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トヨの戦い
晴天の大雨
しおりを挟む自分が死ぬ夢を見た。雪が積もった戦場で、俺の552が敵の目の前で弾づまりをしてフルオートで撃たれる夢。
目覚めは最悪だった。真冬なのに額は汗まみれ、鏡を見ると目の下にはクマが出来上がっていた。まだ周りの連中は寝ている。カーテンから光の線が差し込んでいた。俺は壁に持たれ掛けて座った。目覚めが悪い割には二度寝したくなるあの感覚が襲ってこない。夢の中で弾づまりを起こしたあの552を持って眺める。
なぁ552よ、お前は楽でいいよな。口からつば出すだけで俺たちの役に立つもんな。それにお前は罪悪感の欠片も感じずに済むしな。なぁ俺はお前を使って何人殺した?いくつの人生を奪った?余裕あるだろ?お前。教えてくれよ。
俺は起き上がってカーテンを開けた。空は数日ぶりの晴天だった。朝日が雪に反射してとても眩しく感じられる。
「ロレーヌからどれくらい離れているんだろな」
おれは一人つぶやいた。窓を開けるとひんやりと冷たい空気が勢いよく流れ込んでくる。ただでさえ寒い部屋が余計に冷え込んだ。
下の広場を見ると既に何人かの隊員たちが何か作業をしていた。昨夜に比べてバリケードらしきものが広場前の通りに置いてあった。徹夜で陣地設営していたのだろうか?設営部隊には頭の下がる思いになった。しばらくは窓から外を見ていた。
コンコンコンと三回ノック音がしたと思ったら士官が部屋に入ってきて、他の三人を起こさないよう小さい声で俺に伝えてきた。
「外に配給糧食があるぞ。それといくつか伝達事項がある。メモできるか?」
士官も相当疲れているのだろう。目を充血させ俺よりも酷いクマを作っていた。
「はい。」
「よし、まずは広場にある配給所から糧食と弾薬などを補給。その後広場に集合し警戒態勢に移行する。今日から空軍部隊がやって来るぞ。あと余談だが国王が変わったそうだ。」
「え?国王がですか?」
「あぁ孫のアレア王女だそうだ。」
「アレアって、あのアレアですか?」
「あぁ、あのアレアだ。数年前急に話題になった、べっぴん王女の」
「といっても、まだだいぶ若いんじゃないですか?大丈夫なんですかね?」
「俺も最初はそう思ったが、どうやらアレア王女が空軍派遣を決定したらしいぞ。それと近辺の国々に応援要請も行なったそうだ。」
「本当ですか?」
「あぁ、実現すればだいぶ楽になるな。」
「クルツクやレイスからも応援は来るんでしょうか?もし来るのならジェネッサの機甲隊やヘリ隊を押し返せるかもしれませんね!」
「あぁ!そうだな!」
俺は士官と小声で盛り上がっていた。クルツクやレイスが応援として駆けつけてくれれば間違いなく対等にやり合える。彼らの実力はここらの国の中ではトップだしな。 士官はそう言い終えると部屋を後にした。
ただ俺は一人になってある事に気付いた。
クルツクやレイスが参戦したらより戦闘は激化していくのは間違いない。クルツクやレイス、その他の外国人どもは他国のための戦争で死ぬかもしれない.....応援部隊がやって来ると聞いて俺やあの士官はあわよくば形勢逆転ができると喜んだ。形勢逆転?相手を押し返す?その過程で生まれるもの.....
俺は大きく溜息をついた。窓に両手を置いて群青の空を見上げた。
士官と俺は、敵を押し返せる可能性が出てきた事を喜んだ。つまりは敵を、敵兵を、人間を殺して殺して押し返す事を喜んだんだ。純粋に。なんだろ戦争って。増援確保を懇願したであろうアレア王女も.........
祖国を守るためセグワの民を守るため。
俺はこの一言が持つ意味を初めて理解した。
戦争か。軍人なのに当たり前のことに気がつかなかったなぁ。ハルの死も、ウレダ小隊長の死も.....あの駅にいた兵士はこの事に気付いていたのか。死は死か。結局戦争が終わったら死者数の"数"でしか存在しない事になるからな。
ハァ、なんだろなぁ人って。
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