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そして終戦へ
親衛隊最後の作戦
しおりを挟むロレーヌ郊外
都市の外れにある田園に西へ西へと向かう親衛隊が居た。およそ50人程の規模だったが負傷者も多く実質戦えるのは34人程度だった。
「隊長。この後はどうしますか?」
総隊長は道端に座り込み休憩する隊員達を見回した。
「陛下は降伏したのか?」
「ええ。」
そう言い終わると総隊長は大きく深呼吸して、少し大きめな岩の上に立った。その様子を隊員が皆んな見ていた。
「ワシは最後の生き様をジェネッサの連中に見せつけてやるぞ。」
そう言うと総隊長はホルスターからガバメントを抜いた。すると鼓舞された他の隊員達も立ち上がり口々に互いを鼓舞し始めた。その景を見て隊長は頷きながら、都心の方向を見つめた。
「お前ら、覚悟はあるんだろうな?」
その問いに隊員達は怒号で返事をしてみせた。隊員達が意気揚々と盛り上がる中、負傷者の手当をしていた兵士たちを残るよう指示をして、それ以外の25人を率いて総隊長は再度都心に向けて出発した。彼らは国歌を歌いながら歩き外から見るとまるで死にに行く連中には到底見えなかった。
草原の丘に25人はうつ伏せになって正面の通りをやって来るジェネッサを待ち続けた。彼らはひたすら待ち続け、時折国歌や軍歌を歌い士気を保っていた。各々が残された時間を過ごした。総隊長は自らの日記に書いた出来事を振り返り、そして最後にピリオドをうった。総隊長はその日記を後ろの畑に投げ入れた。
「身につけないんですか?」
となりの副隊長が聞いた。
「ああいうのは後世に残した方が広まりやすいだろ?」
総隊長はニッコリと笑った。副隊長も、総隊長らしいですよと相槌をうち再び正面の通りを見た。やがて夜が徐々に明けて来たが、空はどんよりと曇っていた。
そんな時一台のジープがノコノコと通りにやって来た。ジェネッサの車両だった。
「俺たちの意地を見せろ!」
ギリギリに引きつけた所で稜線から飛び出して一斉に撃ちまくった。奇襲を受けた敵兵は慌てて数発応射して来たが、すぐに撃たなくなった。総隊長はそのジープに駆け寄り車内を覗き込んだ。
「4-4応答せよ。応答せよ。」
襲撃されたジープを司令部はいち早く察して部隊を向かわせ始めた。総隊長はすぐに全員に知らせて銃剣を着剣させた。
「滅びゆく亡国において、戦わずして迎える運命と、戦って迎える運命とでは後世に伝える影響が変わるであろう。もし我々が命をかけて挑めば必ず我々の子孫は再興し、そして我々を超越する。その日のキッカケに我々はなるのだ!」
総隊長は徐々に声を大にしていき、隊員達の士気を最高潮に仕立て上げた。右手を大きく突き出して声を張った。
うつ伏せで待ち構えていると正面から数台の車両と何十人もの歩兵隊がやって来た。緊張が高まる。総隊長は笛をくわえて25人全員を見渡した。
敵部隊が稜線に最接近した瞬間、総隊長は目一杯笛を吹いた。
隊員達は死をも恐れず叫びながら銃剣を突き出して敵に突進した。次から次へと破竹の勢いで激進して通りにいた敵をことごとく打ち破った。そのまま親衛隊は突き進み後方にいた本隊とぶち当たった。突然の突撃に動揺の走ったジェネッサだったが、すぐに反撃体制を整えて迎撃し始めた。
遮蔽物のない開けた土地で突撃する彼らは虫ケラ同然だった。次から次へと機関銃になぎ倒され、やがて25人は地面に倒れ込み、誰1人として動くものは居なかった。
その直後に大粒の雨が降り始めた。遺体から流れ出た血は雨で洗い流され、排出されたばかりの薬莢はあっという間に冷えた。
この突撃作戦はオーシア兵達の間でも語り継がれ、その場所に慰霊碑が建てられた。
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