73 / 158
第三章
2.大魔法祭 その③:準々決勝
しおりを挟む
円形闘技場のフィールド内には、四角く区切られた試合場が幾つも設置されている。係員に指定された中央の試合場に駆け登ると、囃し立てるような歓声とざっくばらんな拍手が出迎えてくれた。ホームだけあって、その大部分は私に向けられたものだ。アウェーを感じた正面の対戦相手が露骨に顔をしかめた。
対戦相手は、前回の大魔法祭では見なかった顔だ。さっき確認した試合表によると所属はガリア帝国で名はレティシア、中等部二年生だという。つまり、隣の魔族――首無しの妖精、霊騎士とは契約したばかりであるにも関わらず、三年生をぶっ倒して出場してきた訳だ。そして、一回戦でも見事に勝利を収めた。
カリキュラムはどこの国もそう大差ないと聞くから、最速で【契約召喚】をしても連携を磨く時間は二ヶ月かそこら。だから、きっと強みはそこじゃない。
では、契約者のレティシアに何の強みがあるかというと、その姿勢や体重移動からは全く才気を感じなかった。魔力の気配も凡庸、【身体強化】も上位層と比べれば見劣りする。まだ見ぬ魔法の腕は或いは、といった感じだった。
一方、その隣を歩く霊騎士は立ち居振る舞いから覇気に満ちあふれている。
(強いのは霊騎士か。なら、狙うべきは……)
審判が私と対戦相手を試合場の真ん中で引き合わせ、互いの武器に不審なところがないか確認させる。
レティシアは、カラギウスの剣を二本と杖を一本差し出してきた。彼女が剣と杖を一本ずつ使い、霊騎士には剣一本だけを持たせるのだろう。魔力の扱いに長けた魔族なら、簡単な競技用魔法ぐらいは杖の助けを借りずとも構築できる。
その構成を見た私は、持ってきた杖を「やっぱり要らない」と審判に押し付け、二本のカラギウスの剣だけをレティシアに差し出した。
「アンタ、レティシアよね? 私はリン。よろしく」
「……ええ、良い試合にしましょう」
武器の確認が終わり次第、互いに武器を返して握手をする。可能なら使い魔同士も握手するのがマナーだが、マネは触れると相手を溶かしてしまうのでしない。
そして、互いの開始線にまで下がる。
「レティシア、一つ良いことを教えてあげるわ」
「え?」
開始線から話しかけると、レティシアはきょとんとした。こんな時に何を、と顔に書いてある。
「私の戦い方はもう知っているのでしょう?」
「そりゃもう……去年、ウチの先輩も世話になったもの」
怪訝そうな顔をしながらも、こちらの話に耳を傾けるレティシア。なんとなく感じた印象通り素直な良い子だ。
――実に与し易い。
試合場を降りてゆく審判の様子を横目に見ながら、私は会話のテンポを微妙に調整する。
「防御、しといた方が良いわよ」
「はっ?」
「私、試合開始と同時にアンタの方へ突っ込むから」
「――耳を貸すな、レティシア! 試合が始まるぞ!」
背後に控えていた霊騎士の方が私の目論見に気づいたようだが、もう遅い。今のやり取りで、レティシアの視線は一瞬だけ背後を探り、思考も一瞬だけ乱れた。
「始め!」
試合開始と同時――いや、若干フライング気味に解放で突っ込み、宣言通りにレティシアの顔面めがけて飛び蹴りをカマす。不意をつかれ反応が遅れたレティシアは、防御こそ間に合ったものの無様にバランスを崩して試合場の床を転がってゆく。
「くっ――レティシア!」
すぐさま、霊騎士が私の追撃を防ぐようにカバーに入ってくる。
勝負の主体はあくまで魔法使いなので、使い魔を幾ら斬ろうがポイントにはならない。
だが、使い魔を無視して魔法使いだけを狙っても、横合いからちょっかいをかけられ続けて鬱陶しいだけ。故に、姑息に稼いだこの僅かな時間を使って、まず霊騎士の方から仕留める。
フェイントを駆使して霊騎士へ斬りかかるも、これは予想通りに対応される。
(なら、こういうのはどうかしら?)
私が持ち込んだ剣は二本。しかし今、私の手にあるのは一本だけ。
さて、もう一本は今どこにあるのでしょう?
「――な、なんだとっ!?」
答えは――足元。
マネに持たせておいたもう一本の剣に両脛を斬りつけられ、ガクッとバランスを崩す霊騎士。かなりの鍛錬を積んでいることは伺えるが、型にハマった剣術しか相手にしてこなかったのだろう。【契約召喚】に応じるような〝魔界〟の住民は若輩者が多いそうだから。
しかし、こっちはまだまだ打つ手を考えていたというのに……張り合いがない。
「……『天才』、か……なるほど……!」
納得と諦観が綯い交ぜになったような表情を浮かべる霊騎士にダメ押しの一太刀を浴びせ、私は崩れ落ちる彼の脇をスルリと抜けてレティシアに踊りかかった。
試合場の場外ぎりぎりのラインで踏ん張ってどうにか姿勢を整え直したレティシアが私を迎え撃たんと剣と杖を構える。しかし、その構えの拙さからして分かるように彼女の技量は私に遠く及ばない。
「押し留めろ――【魔力弾】!」
それでも怯まず魔法を打ってくるのは良い。とても見込みがあると思う。身のこなしは微妙だけど、このまま研鑽を積めばいつか私程度なら追い越してしまうんじゃないか? 霊騎士におんぶにだっこで勝ち上がってきた訳ではないことを伺わせる素晴らしい対応速度だった。
(けれど――今は私の方が上よ)
ちょっとした足運びで魔法の狙いを外し、解放で距離を詰めて剣を振るう。レティシアは防御姿勢を取ったが、私の剣はその防御を絡め取るように彼女の魂を引き裂いた。
「逆袈裟」
この時、解放の勢い余って場外にまで出てしまったが何も問題はない。既に、勝負は決しているからだ。
――斬った。
その確信に遅れて事実が伴う。背後でドサリとレティシアが倒れる音が聞こえたかと思うと、どこからともなく歓声がぶちあがった。
「勝者――リン!」
堂々と響き渡る審判の勝ち名乗りを聞きながら、私は観客席最上段で不敵な笑みを浮かべる王へ向けて、慇懃無礼なほどにゆっくりと立礼を捧げた。
選手入場用の通路に戻り、一息を入れる。
「ふぅー……ね、勝ったでしょ」
「そりゃあな、オレ様も付いてることだし。だが、それも絶対では――」
「――分かってるっての。それでも、私は勝つのよ」
覚悟や心構えの領域なのだが、どうもその辺がマネには感覚的に通じない。どう説明したものかとぼんやり考えていると、前方から他国の学院制服を着た女性がやってきた。
「随分と自信過剰じゃあないか、リン」
会話を聞かれていたのか、嫌味たっぷりの台詞を言われてしまい、ちと恥ずかしい。
「アンタ……スタテイラ、だっけ?」
イリュリア王国の南の隣国、アルゲニア王国の剣術部門代表選手だ。私と同じ三年生で、前回の大魔法祭では一回戦で彼女と当たった。言うまでもなく、勝ったのは私だ。
この選手入場用の通路に居るということは、彼女はこれから試合に出場するところなのだろう。だから、そんな彼女のために私は道を開けてやったが、スタテイラは試合場へは向かわずその場に留まる姿勢を見せた。
「……なに? なんか私に用でもあるの?」
「いや、黙っておくのはフェアじゃあない……と思ってね」
「はあ?」
くつくつと忍び笑いを漏らしながら、スタテイラはピッと後方を指差した。
「お前の控室にネズミが入り込んだようだぞ」
「何ですって……?」
選手の控室は、国ごとに離された部屋を使っている。過去、参加国同士の確執などによりトラブルが発生した為、このような処置が取られている。その上、私は前回の優勝者かつ開催地の選手ということもあって中々に好待遇を受けており、グレードの高い個室を与えられていた。
警備の者もいるので、そういう嫌がらせが発生する可能性は低く見ていたのだが……よもやよもやだ。
「……そう、知らせてくれてありがとう。私、次の試合までは時間があるから観戦にでも行こうと思ってたところなの。早めに知れて助かったわ」
「ふんっ……」
素直に礼を言うと、なぜかスタテイラは急に不機嫌になった。
「私がその下手人だとは考えなかったのか?」
「そうなの?」
暗に「違うでしょう?」と聞くとスタテイラはますます不機嫌になる。
(気難しっ!)
まあ、スタテイラの気性はどうでもいい。それより、どれだけ荒らされたかを確認しに行かなければ。そう思って私が歩みを再開させ、スタテイラと擦れ違った時、彼女がこう呟いた。
「――勝つのは私だ」
驚いて振り向くと、彼女もまた歩き出しており、既に声をかけるのを戸惑うほどに遠ざかっていた。
(なるほど、私への対抗心が根底にあったのね)
そういう負けん気は好ましく思う。しかし――。
「イキの良い奴がいるなぁ。こりゃ強敵登場なんじゃねえか?」
「それはどうかしら」
「ん、どういう意味だ?」
「まぁ……今は控室に戻りましょ」
マネの質問には答えず、私は足早に控室へ向かった。
近付くにつれ、がやがやとした喧騒が聞こえてくるようになり、何事かと思えば私の控室の前に人だかりが出来ていた。
その中に意外な顔があった。彼女――『聖歌隊』のナタリーさんの方も私に気付き、人だかりから抜け出てくる。
「あら、嬢ちゃんじゃないか」
「……また、顔を合わせてしまいましたね。ナタリーさん」
別れ際、もう顔を合わせることがないよう祈ったというのに、ものの一週間で再会してしまった。向こうもそれを覚えていたのか、気恥ずかしそうに笑った。
「はっはっは! 長い人生、そういうこともある!」
人だかりの向こうに見える控室の中では、私の荷物が散乱していた。魔法的な気配はないので、物理的な手段で撒き散らしただけだろう。
ただ、そのどこにもアメ玉が見当たらない。持ち去られたのだろうか?
「しっかし、災難だったねぇ。控室を荒らされるなんて」
「あー、まあ、大丈夫ですよ。代えのきかないようなものはなかったと思いますので。それより、ナタリーさんはどうしてここに? この前の口振りだと、私と顔を合わせるかもしれないベレニケへ来る用事があったようには思えなかったのですが……」
「ご明察。……いやぁ、大したことじゃないよ。ここに来る筈だった同僚が体調を崩しちまって、人手が足りなくなっちまったんだ。それで、ちょうど暇してたアタシが代わりに引っ張り出されてきたって訳さ」
ナタリーさんはうんざりした表情で肩をすくめた。その仕草や表情は、どこかか嘘っぽく見えた。
この時、ナタリーさんが腕を挙げたことで、その右手に収まるものに眼が行った。見たことのない小型の魔道具だ。懐中時計のようなサイズ感で、中心にはコンパスの針のような棒が何かを探るように絶えず揺れ動いている。
「ナタリーさん、それは?」
「これかい? 異端の獣を炙り出す、さしずめ神の目さね。月を蝕むものの放つ魔力は、魔法使いのそれとはかなり異なることは知っているだろう?」
「じゃあ、それは『魔力偏差検出器』の新型なんですか。今はこんなに小型化しているんですね」
「例の天才さまの作品じゃなく、どこぞの無名技師が作った廉価版だがね。この小ささと携行性だけは評価してもいい」
すると、神の目とやらがチリチリと音を鳴らして反応をし始めた。そして、針がゆっくりと私の方を指し示す。偶然だろうが、なんだか私が月を蝕むものだと言われているようで決まりが悪い。
「……この闘技場にも紛れ込んでいるようですね」
「そうだ、控室を荒らしたのも獣の仕業と見ているが……これが中々捕まらない。嬢ちゃん、不安かい? 話は聞いてるよ。〝狂王〟を相手にあんな大見得をきったんだ、これぐらいの妨害は覚悟の上だろう?」
「いえ、その時は全然なにも考えてませんでした。――しかし、問題ありません。どのような妨害を受けようと私は勝ちますよ」
「へぇ……大した自信だ」
ナタリーさんは眼を細めた。その眼に宿るは、猜疑の光。
(もしかして……私、疑われている?)
確かに月を蝕むものとは妙な縁がある。その上、淀みなく質問に答えてしまったものだから、私が民宗派とグルでやった自作自演だから怖がっていないとでも勘違いされてしまったのだろうか。
実際に代えのきかないものはなかったのだが、さして動揺していなかったのも悪材料になってしまったか。これは早めに訂正しておかなくては。
「自信ではなく、決意です。私には才能がある。その才能が、私の敗北を許さないのです」
「……いやぁね、嬢ちゃんを疑ってる訳じゃないんだよ。ただ、やっぱり一人だと襲われる危険もあるだろう? 通常の警備じゃ不十分なことは神の目に反応があることを見ても明らかだ。嬢ちゃんは大事な出場選手なんだし、次の試合までアタシが護衛しよう」
それで疑いが晴れるのなら、と私がその申し出を受け入れようとした時、ナタリーさんの背後から新たに祭服を着た男性が現れた。
「これこれ、ナタリー審問官。その辺でお止めなさい」
「ラ、ラビブ神父様!」
ラビブ神父? 聞いたことのない名前だが、神父というのは一介の審問官よりは偉いのだろうか。ナタリーさんは異様に畏まった態度になっていた。
「見に来て、おられたのですか」
「ええ、まあ。それよりなんです? 試合前の選手に迷惑をかけて。疑うのは大魔法祭が終わった後でもよろしい!」
「あ、ちょっと……」
ラビブ神父は、戸惑うナタリーさんの腕を強引に引っ張る。そして、去り際にお茶目なウィンクを残し、二人は角の向こうへ消えていった。
誰だか知らないが助かった。国教会の神父ということは私と同じ王党派だろうし、気を利かせてくれたのだろうか。
ほっとしたのも束の間、今度はまた別の人物が私をお呼びになる。
「リン君!」
人だかりを割って控室の中から現れたのは、高等部の学院制服に身を包んだベンだ。
「落ち着いて聞いてくれ……アメ玉が全部なくなっている!」
「はあ、ヘレナにでも買い付けに行かせなさい」
周回遅れだ。そんなことにはナタリーさんと会話している時にとっくに気付いている。というか、私より落ち着くべきはベンの方だろう。取り敢えず、ハンカチを渡してその滝のような汗を拭かせた。
「――みんな聞いて、犯人は『聖歌隊』が捜索してくれてるそうよ! はい、役に立たない野次馬は散った散った!」
私は邪魔な人だかりを解散させて控室に入り、床に散乱するものの中から使えそうなものを拾って状態を確かめる。
「ふーん、置いといたアメ玉が全部綺麗になくなってるわね。犯人は私のことをよく知ってるみたい」
「どうして、そう冷静なんだ! アメには予備があるってのかい!?」
「いえ、控室に置いといたのがその予備全部だったわ。今あるのは緊急時用にこっそり隠し持ってた五コだけよ」
そう言って、私は学院制服を改造して増設したポケットからアメ玉を見せる。これを試合で使うつもりはなかった。それは流石にズルだと思う。しかし、通路などでの嫌がらせや襲撃を警戒して隠し持っていた。
「五コ!? たったそれだけかい!? 頼むから、もっと焦ってくれないか!」
「おい、伊達男。コイツには何言ったって無駄だぜ。もうさんざオレ様が言ってんのに聞かねえんだからよォ」
煩い外野の声を無視して、手早く荷物の整理を終える。どうやら、無くなっているものはアメ玉の予備だけで、他のものは散らかされているだけのようだ。一部のものは破損していたが、それも使用に問題ない範囲のものばかりである。
(狙いは最初からアメ一点……)
計画的な犯行なのは確かだ。しかし、単純に諸侯派あるいは諸侯民宗派の犯行として良いものか。私はそこのところが引っかかっていた。どうも最近、私には敵が多いみたいだから。
「――ともかく! アメ玉の調達は僕に任せてくれ。ヘレナ君と相談して、集められるだけ集めてこよう。君は何も心配することはないからね」
「へえ。で、その集めたアメはどこに置いとくの?」
「考えたけど……やはり、この控室に置いておくしかないだろうね。立地的に一番守りやすい控室がここなんだ。ここで駄目なら他でも駄目さ。一度抜かれた警備に関しては僕が守ることでカバーする」
「そりゃどうも。良いんじゃない? そんな感じで」
ベンがここを守ってくれるということなので、私は纏めた荷物を再度、その場に置き直して踵を返した。
「じゃ、私は次の試合まで時間あるし、観客席にでも行って試合観戦と洒落込んでくるわ」
「……分かったよ。大丈夫なんだね? リン」
「ええ。そういうアンタも、後は任せたわよ? ベン」
ようやくベンも落ち着きを取り戻したようだったので、私は彼を信頼してその場を後にした。
全く、心配性な奴だ。そういうのはポーラにでもしてやればいいのに。
歓声轟く観客席に上がると、今まさにもっとも手前に見える試合場で剣術の試合が決着するところだった。
「It's so beautiful……驚いた。神聖エトルリアのリウィアが負けたわ」
たった今、剣術部門の優勝候補であり、前回の大魔法祭では決勝で鎬を削った神聖エトルリア帝国のリウィアが負けた。
それも完膚なきまでに、美しく……。
リウィアだって決して弱くはない筈なのに、倒れたリウィアに一瞥もせず退場してゆく勝者の後ろ姿には余裕すら感じられた。
勝ったのはパルティア王国のファラフナーズ。三年生だが、これが初出場。
使い魔の力で一気に勝ってきたような私やレティシアと違い、着実に地力を付けて勝ち上がって来たことが伺える戦いだった。使い魔との連携、太刀筋、魔力操作技術、魔法構築速度……全てが高水準。
他の実力者――例えば〝残雪〟の二つ名を冠するグィネヴィアや〝剛拳〟のロクサーヌのような派手な存在感こそないものの、既に周囲の見る目ある何人かはファラフナーズの技量の高さに気付いた様子だ。
「決勝の相手はファラフナーズで決まりね」
「その前に準決勝の心配は良いのか? ほら、さっきのスタテイラとか!」
「良い。それより、あっちでやってる槍術の試合でも見ましょ。ほら、シンシアが頑張ってるわよ」
シンシアは、強い=偉いと短絡的に信奉する絶望的に頭の足りない動物的な奴だが、こと戦闘に際してその勘は侮れない。今も使い魔の霊猪と打ち合わせなんてしていないだろう本能的な連携をこなし、自由奔放な動きで対戦相手を翻弄している。たぶん、この試合は勝つだろう。
「シンシアだぁ? あいつの戦いなんていつでも見れんだろ。どうせ勝つしよぉ。それよか、今は剣術の方を見とけって。スタテイラがなんか変なことやってるぜ」
「変なこと?」
マネの言葉に興味を惹かれて、しぶしぶ一番遠くの試合場でやっている剣術の試合の方に目を凝らすと、確かにスタテイラは変なことをしていた。
「へえ……じゃあ、準決で当たるのはスタテイラの方かもね」
「だろ? 見といた方が良いぜ」
「いえ、その必要はないわ」
確かに想像とは少し違った成長をしていた。しかし、それは私に何か特別な感情を抱かせるほどのものではなかった。大体の動きは既に前日の練習時に見切っている。
スタテイラは、去年より弱くなっている。
対戦相手は、前回の大魔法祭では見なかった顔だ。さっき確認した試合表によると所属はガリア帝国で名はレティシア、中等部二年生だという。つまり、隣の魔族――首無しの妖精、霊騎士とは契約したばかりであるにも関わらず、三年生をぶっ倒して出場してきた訳だ。そして、一回戦でも見事に勝利を収めた。
カリキュラムはどこの国もそう大差ないと聞くから、最速で【契約召喚】をしても連携を磨く時間は二ヶ月かそこら。だから、きっと強みはそこじゃない。
では、契約者のレティシアに何の強みがあるかというと、その姿勢や体重移動からは全く才気を感じなかった。魔力の気配も凡庸、【身体強化】も上位層と比べれば見劣りする。まだ見ぬ魔法の腕は或いは、といった感じだった。
一方、その隣を歩く霊騎士は立ち居振る舞いから覇気に満ちあふれている。
(強いのは霊騎士か。なら、狙うべきは……)
審判が私と対戦相手を試合場の真ん中で引き合わせ、互いの武器に不審なところがないか確認させる。
レティシアは、カラギウスの剣を二本と杖を一本差し出してきた。彼女が剣と杖を一本ずつ使い、霊騎士には剣一本だけを持たせるのだろう。魔力の扱いに長けた魔族なら、簡単な競技用魔法ぐらいは杖の助けを借りずとも構築できる。
その構成を見た私は、持ってきた杖を「やっぱり要らない」と審判に押し付け、二本のカラギウスの剣だけをレティシアに差し出した。
「アンタ、レティシアよね? 私はリン。よろしく」
「……ええ、良い試合にしましょう」
武器の確認が終わり次第、互いに武器を返して握手をする。可能なら使い魔同士も握手するのがマナーだが、マネは触れると相手を溶かしてしまうのでしない。
そして、互いの開始線にまで下がる。
「レティシア、一つ良いことを教えてあげるわ」
「え?」
開始線から話しかけると、レティシアはきょとんとした。こんな時に何を、と顔に書いてある。
「私の戦い方はもう知っているのでしょう?」
「そりゃもう……去年、ウチの先輩も世話になったもの」
怪訝そうな顔をしながらも、こちらの話に耳を傾けるレティシア。なんとなく感じた印象通り素直な良い子だ。
――実に与し易い。
試合場を降りてゆく審判の様子を横目に見ながら、私は会話のテンポを微妙に調整する。
「防御、しといた方が良いわよ」
「はっ?」
「私、試合開始と同時にアンタの方へ突っ込むから」
「――耳を貸すな、レティシア! 試合が始まるぞ!」
背後に控えていた霊騎士の方が私の目論見に気づいたようだが、もう遅い。今のやり取りで、レティシアの視線は一瞬だけ背後を探り、思考も一瞬だけ乱れた。
「始め!」
試合開始と同時――いや、若干フライング気味に解放で突っ込み、宣言通りにレティシアの顔面めがけて飛び蹴りをカマす。不意をつかれ反応が遅れたレティシアは、防御こそ間に合ったものの無様にバランスを崩して試合場の床を転がってゆく。
「くっ――レティシア!」
すぐさま、霊騎士が私の追撃を防ぐようにカバーに入ってくる。
勝負の主体はあくまで魔法使いなので、使い魔を幾ら斬ろうがポイントにはならない。
だが、使い魔を無視して魔法使いだけを狙っても、横合いからちょっかいをかけられ続けて鬱陶しいだけ。故に、姑息に稼いだこの僅かな時間を使って、まず霊騎士の方から仕留める。
フェイントを駆使して霊騎士へ斬りかかるも、これは予想通りに対応される。
(なら、こういうのはどうかしら?)
私が持ち込んだ剣は二本。しかし今、私の手にあるのは一本だけ。
さて、もう一本は今どこにあるのでしょう?
「――な、なんだとっ!?」
答えは――足元。
マネに持たせておいたもう一本の剣に両脛を斬りつけられ、ガクッとバランスを崩す霊騎士。かなりの鍛錬を積んでいることは伺えるが、型にハマった剣術しか相手にしてこなかったのだろう。【契約召喚】に応じるような〝魔界〟の住民は若輩者が多いそうだから。
しかし、こっちはまだまだ打つ手を考えていたというのに……張り合いがない。
「……『天才』、か……なるほど……!」
納得と諦観が綯い交ぜになったような表情を浮かべる霊騎士にダメ押しの一太刀を浴びせ、私は崩れ落ちる彼の脇をスルリと抜けてレティシアに踊りかかった。
試合場の場外ぎりぎりのラインで踏ん張ってどうにか姿勢を整え直したレティシアが私を迎え撃たんと剣と杖を構える。しかし、その構えの拙さからして分かるように彼女の技量は私に遠く及ばない。
「押し留めろ――【魔力弾】!」
それでも怯まず魔法を打ってくるのは良い。とても見込みがあると思う。身のこなしは微妙だけど、このまま研鑽を積めばいつか私程度なら追い越してしまうんじゃないか? 霊騎士におんぶにだっこで勝ち上がってきた訳ではないことを伺わせる素晴らしい対応速度だった。
(けれど――今は私の方が上よ)
ちょっとした足運びで魔法の狙いを外し、解放で距離を詰めて剣を振るう。レティシアは防御姿勢を取ったが、私の剣はその防御を絡め取るように彼女の魂を引き裂いた。
「逆袈裟」
この時、解放の勢い余って場外にまで出てしまったが何も問題はない。既に、勝負は決しているからだ。
――斬った。
その確信に遅れて事実が伴う。背後でドサリとレティシアが倒れる音が聞こえたかと思うと、どこからともなく歓声がぶちあがった。
「勝者――リン!」
堂々と響き渡る審判の勝ち名乗りを聞きながら、私は観客席最上段で不敵な笑みを浮かべる王へ向けて、慇懃無礼なほどにゆっくりと立礼を捧げた。
選手入場用の通路に戻り、一息を入れる。
「ふぅー……ね、勝ったでしょ」
「そりゃあな、オレ様も付いてることだし。だが、それも絶対では――」
「――分かってるっての。それでも、私は勝つのよ」
覚悟や心構えの領域なのだが、どうもその辺がマネには感覚的に通じない。どう説明したものかとぼんやり考えていると、前方から他国の学院制服を着た女性がやってきた。
「随分と自信過剰じゃあないか、リン」
会話を聞かれていたのか、嫌味たっぷりの台詞を言われてしまい、ちと恥ずかしい。
「アンタ……スタテイラ、だっけ?」
イリュリア王国の南の隣国、アルゲニア王国の剣術部門代表選手だ。私と同じ三年生で、前回の大魔法祭では一回戦で彼女と当たった。言うまでもなく、勝ったのは私だ。
この選手入場用の通路に居るということは、彼女はこれから試合に出場するところなのだろう。だから、そんな彼女のために私は道を開けてやったが、スタテイラは試合場へは向かわずその場に留まる姿勢を見せた。
「……なに? なんか私に用でもあるの?」
「いや、黙っておくのはフェアじゃあない……と思ってね」
「はあ?」
くつくつと忍び笑いを漏らしながら、スタテイラはピッと後方を指差した。
「お前の控室にネズミが入り込んだようだぞ」
「何ですって……?」
選手の控室は、国ごとに離された部屋を使っている。過去、参加国同士の確執などによりトラブルが発生した為、このような処置が取られている。その上、私は前回の優勝者かつ開催地の選手ということもあって中々に好待遇を受けており、グレードの高い個室を与えられていた。
警備の者もいるので、そういう嫌がらせが発生する可能性は低く見ていたのだが……よもやよもやだ。
「……そう、知らせてくれてありがとう。私、次の試合までは時間があるから観戦にでも行こうと思ってたところなの。早めに知れて助かったわ」
「ふんっ……」
素直に礼を言うと、なぜかスタテイラは急に不機嫌になった。
「私がその下手人だとは考えなかったのか?」
「そうなの?」
暗に「違うでしょう?」と聞くとスタテイラはますます不機嫌になる。
(気難しっ!)
まあ、スタテイラの気性はどうでもいい。それより、どれだけ荒らされたかを確認しに行かなければ。そう思って私が歩みを再開させ、スタテイラと擦れ違った時、彼女がこう呟いた。
「――勝つのは私だ」
驚いて振り向くと、彼女もまた歩き出しており、既に声をかけるのを戸惑うほどに遠ざかっていた。
(なるほど、私への対抗心が根底にあったのね)
そういう負けん気は好ましく思う。しかし――。
「イキの良い奴がいるなぁ。こりゃ強敵登場なんじゃねえか?」
「それはどうかしら」
「ん、どういう意味だ?」
「まぁ……今は控室に戻りましょ」
マネの質問には答えず、私は足早に控室へ向かった。
近付くにつれ、がやがやとした喧騒が聞こえてくるようになり、何事かと思えば私の控室の前に人だかりが出来ていた。
その中に意外な顔があった。彼女――『聖歌隊』のナタリーさんの方も私に気付き、人だかりから抜け出てくる。
「あら、嬢ちゃんじゃないか」
「……また、顔を合わせてしまいましたね。ナタリーさん」
別れ際、もう顔を合わせることがないよう祈ったというのに、ものの一週間で再会してしまった。向こうもそれを覚えていたのか、気恥ずかしそうに笑った。
「はっはっは! 長い人生、そういうこともある!」
人だかりの向こうに見える控室の中では、私の荷物が散乱していた。魔法的な気配はないので、物理的な手段で撒き散らしただけだろう。
ただ、そのどこにもアメ玉が見当たらない。持ち去られたのだろうか?
「しっかし、災難だったねぇ。控室を荒らされるなんて」
「あー、まあ、大丈夫ですよ。代えのきかないようなものはなかったと思いますので。それより、ナタリーさんはどうしてここに? この前の口振りだと、私と顔を合わせるかもしれないベレニケへ来る用事があったようには思えなかったのですが……」
「ご明察。……いやぁ、大したことじゃないよ。ここに来る筈だった同僚が体調を崩しちまって、人手が足りなくなっちまったんだ。それで、ちょうど暇してたアタシが代わりに引っ張り出されてきたって訳さ」
ナタリーさんはうんざりした表情で肩をすくめた。その仕草や表情は、どこかか嘘っぽく見えた。
この時、ナタリーさんが腕を挙げたことで、その右手に収まるものに眼が行った。見たことのない小型の魔道具だ。懐中時計のようなサイズ感で、中心にはコンパスの針のような棒が何かを探るように絶えず揺れ動いている。
「ナタリーさん、それは?」
「これかい? 異端の獣を炙り出す、さしずめ神の目さね。月を蝕むものの放つ魔力は、魔法使いのそれとはかなり異なることは知っているだろう?」
「じゃあ、それは『魔力偏差検出器』の新型なんですか。今はこんなに小型化しているんですね」
「例の天才さまの作品じゃなく、どこぞの無名技師が作った廉価版だがね。この小ささと携行性だけは評価してもいい」
すると、神の目とやらがチリチリと音を鳴らして反応をし始めた。そして、針がゆっくりと私の方を指し示す。偶然だろうが、なんだか私が月を蝕むものだと言われているようで決まりが悪い。
「……この闘技場にも紛れ込んでいるようですね」
「そうだ、控室を荒らしたのも獣の仕業と見ているが……これが中々捕まらない。嬢ちゃん、不安かい? 話は聞いてるよ。〝狂王〟を相手にあんな大見得をきったんだ、これぐらいの妨害は覚悟の上だろう?」
「いえ、その時は全然なにも考えてませんでした。――しかし、問題ありません。どのような妨害を受けようと私は勝ちますよ」
「へぇ……大した自信だ」
ナタリーさんは眼を細めた。その眼に宿るは、猜疑の光。
(もしかして……私、疑われている?)
確かに月を蝕むものとは妙な縁がある。その上、淀みなく質問に答えてしまったものだから、私が民宗派とグルでやった自作自演だから怖がっていないとでも勘違いされてしまったのだろうか。
実際に代えのきかないものはなかったのだが、さして動揺していなかったのも悪材料になってしまったか。これは早めに訂正しておかなくては。
「自信ではなく、決意です。私には才能がある。その才能が、私の敗北を許さないのです」
「……いやぁね、嬢ちゃんを疑ってる訳じゃないんだよ。ただ、やっぱり一人だと襲われる危険もあるだろう? 通常の警備じゃ不十分なことは神の目に反応があることを見ても明らかだ。嬢ちゃんは大事な出場選手なんだし、次の試合までアタシが護衛しよう」
それで疑いが晴れるのなら、と私がその申し出を受け入れようとした時、ナタリーさんの背後から新たに祭服を着た男性が現れた。
「これこれ、ナタリー審問官。その辺でお止めなさい」
「ラ、ラビブ神父様!」
ラビブ神父? 聞いたことのない名前だが、神父というのは一介の審問官よりは偉いのだろうか。ナタリーさんは異様に畏まった態度になっていた。
「見に来て、おられたのですか」
「ええ、まあ。それよりなんです? 試合前の選手に迷惑をかけて。疑うのは大魔法祭が終わった後でもよろしい!」
「あ、ちょっと……」
ラビブ神父は、戸惑うナタリーさんの腕を強引に引っ張る。そして、去り際にお茶目なウィンクを残し、二人は角の向こうへ消えていった。
誰だか知らないが助かった。国教会の神父ということは私と同じ王党派だろうし、気を利かせてくれたのだろうか。
ほっとしたのも束の間、今度はまた別の人物が私をお呼びになる。
「リン君!」
人だかりを割って控室の中から現れたのは、高等部の学院制服に身を包んだベンだ。
「落ち着いて聞いてくれ……アメ玉が全部なくなっている!」
「はあ、ヘレナにでも買い付けに行かせなさい」
周回遅れだ。そんなことにはナタリーさんと会話している時にとっくに気付いている。というか、私より落ち着くべきはベンの方だろう。取り敢えず、ハンカチを渡してその滝のような汗を拭かせた。
「――みんな聞いて、犯人は『聖歌隊』が捜索してくれてるそうよ! はい、役に立たない野次馬は散った散った!」
私は邪魔な人だかりを解散させて控室に入り、床に散乱するものの中から使えそうなものを拾って状態を確かめる。
「ふーん、置いといたアメ玉が全部綺麗になくなってるわね。犯人は私のことをよく知ってるみたい」
「どうして、そう冷静なんだ! アメには予備があるってのかい!?」
「いえ、控室に置いといたのがその予備全部だったわ。今あるのは緊急時用にこっそり隠し持ってた五コだけよ」
そう言って、私は学院制服を改造して増設したポケットからアメ玉を見せる。これを試合で使うつもりはなかった。それは流石にズルだと思う。しかし、通路などでの嫌がらせや襲撃を警戒して隠し持っていた。
「五コ!? たったそれだけかい!? 頼むから、もっと焦ってくれないか!」
「おい、伊達男。コイツには何言ったって無駄だぜ。もうさんざオレ様が言ってんのに聞かねえんだからよォ」
煩い外野の声を無視して、手早く荷物の整理を終える。どうやら、無くなっているものはアメ玉の予備だけで、他のものは散らかされているだけのようだ。一部のものは破損していたが、それも使用に問題ない範囲のものばかりである。
(狙いは最初からアメ一点……)
計画的な犯行なのは確かだ。しかし、単純に諸侯派あるいは諸侯民宗派の犯行として良いものか。私はそこのところが引っかかっていた。どうも最近、私には敵が多いみたいだから。
「――ともかく! アメ玉の調達は僕に任せてくれ。ヘレナ君と相談して、集められるだけ集めてこよう。君は何も心配することはないからね」
「へえ。で、その集めたアメはどこに置いとくの?」
「考えたけど……やはり、この控室に置いておくしかないだろうね。立地的に一番守りやすい控室がここなんだ。ここで駄目なら他でも駄目さ。一度抜かれた警備に関しては僕が守ることでカバーする」
「そりゃどうも。良いんじゃない? そんな感じで」
ベンがここを守ってくれるということなので、私は纏めた荷物を再度、その場に置き直して踵を返した。
「じゃ、私は次の試合まで時間あるし、観客席にでも行って試合観戦と洒落込んでくるわ」
「……分かったよ。大丈夫なんだね? リン」
「ええ。そういうアンタも、後は任せたわよ? ベン」
ようやくベンも落ち着きを取り戻したようだったので、私は彼を信頼してその場を後にした。
全く、心配性な奴だ。そういうのはポーラにでもしてやればいいのに。
歓声轟く観客席に上がると、今まさにもっとも手前に見える試合場で剣術の試合が決着するところだった。
「It's so beautiful……驚いた。神聖エトルリアのリウィアが負けたわ」
たった今、剣術部門の優勝候補であり、前回の大魔法祭では決勝で鎬を削った神聖エトルリア帝国のリウィアが負けた。
それも完膚なきまでに、美しく……。
リウィアだって決して弱くはない筈なのに、倒れたリウィアに一瞥もせず退場してゆく勝者の後ろ姿には余裕すら感じられた。
勝ったのはパルティア王国のファラフナーズ。三年生だが、これが初出場。
使い魔の力で一気に勝ってきたような私やレティシアと違い、着実に地力を付けて勝ち上がって来たことが伺える戦いだった。使い魔との連携、太刀筋、魔力操作技術、魔法構築速度……全てが高水準。
他の実力者――例えば〝残雪〟の二つ名を冠するグィネヴィアや〝剛拳〟のロクサーヌのような派手な存在感こそないものの、既に周囲の見る目ある何人かはファラフナーズの技量の高さに気付いた様子だ。
「決勝の相手はファラフナーズで決まりね」
「その前に準決勝の心配は良いのか? ほら、さっきのスタテイラとか!」
「良い。それより、あっちでやってる槍術の試合でも見ましょ。ほら、シンシアが頑張ってるわよ」
シンシアは、強い=偉いと短絡的に信奉する絶望的に頭の足りない動物的な奴だが、こと戦闘に際してその勘は侮れない。今も使い魔の霊猪と打ち合わせなんてしていないだろう本能的な連携をこなし、自由奔放な動きで対戦相手を翻弄している。たぶん、この試合は勝つだろう。
「シンシアだぁ? あいつの戦いなんていつでも見れんだろ。どうせ勝つしよぉ。それよか、今は剣術の方を見とけって。スタテイラがなんか変なことやってるぜ」
「変なこと?」
マネの言葉に興味を惹かれて、しぶしぶ一番遠くの試合場でやっている剣術の試合の方に目を凝らすと、確かにスタテイラは変なことをしていた。
「へえ……じゃあ、準決で当たるのはスタテイラの方かもね」
「だろ? 見といた方が良いぜ」
「いえ、その必要はないわ」
確かに想像とは少し違った成長をしていた。しかし、それは私に何か特別な感情を抱かせるほどのものではなかった。大体の動きは既に前日の練習時に見切っている。
スタテイラは、去年より弱くなっている。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主』
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる


