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トヨの戦い
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しおりを挟む「HQから各隊へ通達。先行偵察隊が都心部へ接近するスカイライン軍を確認。各隊戦闘配置につけ。」
豪雪の真っただ中での戦闘になりそうだ。一気に緊張が高まる。俺の小隊は高層ビルが立ち並ぶ摩天楼の中心地で敵を待ち構えた。ここで敵を出来るだけ足止めし、耐えられなくなったら塹壕に撤退する手はずだ。ビルの柱に隠れて銃を構える。付近にはほかの小隊の隊員もいるしSDTFもいた。
戦闘配置を完了し、無言のまま敵を待ち構えていたその時だった。
サッと目の前の交差点をMARPAT迷彩のスカイライン兵が横切った。その兵士は壁からそっと頭を覗かせ、俺たちのいる通りを確認している。
「スバル、撃て。」
ウレダ小隊長が狙撃兵に小声で命じた。
サプレッサーの弾けるような小音がした。
バチン!と音を立て敵の兵は壁の奥へと消えた。
ダダダダダ
敵の兵士が壁越しにM4をフルオートでブラインドショットをして来た。俺たちの隠れている柱や壁に当たりいくつか至近弾もあった。
そして敵兵がスモークを俺たちの目の前に投擲して来た。勢いよく煙を吹き出し目の前が何も見えなくなる。隊内に動揺が走る。
「敵が視認できるまで撃つなよ。」
スモークが徐々に晴れてきた時だった。
俺の隠れていた柱の目の前に人影が見えた気がした。スモークが完全に晴れ銃を構えながら柱から上半身を出して確認しようとした時
目の前に敵の兵士が突然現れた。
俺はためらいなくゼロ距離で連発した。返り血が服を汚す。敵兵は俺の足元にそのまま倒れ込み彼が動く事は無かった。
味方の部隊も個々に攻撃を開始し、通りに出ていた敵の兵士は次々に倒れていった。銃声に混じり先程の駆動音が近づいてきた。ビルの壁から砲身と思われる棒が出てきた。
「戦車!!12時方向!!」
通りの反対側にいる味方兵が叫んだ。
そこに通りの真ん中に止められた車の陰に隠れる味方2人いた。戦車の射線に思いっきり入っている!
「退避しろ!急げ!早く!」
右手を大きく振り、彼らに伝える。1人はすぐにこちらに逃げ込んで来たがもう1人は中々逃げて来ようとしない。何かがおかしい。よく見ると彼は何か慌てている。
「クソ、制圧射撃頼む!」
すぐ近くのMG3を装備した兵士に頼んだ。
俺はその兵士の合図と共に通りに飛び出して車の陰に隠れている味方兵の元へいった。弾がヒュンヒュンと音を立てながら体のすぐそばを飛んで行く。死にもの狂いで走り抜け、味方兵の元へたどり着いた。
「何やってんだお前!」
「ポ、ポーチが車の機材に絡まって」
よく見ると壊れた車から無数のコードの様な機材が助手席あたりから溢れでていた。
俺はさっとナイフを取り出しポーチを切り落とし、連れ帰ろうとした時、火花が散り、鈍い金属音がした。
「グアッ」
弾が車体を貫通し、味方兵の太ももに命中した。マズイ、交差点を確認すると敵の戦車がこちらに砲塔を向けようと旋回しているのが見えた。俺は手荒にその兵士の担ぎ上げ、さっきのMG3の兵士とアイコンタクトをとった。
バッと勢いよく走り出す。横を見ると既に敵の戦車の砲塔がこちらを向いていた。
「ヤ、ヤバイ!」
敵の砲身から煙が噴き出した。
黄色の光の塊がものすごいスピードでこちらに飛んでくる。
が、運良くそれは俺の頭上を通過して無人のオフィスの玄関に直撃した。俺は命からがらビルの壁に戻ってきた。
ひと息つく暇などない。
「衛生兵!」
衛生兵が駆けつけてきて応急処置を始めた。
俺はまた柱の陰に戻り、敵に発砲する。だが俺たちの小隊は敵の戦車と長時間やりあえる程、装備は充実していなかった。
「HQから113、及び近辺で防衛戦を展開中の全隊へ通達。トヨ中央駅まで撤退せよ。繰り返す、トヨ中央駅まで撤退せよ。」
「113了解。
113アクチュアルから隊員へ負傷者から順に運び出させる。戦える隊員は出来るだけ負傷者搬送のために時間を稼ぐぞ。」
「了解!」
「ウレダ小隊長、負傷者搬送準備完了です。いつでもいけます。」
「了解した。俺たちは制圧射撃を行う。俺の合図で搬送隊は行け、残弾を確認しろ!
スバル、精密射撃は任したぞ。」
「1-8了解。敵を随時狙撃します。」
「援護は任したぞ」
衛生兵が俺に言ってきた。
「もちろんだ!駅まではそう遠くない。振り返らずに突っ走れ!」
「ああ!」
「全員準備はいいかー!
3
2
1
Go!Go!Go!」
その怒号と共に一斉射撃が始まった。搬送隊が一斉に飛び出して走り出した。マズルフラッシュが曇って薄暗い街を僅かながら照らした。数分間はあの薬莢の落ちる音が止まることなく続いた。
もちろん敵からの反撃もあった。敵戦車は搬送隊を狙わなかった。俺たちはひたすらに撃ち続けたが無慈悲にも敵の戦車は全て弾き返し、俺たちを襲った。
さっき俺を援護してくれたあの兵士が俺の目の前で二脚を立てて制圧射撃を行なっていた時だった。
その兵士のすぐ横に砲弾が着弾した。
大量の土煙とコンクリートの瓦礫が舞い上がるのと同時に
彼は建物内へガラスを突き破り、血を噴き出したながら吹き飛ばされていった。
本当に一瞬だった。
彼の断末魔が耳から離れない。
初戦の時のあの恐怖感が戻ってきた。
ダダダダダ
先程まで普通だった銃声が、ありえない程爆音に聞こえた。俺は恐怖のあまり、その場に崩れ落ちてしまった。
「なんで、た、立てない。」
周りを見渡す。歯をくいしばり、ひたすら機関銃を撃ち続ける兵士。いつも俺に見せない真剣な顔つきで敵を狙い撃ちするカール。
リロードしながら何か叫んでいるリスト。
「俺、何やってんだろ?」
そんな時だった。ポーチから1つのドックタグが転がり落ちてきた。
「あ....」
その時の心の中で無数の光が弾ける感じがした。
「そ、そうだ。俺は変わるって決めたんだ。アイツの分まで最期まで戦うんだ!」
グッと足に力を入れ、再び立ち上がった。恐怖心は取れなかった。だがそれに立ち向かう勇気を俺は今は亡きハルからもらった。
再び雪に汚れた銃を構え、引き金を引いた。
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