109 / 158
第四章
4.決着 その⑤:五手目
しおりを挟む
「クク……アーッハハハハ!」
何処からともなく『実験室』に笑声が響き渡る。
「……驚いたな、『スライム』だって? とんでもない――そいつは七罪の一人! アブズじゃあないか!」
それは存外に幼い声だった。私と同い年か、少し下くらいの少年のような、声変わりもまだ途上というような声。
だが、それよりも今は内容の方が気にかかった。
七罪――その言葉は、いつかに貰った資料にも載っていた。かつて大門を開いて魔力素を独占しようと目論見むが失敗し、『人魔開闢』を引き起こして〝人界〟から魔力素と魔族・魔物を絶滅させた連中のことを民宗派はそう呼んでいる、と。
「……全く、妙ちきりんな呼び方しやがって……」
「ってことは、今の本当なの? マネ――じゃなくて、アブズさん?」
「止めろ。その名はとうの昔に捨てた」
しかし、想像していたよりもマネが結構な長生きで驚いた。というか、やっぱりとんでもないことをしでかしているではないか。有名は有名でも悪名の方だ。
「ロクでもない奴だとは思ってたけど、ここまでとはね」
「……オレ様だって反省はしてるさ……浅慮だった」
「『浅慮だった』……? ふざけるなよ、貴様ァ!」
少年の声には、そのあどけなさに似つかわしくない怒気が滲んでいた。
「貴様ら〝魔界〟の糞どもは、犬畜生にも劣る原種の絞りカスだッ!」
「……アレについては本当に反省している。だが、一つ言い訳をさせてもらうと、大門を開いただけであんなとんでもないことになるだなんて、当時はおろか今の魔法技術でも一度やってみないことには分からなかっただろうぜ」
「――そんなことを言っているんじゃあない! 僕は民宗派の出自だが、その教義に賛成している訳じゃあないし、そもそも過ちは誰しも犯すもの! 僕が怒っているのは、その後における魔力素の独占と人間からの収奪のことだッ!」
彼の言う『魔力素の独占』とは、つまり〝人界〟にはない魔力素が〝魔界〟にはあるという対照的な現状を言っているのだろうとは理解できる。しかし、『人間からの収奪』とは何のことか。私には全くもって心当たりがない。
けれども、そう思ったのは私だけのようで、マネはその体組織の動きを少しだけ乱した。
「その『収奪』ってのは……【契約召喚】のことを言っているのか?」
「それ以外に何があるッ!?」
愚問であるとばかりにルクマーンは憤る。しかし、二人はそれで分かりあったのだろうが、私は置いてけぼりを食らっていた。
「ちょっと。私だけ、あんまり話についていけてないんだけど。教えてよ、マネ」
「……〝魔界〟の連中がどうして【契約召喚】に応じるのか、その理由を考えたことはあるか?」
「ないわ。使い魔ってのは魔法士の側には昔から居て当然のものとして認識してたし、そこに疑問を挟む余地はなかった」
「そうか……」
少し沈黙を挟んで、マネがゆっくりと〝魔界〟視点の事情を説明する。
「オレ様なんかが偶に契約するのは〝人界〟への興味や暇つぶしからだが……もちろん、そうじゃない切実な動機の奴らもいる。力が弱く、魔力素に飢えるものに取っては、〝人界〟に分体を送り込むことが結構な食い扶持になるんだ。〝魔界〟はしみったれたところで、弱肉強食の理に従ってそれぞれの領分が厳格に決まってる閉塞的な世界だ。それ以上のものを望むなら、〝人界〟を頼るほかないのさ」
「――ああ、〝人界〟の魔法使いが己の魂で練り上げた僅かな魔力を掻っ攫うしかないな!」
ルクマーンが嫌味な言い方をする。私としては、協力の対価としていくらかの魔力を彼らが持ち帰る分には何の文句もない。傭兵に賃金を渡すようなものだ。有用だから使っているのであって、鬱陶しいセールスマンに無理矢理押し売りされた訳でもない。
「リン! 君は鈍感な奴だ。鈍ちんだ。頭が良いんだろう? だのに分からないのか? それとも誇りがないのか? 人間は無明時代を脱してなお、奴らに食い物にされているんだぞッ!」
「そうなのかもね」
正直、今まで全く考えたことも聞いたこともない新しい感性に触れて、私は戸惑いを隠せないでいた。
過去、『魔力素は資源だ』と話す〝魔界〟の住民は何度か居た。人間社会が限りある資源を奪い合って血みどろの闘争を繰り広げるように、きっと〝魔界〟では魔力素を巡って闘争が行われるのだろう。
とどのつまり、ルクマーンはその闘争の中へ人間という種も参戦しようと言っているのだ。
そのために〘人魔合一〙の術を改良し〝魔界〟の住民から魔力を奪い、また大門を再び開き〝人界〟に魔力素を戻そうというのだろう。
「――でも、誰がそんなことして欲しいって言ったワケ?」
「何だって……?」
物分りの悪いルクマーンに対し、私は懇切丁寧な説明をくれてやる。
「魔力素が欲しいかどうかって聞かれたら、そりゃあ~、まあ、欲しいわよ? 潤沢な資源を惜しげなく使うことで齎される〝力〟と繁栄は、それはそれは凄まじいものでしょう」
「よく分かっているじゃないか。理想郷は革新の中にこそある! その原動力たる魔力素はいくらあっても足りないぐらいだ!」
「それは……その通りだと思うわ。私なんて、医学や治癒魔法が発展してなかったらもう十回ぐらい死んでるし。今さら石と木だけの原始時代には戻れないもの」
「なら――」
「でもね、残念なことにアンタの〝思想〟は急進的かつ先進的すぎるのよ」
急進的な言動は、往々にして多勢の顰蹙を買う。そして、それが強硬的であればあるほど、先進的すぎればすぎるほど、顰蹙は『反発』へと変わる。
「アンタの〝思想〟は百年……いえ二百年ぐらい先、技術革新に伴って高まるリソースへの渇望が生むような〝思想〟だわ。それを今やったところで、誰もついていけないわ。……ねえ、アンタのその〝思想〟って一体、民宗派のどれくらいの人に受け入れられている訳?」
「ぐっ……」
私の指摘に対し、ルクマーンはぐうの音も出ないようだった。その〝思想〟を打ち明けたものがいるとしたら、それは恐らく『ソーテイラー』ぐらいのもので、他のものには一言も話していないに違いない。なぜなら、話す前から受け入れられないであろうことが彼自身にも分かっているからだ。
「ああ、そうだ! ご明察だよ! 話したのも受け入れてくれたのもソーテイラー様だけさ! それ以外の奴には、理解もできないだろうから話してすらいない! ――だが、それが何の問題になる!? 僕の正しさや功績は、後世の連中が必ずや評価してくれる筈だッ! 僕にはその確信があるッ!」
「あのさぁ……それ、そもそも根拠はあるの?」
「……なんだって?」
「だから、成功する根拠――勝算のことよ」
寝耳に水のような反応をするルクマーン。しかし、一般論としてそこまで大それたことをやろうというのだから、相応の根拠があってしかるべきだと私は考える。
「大門を開くと、原種とかいうヤバいのが覚醒めちゃうかもしれないんでしょ? だいたい、〝魔界〟全体に喧嘩を売って人間が勝てるとも思えないんだけど」
「はぁ……なにかと思えばそんなことか。つくづく、君には失望したよ」
ムカッとくる言い草だ。それにつられて、私の方もついつい刺々しく言葉を返す。
「御託はいいから、根拠があるなら言ってみなさいって。それともないの? ないならないで、私はいいんだけど?」
「ッ――いいかい? この世に確かなことなど存在しない! ただ一つ確かなことがあるとすれば――それは! この荒野を切り拓かんとする開拓者精神のみだ!」
「はあ……?」
「失敗など、ハナっから勘案にも入れていない! なぜなら、僕は成功するまで挑戦し続けるつもりだからだ!」
そういう精神論は求めていない。熱っぽいルクマーンの演説とは対照的に、私の心は急速に冷めてゆく。「失望」という言葉、今度は私が使わせてもらう番のようだ。
「つまり、ないのね?」
「見縊るな、凡人風情が一丁前に。君たちの考えつくような問題については、既に対策を考えてある」
「なら最初から『ある』って普通に言いなさいよ」
面倒くさい奴だ、と小声で言い捨てると、声しか聞こえないが呼吸の音だけでルクマーンが怒気を孕んだのが分かった。だが、さっきまでと違ってそれを表に出すことなく、抑えつけるように深呼吸を繰り返してから、彼は冷静に言う。
「――君に勧告する。もし、将来のどこかで僕の〝思想〟に一分でも説得力を感じたなら、即座に民宗派へと身を寄せろ。君を月を蝕むものにする」
「あら、マネの魔力波長をお望みなんでしょうけど、生憎と〘人魔合一〙の術で力を借りられる対象はランダムなんじゃなかった?」
「一体いつの話をしているんだ。この僕が、今までどれだけ〘人魔合一〙の術を改良してきたのか忘れたか? 【契約召喚】の繋がりを利用して、使い魔を特定して力を借り受ける種類のものも作ってあるさ。君のような存在を想定してね」
……こいつ、本当になんてものまで作っていやがる。やはり、ここでキッチリ殺しておかないと駄目だ。
「でもそれなら、後でと言わず今から私を無理矢理月を蝕むものにしちゃえばいいじゃない」
「はっ! 僕はできないことはしない主義でね。それに――どうやら、お喋りできるのもここまでのようだからな」
唐突なルクマーンの言葉にも私は動じることなく、ちらと右腕のバングルを確認した。
「悪いが、君とはここでお別れだ。既に僕はその場にはいない。会話中に移動し、『逃げ道』を確保させてもらった」
「あっそ、別に構わないわよ。時間稼ぎはお互い様だしね」
「なに?」
右腕のバングルから「ピー」と間の抜けた電子音が鳴ると、ようやく準備の終わった秘密兵器――『広域非破壊探査装置』の起動を告げる衝撃が大気を揺らした。
そちらに天才がいるなら、こちらには天才がいる。
何処からともなく『実験室』に笑声が響き渡る。
「……驚いたな、『スライム』だって? とんでもない――そいつは七罪の一人! アブズじゃあないか!」
それは存外に幼い声だった。私と同い年か、少し下くらいの少年のような、声変わりもまだ途上というような声。
だが、それよりも今は内容の方が気にかかった。
七罪――その言葉は、いつかに貰った資料にも載っていた。かつて大門を開いて魔力素を独占しようと目論見むが失敗し、『人魔開闢』を引き起こして〝人界〟から魔力素と魔族・魔物を絶滅させた連中のことを民宗派はそう呼んでいる、と。
「……全く、妙ちきりんな呼び方しやがって……」
「ってことは、今の本当なの? マネ――じゃなくて、アブズさん?」
「止めろ。その名はとうの昔に捨てた」
しかし、想像していたよりもマネが結構な長生きで驚いた。というか、やっぱりとんでもないことをしでかしているではないか。有名は有名でも悪名の方だ。
「ロクでもない奴だとは思ってたけど、ここまでとはね」
「……オレ様だって反省はしてるさ……浅慮だった」
「『浅慮だった』……? ふざけるなよ、貴様ァ!」
少年の声には、そのあどけなさに似つかわしくない怒気が滲んでいた。
「貴様ら〝魔界〟の糞どもは、犬畜生にも劣る原種の絞りカスだッ!」
「……アレについては本当に反省している。だが、一つ言い訳をさせてもらうと、大門を開いただけであんなとんでもないことになるだなんて、当時はおろか今の魔法技術でも一度やってみないことには分からなかっただろうぜ」
「――そんなことを言っているんじゃあない! 僕は民宗派の出自だが、その教義に賛成している訳じゃあないし、そもそも過ちは誰しも犯すもの! 僕が怒っているのは、その後における魔力素の独占と人間からの収奪のことだッ!」
彼の言う『魔力素の独占』とは、つまり〝人界〟にはない魔力素が〝魔界〟にはあるという対照的な現状を言っているのだろうとは理解できる。しかし、『人間からの収奪』とは何のことか。私には全くもって心当たりがない。
けれども、そう思ったのは私だけのようで、マネはその体組織の動きを少しだけ乱した。
「その『収奪』ってのは……【契約召喚】のことを言っているのか?」
「それ以外に何があるッ!?」
愚問であるとばかりにルクマーンは憤る。しかし、二人はそれで分かりあったのだろうが、私は置いてけぼりを食らっていた。
「ちょっと。私だけ、あんまり話についていけてないんだけど。教えてよ、マネ」
「……〝魔界〟の連中がどうして【契約召喚】に応じるのか、その理由を考えたことはあるか?」
「ないわ。使い魔ってのは魔法士の側には昔から居て当然のものとして認識してたし、そこに疑問を挟む余地はなかった」
「そうか……」
少し沈黙を挟んで、マネがゆっくりと〝魔界〟視点の事情を説明する。
「オレ様なんかが偶に契約するのは〝人界〟への興味や暇つぶしからだが……もちろん、そうじゃない切実な動機の奴らもいる。力が弱く、魔力素に飢えるものに取っては、〝人界〟に分体を送り込むことが結構な食い扶持になるんだ。〝魔界〟はしみったれたところで、弱肉強食の理に従ってそれぞれの領分が厳格に決まってる閉塞的な世界だ。それ以上のものを望むなら、〝人界〟を頼るほかないのさ」
「――ああ、〝人界〟の魔法使いが己の魂で練り上げた僅かな魔力を掻っ攫うしかないな!」
ルクマーンが嫌味な言い方をする。私としては、協力の対価としていくらかの魔力を彼らが持ち帰る分には何の文句もない。傭兵に賃金を渡すようなものだ。有用だから使っているのであって、鬱陶しいセールスマンに無理矢理押し売りされた訳でもない。
「リン! 君は鈍感な奴だ。鈍ちんだ。頭が良いんだろう? だのに分からないのか? それとも誇りがないのか? 人間は無明時代を脱してなお、奴らに食い物にされているんだぞッ!」
「そうなのかもね」
正直、今まで全く考えたことも聞いたこともない新しい感性に触れて、私は戸惑いを隠せないでいた。
過去、『魔力素は資源だ』と話す〝魔界〟の住民は何度か居た。人間社会が限りある資源を奪い合って血みどろの闘争を繰り広げるように、きっと〝魔界〟では魔力素を巡って闘争が行われるのだろう。
とどのつまり、ルクマーンはその闘争の中へ人間という種も参戦しようと言っているのだ。
そのために〘人魔合一〙の術を改良し〝魔界〟の住民から魔力を奪い、また大門を再び開き〝人界〟に魔力素を戻そうというのだろう。
「――でも、誰がそんなことして欲しいって言ったワケ?」
「何だって……?」
物分りの悪いルクマーンに対し、私は懇切丁寧な説明をくれてやる。
「魔力素が欲しいかどうかって聞かれたら、そりゃあ~、まあ、欲しいわよ? 潤沢な資源を惜しげなく使うことで齎される〝力〟と繁栄は、それはそれは凄まじいものでしょう」
「よく分かっているじゃないか。理想郷は革新の中にこそある! その原動力たる魔力素はいくらあっても足りないぐらいだ!」
「それは……その通りだと思うわ。私なんて、医学や治癒魔法が発展してなかったらもう十回ぐらい死んでるし。今さら石と木だけの原始時代には戻れないもの」
「なら――」
「でもね、残念なことにアンタの〝思想〟は急進的かつ先進的すぎるのよ」
急進的な言動は、往々にして多勢の顰蹙を買う。そして、それが強硬的であればあるほど、先進的すぎればすぎるほど、顰蹙は『反発』へと変わる。
「アンタの〝思想〟は百年……いえ二百年ぐらい先、技術革新に伴って高まるリソースへの渇望が生むような〝思想〟だわ。それを今やったところで、誰もついていけないわ。……ねえ、アンタのその〝思想〟って一体、民宗派のどれくらいの人に受け入れられている訳?」
「ぐっ……」
私の指摘に対し、ルクマーンはぐうの音も出ないようだった。その〝思想〟を打ち明けたものがいるとしたら、それは恐らく『ソーテイラー』ぐらいのもので、他のものには一言も話していないに違いない。なぜなら、話す前から受け入れられないであろうことが彼自身にも分かっているからだ。
「ああ、そうだ! ご明察だよ! 話したのも受け入れてくれたのもソーテイラー様だけさ! それ以外の奴には、理解もできないだろうから話してすらいない! ――だが、それが何の問題になる!? 僕の正しさや功績は、後世の連中が必ずや評価してくれる筈だッ! 僕にはその確信があるッ!」
「あのさぁ……それ、そもそも根拠はあるの?」
「……なんだって?」
「だから、成功する根拠――勝算のことよ」
寝耳に水のような反応をするルクマーン。しかし、一般論としてそこまで大それたことをやろうというのだから、相応の根拠があってしかるべきだと私は考える。
「大門を開くと、原種とかいうヤバいのが覚醒めちゃうかもしれないんでしょ? だいたい、〝魔界〟全体に喧嘩を売って人間が勝てるとも思えないんだけど」
「はぁ……なにかと思えばそんなことか。つくづく、君には失望したよ」
ムカッとくる言い草だ。それにつられて、私の方もついつい刺々しく言葉を返す。
「御託はいいから、根拠があるなら言ってみなさいって。それともないの? ないならないで、私はいいんだけど?」
「ッ――いいかい? この世に確かなことなど存在しない! ただ一つ確かなことがあるとすれば――それは! この荒野を切り拓かんとする開拓者精神のみだ!」
「はあ……?」
「失敗など、ハナっから勘案にも入れていない! なぜなら、僕は成功するまで挑戦し続けるつもりだからだ!」
そういう精神論は求めていない。熱っぽいルクマーンの演説とは対照的に、私の心は急速に冷めてゆく。「失望」という言葉、今度は私が使わせてもらう番のようだ。
「つまり、ないのね?」
「見縊るな、凡人風情が一丁前に。君たちの考えつくような問題については、既に対策を考えてある」
「なら最初から『ある』って普通に言いなさいよ」
面倒くさい奴だ、と小声で言い捨てると、声しか聞こえないが呼吸の音だけでルクマーンが怒気を孕んだのが分かった。だが、さっきまでと違ってそれを表に出すことなく、抑えつけるように深呼吸を繰り返してから、彼は冷静に言う。
「――君に勧告する。もし、将来のどこかで僕の〝思想〟に一分でも説得力を感じたなら、即座に民宗派へと身を寄せろ。君を月を蝕むものにする」
「あら、マネの魔力波長をお望みなんでしょうけど、生憎と〘人魔合一〙の術で力を借りられる対象はランダムなんじゃなかった?」
「一体いつの話をしているんだ。この僕が、今までどれだけ〘人魔合一〙の術を改良してきたのか忘れたか? 【契約召喚】の繋がりを利用して、使い魔を特定して力を借り受ける種類のものも作ってあるさ。君のような存在を想定してね」
……こいつ、本当になんてものまで作っていやがる。やはり、ここでキッチリ殺しておかないと駄目だ。
「でもそれなら、後でと言わず今から私を無理矢理月を蝕むものにしちゃえばいいじゃない」
「はっ! 僕はできないことはしない主義でね。それに――どうやら、お喋りできるのもここまでのようだからな」
唐突なルクマーンの言葉にも私は動じることなく、ちらと右腕のバングルを確認した。
「悪いが、君とはここでお別れだ。既に僕はその場にはいない。会話中に移動し、『逃げ道』を確保させてもらった」
「あっそ、別に構わないわよ。時間稼ぎはお互い様だしね」
「なに?」
右腕のバングルから「ピー」と間の抜けた電子音が鳴ると、ようやく準備の終わった秘密兵器――『広域非破壊探査装置』の起動を告げる衝撃が大気を揺らした。
そちらに天才がいるなら、こちらには天才がいる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主』
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる