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北東沿岸の初戦
大義とやらのために
しおりを挟むいつだってそうだ。
世界の紛争。災害。事件・事故。誰かが世界のどこかで死んでたって気にもしなかった。そこで懸命に生きる人なんてどーでも良くて、自分達が平和に暮らせてるからって、適当に今の平和な日々に感謝しろと言われて生きてきた。 目前に死が迫ってきてたって、少し海を跨げば他人事だ。残酷だ。世の中なんて。
「おい!しっかりしろ!おい!」
ぼんやりと何かが聞こえてくる。
「おい!アンディー!伍長!!しっかりしろ!」
ケイン一曹に顔面を叩かれ、我に帰った。
「は、だ、大丈夫です!」
「心配したぞ、敵が砲撃して来てたのにお前は塹壕の外で突っ立ったままだったからな!」
「え、え?」
「なんだお前、覚えてないのか、まぁ勢いよく吹き飛ばされてたからな!」
全く覚えてないが一曹が言うには敵艦の砲撃でどうやら俺は吹き飛ばされたらしい。幸いにも俺は生きてる。
「あ、よ、揚陸艦は!?」
「見てみろ!もう目前だぞ!」
塹壕から頭だけを出して覗き込む。
揚陸艦が6隻程度浜辺に近づいてくる。その揚陸艦のすぐそばに無数のLAVやAAVが接近してくる。
「桁違いだ....」
思わず本音が出た。
「一曹、砲兵隊はどーなったんですか?」
「壊滅的な損害だ。」
「な、ならあの装甲車はどーやって太刀打ちするんですか」
「ランチャーでどーにかするしかない..」
絶望だ、無謀だ、あんな機甲隊を携行兵器だけでどーやって。それに空軍は首都防衛のために温存中だと。
「ギリギリまで引き寄せろ!しっかり目かっぴらいて敵を狙え!」
総隊長のクレイグ中佐が鬼の形相で叫ぶ。
「やるしかないなアンディー!」
ハルが俺に言ってきた。
ハル二等兵は訓練生時代からの友だ。
「もちろんだ!」
バンバン、バン
乾いた音がしたと同時に敵のAAVとLAVが直上に黒煙を炸裂させ上陸して来た。
「ってー!」
一斉に射撃を開始した。
ダダダダダ
ババババ
数々の銃声が響き渡る。MG3のグリップをぐっと握りひたすらに撃ちまくる。空薬莢が無数の金属音を鳴らしながら転がる。スカイライン兵が次々と装甲車から飛び降りてくる。
そこに慈悲なんてない。善なんかない。
彼らは障害物の少ない浜辺で次々と俺たちに撃ち抜かれていった。すると彼らは装甲車を前進させ、スモークを焚きながらゆっくりと距離を詰めて来た。
カンカン
弾丸が装甲車にあたり跳弾していく。
ドンドンドン
低い重低音のような銃声がした。装甲車の攻撃だ。装甲車は止まることなく反撃しながら前進してくる。
隣にいた兵士が敵装甲車に一泡吹かせようと手榴弾を投げ入れようと身を乗り出した。
その刹那ー
俺の顔面に生暖かい液体が飛び散って来た。隣の兵士が倒れ込んだ。
「オイ!大丈夫か!?」
揺さぶろうと手伸ばした時、俺の手はピタリと止まった。その兵士の首から上は無かった。背筋が凍った。無性に悔しさが浮かび上がって来た。
「クソ!クソ!クソ!」
再度機関銃を撃ち始めるが、直後に弾詰まりを起こした。何度も弾詰まりを直そうと必死になるが中々上手くいかない。装甲車は目前まで迫って来ていて敵の歩兵も影から出てきては攻撃して来ている。止むを得ずMG3を放棄して、552で応戦し始める。
「って!」
バシュッ
白い尾を引いた弾が装甲車に命中した。火花を散らし、黒煙を上げながら敵の装甲車一台を足止めした。
搭乗員が悲鳴を上げながら飛び降りる。俺はそこに照準を合わせた。まだ心の中には善良な心は存在していた。
顔と戦闘服が真っ黒になった敵搭乗員がこちらに気づき、やめてくれ と言わんばかりに手を顔の前にして身構えてた。
"撃たなきゃ。撃たなきゃ。隣の兵士だってあの搭乗員に殺されたんだぞ。"
今まで生きて来た中で最大の葛藤だった。国のため、仲間のため、様々な大義が脳裏をよぎる一方で、その搭乗員の人生、家族、大義を思うと、撃てなかった。
俺は叫びながら引き金を引いた。
敵搭乗員は額から血を吹き出しながら息絶えた。俺は彼のぐったりとした遺体から目が離せなかった。この判断は正しかったんだ。俺が撃たなかったら他に何人も仲間がやられてたんだ。
そう言い聞かせるも鼓動はどんどん早くなり、発汗量も増加する一方だった。
無反動砲による攻撃は続けられ、スカイライン軍の侵攻速度は落ちていった。
「このまま押し返せ!」
中佐が叫びそれに伴い俺たちの軍も反撃も更に強くなっていき、かすかながら希望が見えて来た。
そんな時だった。
「敵機直上ー!」
つい数時間前、砲兵隊に大打撃を与えた。敵航空隊がそんな俺たちの希望を打ち砕きにやって来たのだった。
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