、、成功、、、続いて異世界転移を実行します》
「だから、止めてく……」
シロスケの声はそこで途絶え、室内には誰の影も無かった。
若い頃に引きこもり始めてから、気がついたら、俺は既に38歳になっていた。
両親が元気なお陰で、衣食住に困ることはない。
もちろん心配はされるが、きつく責められる事も無い。
だが、俺だって、別に引きこもりになりたくてなったわけではない。
今の生活は楽しいか、と問われれば、正直、楽しくはない。
雨露をしのぐ家、温かいご飯に、温かい風呂、温かい寝床、ありがたい事だと感謝はするのだが、人間とは欲深いもので充足感は少ない。
親を脅し、時には殴って金を奪い、パチンコ、風俗、酒場などに通うような底無しのクズでは無い。
ゆえに、俺の一日は平坦だ。
朝起きて、ゲーム、漫画、アニメなど見て日中を過ごして、夜が来たら眠る。
オナニーは週に何回か程度で、若い頃に比べて精力も落ちてきたな、とは思う。
ちなみに、外に出ることがないので、今だに童貞だ。
このまま、この部屋の中で年老いて死んでいくのかと思うと、切なさと寂しさで辛い。
俺は椅子に座りながら、今夜も窓を開けて、中途半端な都会の星空をぼんやりと眺めている。
最近はWEB小説で異世界転生が大流行だ。
読む分には楽しく読んでいるが、内心ではある部分に関してのみ「なんだかな」と思っている。
テンプレだからと、トラックに引かれました、死にました、神様がチートくれました、と気軽に書いているのだろうが、俺は危険な思想だと思うのだ。
だって、死ねば良い所に好条件で生まれ変わるなんて、死ねば極楽に行けると言って昔に大流行した危険な教えと同じではないか。
死んだ先に極楽があるのなら、生まれてこなければ良いはずだ。
つまり、生まれてくることには何らかの意味があるのだ。
もし極楽から追い出されたのだとしたら、何もせずに死んで極楽に帰れるはずもなかろう。
宗教的な難しい事が分からなくとも、道理から考えてみてアホの俺でもこれぐらいは分かる。
だが、何をすれば良いのかは、今だに分からない。
ただ、死ねば楽になる、というのだけは違うと信じている。
しかし、そういう確信めいたものを持たない人もいることだろう。
だからこそ、俺みたいにぼんやりした仲間に対して、死後の楽園世界に誘う様な夢物語を量産するのは心配なのだ。
心配なのだが、俺のような引きこもりが一人で心配した所でどうしようもない。
どうせ、今も、死ねば異世界でハッピーな物語が量産されている。
どうか、誘蛾灯に飛び込むような事はしないで欲しいなと願うばかりだ。
せめて、自分がそのまま移動して頑張る「異世界転移」にして欲しいものだよ。
そんな事を考えていると、次の瞬間、俺の脳内に無機質な棒読み台詞が響いていた。
《……コードSSS、重力波形B、ニュートリノ群が対象物通過による目標反射波を観測》
俺は「は?」と呟きながら部屋をキョロキョロと見回すが、不気味な幻聴は止まらない。
《……再確認の為、探査波を再発信、、、3、、、2、、、1、、、素粒子通過、目標反射波確認。対象と記録データの照合を開始、、、一致率99.9999999999999%》
「おいおい、何だよ怖いよ、何だよ」
《……並列宇宙V01897563B214556A78Q9Z、対象の魂を確認。位置を特定。これより異世界転移フェーズへと移行します》
俺は、「異世界転移」という言葉に反応した。
「――は!? ちょ、まてまて、急に勝手に何を言っているんだ!?」
しかし、俺の抗議も虚しく、俺が座る椅子の真下に黄金色に輝く魔法陣の様なものが現れた。
「うわ!? 嘘だろ!? 止めて止めて!! 止めてくれ!!」
美しい黄金の魔法陣がぐるぐると回転を始める。
《……登録プログラムに従い、対象者に祝福の加護を注入開始、、、成功、、、続いて異世界転移を実行します》
「だから、止めてく……」
シロスケの声はそこで途絶え、室内には誰の影も無かった。
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