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トヨの戦い
隊長命令
しおりを挟む俺たちは搬送隊を先に行かせ、敵の侵攻をせき止めていた。もう少し、もう少ししたら撤退を援護してくれる武装ヘリがやってくる。
「1-4!到着はまだか!?」
「こちら1-4全速でそちらに進行中だ、踏ん張れ。」
「さっさとしろ!負傷者が増えてきてる!」
カロン通信兵が無線に怒鳴り散らす。事実敵の戦力は時間が経つにつれ増えてきている。弾丸も残り少ない。対戦車用の無反動砲も、ほとんど撃ち尽くした。
「弾を!誰かマガジンをくれ!」
あちらこちらでこの声が上がる。
「これでラストだ!」
俺は30発入りにマガジンを付近の隊員に投げて渡す。敵の戦車1両は何とか無力化に成功したが、歩兵の数が序盤と比べ物にならない程増えていた。
「小隊長!命令を!このままだと部隊は全滅です!!」
「わかってる!耐えるしかない!」
「ですが弾はもうほとんどありませんよ!」
「拳銃を使うしかないだろ!それが尽きれば近接武器だ!」
ウレダ小隊長は荒々しく他の隊員に言いつける。とうとう皆プライマリーを撃ち尽くし、サイドアームへと切り替える。俺たちが弾を殆ど撃ち尽くした事を察知したのか敵の攻撃が一斉に強まった。
俺たちの部隊は釘付けにされ、多くの隊員が悲鳴を上げながら極寒のアスファルトへ倒れた。
新手の敵戦車も出現して来た。
バン!
と轟音がしたと共に俺と俺の周りにいた隊員たちは通りに吹き飛ばされた。敵戦車の砲撃がすぐそこに着弾したのだ。
俺は仰向けに倒れたまま、か弱な拳銃で狙いもつけずに撃ちまくった。体のすぐ横に弾が着弾する。吹き飛ばされた他の隊員も俺と同じように抵抗するが、そのほとんどが被弾し絶命した。敵の戦車が履帯をひしめきながら接近してきた。他の隊員たちもほとんどが地面に倒れていた。残っているのは俺とウレダ小隊長とリスト、カール、カロンぐらいだろうか。
敵の戦車は距離をぐんぐん詰めてきて俺との距離がおよそ7メートルぐらいに差し迫った時だった。
上空からものすごい風圧が押し寄せた。
「こちら1-4到着、敵を指定してくれ!」
味方ヘリの到着だ。
「アンディ!」
左肩をと両足を真っ赤にしたウレダ小隊長が俺にグリーンスモークを渡してきた。
俺はすぐにピンを抜き、目の前に投擲した。
「1-4装甲車は全て敵だ!付近に味方がいても構わず撃て!」
俺は心の底から声を張り上げて言った。
「ラジャー!デンジャークロースデンジャークロース!」
バリバリバリ
真上でヘリがガトリングやロケット弾で敵を掃射し始めた。
目の前の戦車の砲塔が吹き飛び、ものすごい爆風が俺を襲った。
味方ヘリの援護射撃は数分間続けられ、付近にいた敵兵はすべて逃げ帰っていった。
「1-4から地上部隊、貴隊が最後だ。付近に敵兵の反応はない、今の内だ。」
「1-4了解。」
俺は起き上がり、ウレダ小隊長の元へいった。小隊長は壁にもたれ掛かっていた。
「俺の事はいい!お前らは駅へ行け!」
「小隊長!ダメです!」
カールが似合わない張り詰めた声で小隊長に言った。
小隊長はカールの胸ぐらを掴み
「駅まではおよそ1㎞、両足と片腕を被弾した隊員を連れ、周りが敵だからけの中どうやって撤退するつもりだ?」
カールは何も言い返せなかった。事実俺たちの隊は孤立寸前、時間との勝負だった。
「構うな、お前らは生き延びて戦え。俺は敵をここで迎えうつ。」
「小隊長」
「もう何も言うな、」
「で、ですが」
カールが説得しようとした時、
「もういいだろ!隊長は俺たちを逃がす為に戦うと言ってるんだぞ!こんなとこでグダグタせずに、俺たちはここで生き延びて、隊長の分まで戦うんだよ!」
今度はカロンがカールの胸ぐらを掴み怒鳴り散らした。カールは言葉を失っていた。
「カール。お前の気持ちは有難い。だけどなこんな俺からの最期の命令だ。
駅まで撤退し、敵を迎え撃て。アクチュア
ル、アウトだ。」
苦しそうな声で放たれた。
「了解!」
泣きじゃくりながらカールは敬礼した。それに合わせて俺たち数人も敬礼した。
「よし、行け。」
ウレダ小隊長からの最後の命令。皆振り返らずに駅の方向へと走り出した。
駅へ向かう途中後方から何発か銃声がしたが
すぐに降りしたる雪のなかへそれらは
消えていった。
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