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群青のハジヒロコウ
シャーミュ会談
しおりを挟む「今日、スカイライン外交官とギルメシュ首相との会談がまもなくここシャーミュの官邸で行われます。警備は厳戒態勢が敷かれており、我々報道陣もうかつに近づく事が出来ません。ですが、予定通りならばまもなくスカイラインの外交官が到着すると思われます。」
「ありがとうございます。評論家のミラさんはどう思いますか?」
「そうですね。やはり本会談の最大の争点は、セグワでの戦争に関することではないでしょうか?クルツクは昔からセグワと親しい間柄でありますが、それと同時にスカイライン国はクルツク国最大の貿易相手でもあって、彼らの国にもクルツク企業が物凄い数いて、莫大な利益をもたらしていますからね~」
この会談は世界的にも注目を集め、現地には各国のメディアが集結していた。ライアンはストレイト島で、アレアはロレーヌで、その他大勢の首脳陣も事の成り行きに注目していた。
「あ!来ました。えー現在、あちら側から黒色の車両が数台やって来ました。えースカイラインの外交官と見られる男性が複数のボディーガードに守られ、官邸内に入って行っています。」
「エリック主任。ライアン主任からお電話です。」
ボディーガードが、エリックの耳元でささやき、携帯を手渡した。
「はい、エリックです。」
「あぁ、エリック主任。頼みましたぞ。」
「任しといてくださいライアン主任。ここでクルツクを止められたらレイスも自動的に止められますからね。」
「期待しているぞ。」
「ありがとうございます。では時間も無いので失礼します。」
エリックは衛士の誘導で会議室へと入った。扉を開けるとギルメシュ首相が立って迎え入れ、握手を交わした。
「エリックさん。今日はわざわざ、スカイラインからお越しいただきありがとうございます。そちら側の要望の通り、メディアは一切入れていません。」
クルツク政府はスカイライン政府の思惑に気づくはずもなかった。もちろんエリックがストレイト島からやって来ていたことも、今回の会談で全てが決まる事も。
「それでは始めましょう。」
ギルメシュがエリックに腰を掛けるように言って、会談が始まった。
「早速ですがギルメシュ首相、私はあなた方クルツク国がセグワ戦線に参戦する意思があるとお聞きしましたが、それは本当でしょうか?」
「まだ、ハッキリとは答えが言えない状態です。」
「あなたはどうお考えですか?」
「この島々の国家は昔から同盟的関係を築き上げて来ました。私はその流れに従うだけです。」
「つまり、参戦する可能性があると?」
「否定はできません。」
「そうですか。それは我が国にとっては非常に残念な結果です。我々は6年前の震災で多大な犠牲を払ったこの諸島の国家に対して莫大な支援金を送り、救援隊をも送って一日も早い復興を願って尽力して来たつもりです。それがどうでしょうか、我々が尽くして来た恩をセグワや日国、イーランカスの国々は仇で返して来たのです。貴国も他の島国同様に仇で返すのでしょうか?」
「それは確かにそうかもしれませんが、セグワはスカイラインに比べて小国ながらも、各島々に大国顔負けの支援を行い、我々諸島国家間のつながりをより強固にしたのです。ましてや隣国愛溢れるセグワ国を、無差別に絨毯爆撃した暴挙に走るあなた方のやり方には賛同しかねます。」
「そうですか、話は変わりますがギルメシュ首相。財政は回復して行ってますか?」
「ええ、我々は最大の貿易相手であるあなた方スカイラインのおかげで、ここ数年は右肩上がりとなっています。」
「震災後の借金は返せそうですか?」
「今後の景気動向が良いように行くのを願うばかりですね。」
「そうですか.....ギルメシュ首相。最後通告です。」
エリックは、数時間前バリアードに見せた物と同じ紙をギルメシュに手渡した。
黙々と読むギルメシュの顔色が曇った。
「ギルメシュ首相。我々は本気です。我々はこの戦争に、バンク国に勝たねばならないのです。それゆえに国際連盟にも加盟していないセグワなんぞに負けるわけにはいかないのです。」
「だ、だからといってこの紙に書いてある事を実行するのですか」
「我々は手段を選びません。どうしますか首相?我々に従うか、或いは......セグワを助け、自国の"資産凍結"を受けるか?」
「我が国が資産凍結など受けたら経済が行き詰まってしまいます。ましてや我がクルツクは貴国に沢山の企業があるわけです。それらが全て凍結されたら........凍結されたらこの国は終わってしまいます。」
「なら話は簡単なはずです首相。あなたが賢明な方であれば結論は1つしかないはずだ。」
エリックは口調を強めて畳み込んだ。ギルメシュはしばらく返す事が出来ずにいた。
「どうされますか首相?街を失業者で埋め尽くしたいですか?」
「我々に.....抗う力などありません。従うほか選択肢は無い。私はスカイラインに失望してしまいました。」
「クルツクに好かれるために政治をしているわけではありませんので。では、セグワには参戦しませんね?」
「.........しません。」
「さすがクルツクを再興させた首相。その名に似合う賢明さはお持ちのようですね。」
「このような横暴なやり方を世界は決して許すはずがありませんよ。」
「世界?笑わせないでください首相。今やこの世界の国力で最強なのはジェネッサ勢力の国々なのです。世の中は権力のある者が正義なんだ。世界が許すも何も我々がその世界自身なんですから。」
ギルメシュは右手を強く握りしめ、歯ぎしりした。スカイラインが最大貿易相手でなければ、スカイラインに自国の企業や資産が集中していなければ、運命ばかりを呪った。
「あ!今会談が終わったようです。官邸から外交官が笑顔でこちらに手を挙げています。そして今車に乗り、官邸を後にしました。首相は....見えませんね。」
「ミラさんどう思いますか?」
「そうですね。会談にしては、結構短い時間でしたね。今回は完全非公開の会談ですから何が話されたのかは憶測でしか分かりませんが、この早さですから両国が円満で何かの条約に合意したか、或いは一方的な押しつけがあったのかもしれませんね。」
ギルメシュは個室で、公用の固定電話である電話番号へと掛けた。
「もしもし、ギルメシュです。アレア陛下申し訳ありません。クルツク国は、INFでありながら貴国に金1つさえも送れないようにされてしまいました。」
彼が掛けたのはアレアの所だった。
「いえいえ、とんでもない。大丈夫です。どうか無理をなさらず国政に努めて下さい。」
「すみません。失礼します。」
ギルメシュが落胆する一方でエリックは勝ち誇った姿勢で彼も電話を掛けた。
「ライアン主任!やりました。資産凍結策が決まりましたよ!」
「よくやったぞエリック!これで諸島の最大の脅威を除けたな!」
「ええ!後はセグワが崩壊するのも時間の問題ですね。」
エリックの策で、INFの強国のクルツクとレイスの支援が事実上受けられなくなったセグワにとって、今後はイバラの道であることは火を見るより明らかであった。
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