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トヨの戦い
戦火のクローバー.4
しおりを挟む<こちらシエラ1。ヴェランダ爆撃隊に通達。セグワの迎撃機は全て撃墜した。>
<シエラ1、助かるよ。コースは維持している間もなく投下地点だ。>
<ヤング中佐。さっきのタイフーン撃墜は見事でした。>
<どうもシエラ2。残念なのはバンクの連中より張り合いが無かったことだ。>
<奥に侵攻すれば自然と敵のエースも出てくるでしょう。>
<期待しとくよ。>
教会の陣地に戻り、山の方を見つめる。カデナ航空隊とは無線が途絶えていた。ただ山の向こう側から3機ほど俺たちの頭上を飛んで行ったが、あれは味方機だったんだろうか。
いずれにせよ陣地内には時間が経つにつれて緊張が高まって行った。自走対空砲が二両ほど俺たちの前の通りで停止して砲塔を上げた状態で待ち構えている。
遠くから飛行機の音が近づいてきた。
「飛行機が現れたら全部隊、全火力で迎え撃て。」
その無線で、全ての兵士が銃を空に構え始めた。皆んな、歩兵銃では射程圏外であることを知らないはずがないが、そうする他なかった。ありとあらゆる銃火器が空に構えられた。歩兵銃から固定式の重火器や野砲まで。
「来たぞ!!」
山の向こう側から1つの巨大な飛行機が現れた。そのすぐ後ろ側に数機従えている。その群をなした航空機の右側にも、また群団。左側にも。その群団のまた後ろにも、という形で飛行編隊が組まれていて、文字通り空を覆っていた。
その圧巻な光景に俺たちは恐れおののいていたかもしれない。ほとんど全容が明らかになったのに誰一人として発砲しなかったからだ。
そして、前方の自走砲が遅れて射撃を開始した事で我に返り、全軍が続いて応射した。
砲兵隊が、また必死に迎撃する。その様子は無線を介して伝わってきた。
「当たれ!当たれ!当たれ!
何やってんだ馬鹿野郎!予備を持ってこい!」
悲痛な叫びだった。
「修正射!ってー!」
砲兵隊の踏ん張りも虚しく敵航空機隊は悠々と飛行して郊外上空に入った。
「サー!敵爆撃機、爆弾槽が開いてます!」
双眼鏡を覗き込んでいた奥の観測兵が無線で伝えてきた。虚しかった。悔しかった。何もできずに、いたずらに抵抗する自分たちが。
爆撃機隊が爆弾を投下し始めた。それはハッキリと肉眼で見る事ができた。ただ、敵の投下した爆弾は着弾前で分裂した。
瞬間
奥の方、さっき2-1がいたところが大爆発して噴煙があがった。
「衝撃にーー」
2-1の近くにいた2-4からの無線が途中で消えた。
爆弾は次々と投下された。
「絨毯爆撃か。」
俺は撃つのをやめた。爆発が教会に近づいてくる。その度に衝撃と爆音、爆風が襲ってくる。
ドォン!ドォン!ドォン!
「来るぞー!!!」
その言葉を最後に、俺の目の前は真っ白になって後ろに吹き飛ばされたような感覚になった。爆音が近すぎて高音の耳鳴りが聴力を全て奪った。
またか........
視力と聴力を一時的に奪われていたが、感覚で分かった。俺はまたしても生き延びてしまったのだ。俺は目を開けようと意を決した。次の瞬間どんな光景が目の前に広がっていようが覚悟を決めた。
そして目を恐る恐る開ける。
茶色い噴煙と真っ黒な黒煙が目の前を覆っていた。焦げ臭い。初戦と同じだ。俺はどうやら仰向けになってる。すぐに四肢の確認をした。問題ない。感覚もある。そのまま顎を引いて正面を見た。噴煙で視界がクリアでは無かったが陣地が見える。とてつもないクレーターがいくつも出来上がっていた。
ここで俺はある1つの事を思い出した。
慌てて俺は顔を教会の方へ向けた。
全身の血の気が引いていく感じがした。心臓を内部からギュッと握られたような吐き気にも襲われた。
教会は、教会は見るも無残な形で倒壊していた。教会に行こうと力を振り絞るが中々体に力が入らない。
「あああああ!!!」
俺は多分今までで一番大きい声で叫んだと思う。起き上がろうとして、うつ伏せになってしまい、そのまま体が動かなくなったから。きっと黒煙のせいだ。そのまま意識が朦朧として、気が遠のいていった。
俺は、あの子供たちや市民たちの姿、顔が脳裏に浮かんだ。その光景が、俺を奮起させた。俺は手を伸ばせば教会にたどり着き、瓦礫の下敷きになったであろう人々を救える気がしてならなかった。
俺は残った力を込め精一杯手を伸ばした。
側から見れば、教会はお世辞でも近いとは言えない距離だった。
やがて俺の右腕も重力に負けてぐったりと垂れた。それと同時に再度意識が遠のき始めた。
「もう.....ダメ...」
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