Defense 完結 2期へ続く

パンチマン

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群青のハジヒロコウ

ハーグスの二〇三高地

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「おい、アンディー!大丈夫か?おい!」


真剣な顔つきのリストに起こされた。


「悪夢か?」


心配そうに肩に手をかけ話している。ぶっちゃけ悪夢なんかもう慣れてしまっている。
適当に相槌をうって起き上がった。雪も溶け始めてハーグズには緑の草々が目立つようになって来ている。トヨとはうってかわって雄大な自然が広がっている。俺たちは爆撃を受けてトヨから撤退し、熟練隊員として最終防衛線、ハーグス203高地にいる。もうロレーヌまで迫ってきている。前方の麓にいる機甲隊が見えた。平原だから戦車や軽装甲車などは思う存分戦力を発揮できるだろう。
 俺たち歩兵隊は塹壕やトーチカ、要塞で待ち構えている。平原から俺たちのいる高地のてっぺんまで設営隊が寝る間も惜しんで数ヶ月に渡って作り上げたらしい。砲兵隊も大口径の戦車砲や榴弾砲を装備している。

 塹壕内には休憩所的な即席の広場があった。そこに行ってみると木の板に無数に紙が貼り付けられていた。
  
安否情報の紙だ。
それぞれの紙に顔写真と名前、所属部隊名、生年月日、最後の目撃情報など書いてある。
その一枚の中にある紙を見つけた。

コーク・ニヴァンス

間違いなかった。顔写真も本人。ヘリでトヨに向かったのを最後に行方が分からなくなっている、と書いてあった。コークの周りの紙もヘリで向かう途中に行方不明になったと共通の事が書いてある。多分撃ち落とされたんだろうな。
 
塹壕の壁に立て掛けてある簡易なハシゴに足をかけ、顔を覗かせてみた。標高が少し高い高地からは辺りの自然が美しく見えた。

嫌な感じだ。

何となくだが感じた。この感覚、以前にも似たような事があった気がする。
俺はこの先に待ち構える運命を予測しながら俺の持ち場に戻った。戦車隊も今までにない規模で待機している、砲兵隊も、それに空軍も。それだけにこの戦いの重要度は前のどの戦いよりも高い事など一目瞭然だった。


「聞いたか?オーシアの連中、バンク戦線にいた主力部隊を送り込んで来たらしいぞ。」


ケインがタバコを持ち歩きながらやって来た。オンボロの机の上に置いてあった箱からマッチを取り出してタバコに火をつける。そして彼のヘルメットのゴーグルゴムで縛り付けていた、簡易型のマップを出して壁にナイフで突き刺した。


「俺たちがいるのはここだ。」


マップの中央少し右下をケインはペンで指した。


「比較的なだらかなこの一帯をおそらく敵は一気に戦車隊で最初は来るだろう。」


「そこは味方の砲兵隊に任せるしかないのでは?」


リストが言った。


「その通りだ。俺たちは、いわば最後の砦だ。ここが突破されればロレーヌに侵入を許すことになる。失敗は許されない戦いってわけだ。」


ケインがマップを険悪な顔つきで見ながら言った。


「俺の予測では敵は左翼から回ってくるだろうな。ここらは起伏が激しい一帯だ。稜線を活かしながら進んでくるだろう。そこでだ、いきなりだが、俺たちの分隊に新たに狙撃兵が加わることになった。」


ケインが手招きすると塹壕の角から1人の男が出てきた。


「どうも。ツバルです。一応トヨからの生き残りです。」


ツバル。どこかで聞いた事があるような気がしたが、トヨの戦いは思い出したく無かったからあまり考えなかった。それにしても狙撃兵というものは、細身でインテリな感じかと思っていたが、ツバルは長身で体つきも良く薄黒い肌が似合う男であった。
 オーシアのスナイパースクールとスカイラインのそれとを二つ卒業しており経歴は異質であるが、腕前はかなりのものであると言われているらしい。
 俺は よろしく と言い握手を交わした。少し照れた様子で目を合わしてはくれなかった。一通り説明が終わると、ツバルは足早にその場を去って行った。

その後ろ姿を見て俺とケインとリストは目を合わせて微笑してしまった。


「俺も負けてられない。」


リストが556を強く握って言った。そんな銃じゃ届かないぞとケインが失笑して言うと、ライフルケースから一丁のライフルを出した。


「ほれ、日国の貸与品だ。」


バレット...50口径の対物ライフルだった。少し大きめのスコープに二脚を装備したそれは普段目にしない俺たちにとってとても珍しい物だった。


「こ、これを俺が使うんですか?」


リストがすこし慌てた口調で言った。そうだよとまたしてもケインが失笑しながら言うとリストはケースから両手で持ち上げ、塹壕上に二脚を立てておいた。


「ツバルは使わないんですか?」


リストがスコープを覗いたりレンズを調整しながら言った。


「あぁ、アイツも使うだろ。知らねーけど。まぁ狙撃はお前とツバルに任せるよ。俺はコイツで見守っとくからよ。」


ケインが右手で塹壕潜望鏡を持って笑いながら言った。どこから持って来たのか分からなかったが、まぁ塹壕では力を発揮してくれるのだろう。

俺は塹壕から出て麓の広い草原を見つめた。すこし経てばここも地獄の戦場になるだろう。失敗は許されない戦い、勝つか死ぬか、その二択しか残されていないんだな。俺は小一時間ほどその場に立ち尽くしていた。








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