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そして終戦へ
最後の皇帝
しおりを挟む都内での激戦は宮殿前まで迫って来ていた。
「参謀総長!」
親衛隊の隊員が文書を手にドアを勢いよく開けて入った。
「どうした!」
「先程ジェネッサから文書が送られて来ました。まだ中身は見ていませんが....」
イーベルは顔をしかめながら文書を受け取りパラパラとめくり始めた。
「陛下.....,」
近くに座っていたアレアは薄々感づいた様子で立ち上がった。イーベルがアレアに手渡してアレアはそれを何度も何度も見返した。その様子をイーベルは申し訳なさそうな顔で見つめていた。
「これは.....イーベル、今の我が軍の損害は.....」
「我が軍はまだ充分に戦えます。」
心配させまいとイーベルは気を張ったがアレアには効かなかった。
「イーベル。あなたの気持ちも分かる。けど本当の事を教えて。」
イーベル一度はうつむき、そしてアレアを見て重い口を開けた。
「我が軍はその3分の2以上が戦闘不能状態に陥り、首都陥落は時間の問題です。」
それを聞きアレアはもう一度文書を見た。しばらく誰も喋らず外の銃声だけが屋内まで届いた。沈黙の中、再び隊員が慌てながら入ってきた。
「ほ、報告!ジェネッサ側からのホットラインが!」
すぐにイーベルが、繋げ!っとその兵士に言った。すぐにその部屋の電話に繋がれてイーベルが出た。
「イーベル参謀総長殿ですか?」
「ええ、そうです。」
「文書は読まれましたか?」
「先程読みました。にわかに受け入れがたいものですね。」
「それは残念です。ところでアレア陛下はおられますか?」
イーベルはアレアの方を見た。視線で察したアレアはすぐにイーベルと変わった。
「変わりました。アレアです。」
「陛下殿、文書は読まれましたか?」
「ええ読みました。」
「これ以上、貴国の領土を荒らしたくはありません。潔く呑んで下さい。」
アレアは片方の手で力強く握りこぶしを握りながら、感情を抑えて言った。
「我々セグワは以前より中立の立場を取っていました。それもあなた方の勢力圏には一切の迷惑すら掛けていません。それなのに、それなのに何故あのような事が呑めましょうか。勝手に我が国を侵しておきながらあまりにも横暴ではありませんか?」
「そのような意見を求めてはいないのです。呑まないのであれば、南洋の艦隊に次なる命令を下すまでですが、どうされますか?」
アレアは部屋内にいる数多くの将校を見渡した。
「聞いていますか?アレア陛下殿?」
「少し....少しだけ時間をください。」
「構いませんが、あなたに忠誠を誓った兵士たちを無駄死にさせないようにして下さいね。」
そう言うと向こう側から電話を切った。
「陛下!」
すぐに将校らがアレアを見つめた。アレアは後ろにある窓から街の様子を見渡した。
窓の外側では多数の兵士らが駆け回り何やら指示を出していた。角から次々と担架に乗せられた兵士が運ばれてくる。アレアには虚しさすら感じられた。するとアレアは再び将校らに向かい合った。
「私は....私はこの国が大好きでした。かつて街には活気と笑顔が溢れかえっていた。」
突然の発言に少し間が空いたが、すぐに他の将校らも賛同した。
「それ故にこれ以上戦争で国民を傷つけたくないのです。私は.....私はもう、降伏するしか無いと思っています。」
「し、しかし陛下!降伏してしまうとこの文書の通り、このセグワはオーシアの領土になってしまいますが。」
イーベルがすぐに言った。
「イーベル....みんな、もう終わりにしましょう。これ以上戦場で戦う彼らの涙や家族を悲しませたくないのです。」
誰も言い返す事が出来なかった。そうしてアレアは再度電話を手に取った。
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