Defense 2 完結

パンチマン

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権力者の宴

14 権力者の訪れ.4 訪問

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「終わった終わった。」


デモ隊の攻撃で、側面が凹んだパトカーに寄りかかった。一服しようと胸ポッケからタバコを取り出して口にくわえたその時、無線がなった。


<保安庁から各隊、VIP到着。繰り返すVIP到着。各隊、所定の配置につけ。>


「やれ狸親父のご到着だ」とケインは内心ほくそ笑んで、タバコに火をつけた。ケインは第2小隊の隊員を招集して武装するよう指示を出し、自身も車両内から少し年季の入ったM1911を取り出した。ちょうどその頃、州警の交通課が交通規制を始めた。赤色誘導棒を振りながら忙しそうに一般車の苦情に対応しているのが伺える。気の毒に思いながら見ていると、隊員らが準備を完了してケインの前に現れた。


「隊長。指示をお願いします。」


「よし、じゃあ、あの辺りで立っとけ。立ち番だな。」


ケインは交通課の警官らがいる辺りを指差した。それを見るや否や隊員が質問した。


「あそこは、州警だけで良いのでは?」


「いいや、あそこに行くんだ。あの運転手を見てみろ。ありゃ警官の説得じゃあ動かんよ。だからお前らが行けば引くんだよ。本気だって思わせるんだ。」


「そ、それで動かなかったからどうすれば?」


「どうするもなにも、目で威圧すれば良いじゃないの?ダメだったら強めの口調で注意喚起、それでもダメならそのライフルで脅しな。そしたら退散してくから。」


「わ、分かりました。」


「心配すんな。それが終わったら第1小隊の連中に合流させるから。」


ケインがそう言うと、隊員達は銃をぶら下げて一般車両の前に立ち塞がった。やはりケインの思惑通り、ドライバーは何か吐き捨てるように文句を言いながらも退散して行った。
 その後も次々とやってくる車を追い返して、州警から礼をされると隊員達は帰ってきた。


「隊長、終わりました。」


「よぉし。そんじゃあ、シャロンさんとこ行ってきな。俺がさっきの間に言ってあるから。ちゃんと銃にはセーフティ掛けとけよ。それと、メディアもいるから名に恥じぬ行動をするように。」


ケインはライアンが泊まる予定の新都ホテルの方を指差して言った。すると隊員達は敬礼して新都ホテルの方へ向かって行った。1人になったケインは指揮車内のラジオをつけた。やはりどの局もライアンが訪問してきた事を言っている。それによるとまだ空港を出ていないらしい。それだけ聞くと、すぐに切って、ケインも新都ホテルへ向かった。行ってみると入り口付近には既に報道陣が詰めかけていて、それぞれに放送を開始しているようだった。玄関口には警衛課の隊員達がスーツ姿で守りを固めていた。特殊警備課の隊員達もホテルの周囲を警備している。
ケインが報道陣の群れの後ろ側からその様子を傍観していると、 「やぁケインさん」とファレスが横から声を掛けて来た。ファレスはケインの性分に慣れてしまっていて、敢えて、その事には触れなかった。


「あぁ、ファレスさん。捜査課もここに用があったの?」


「ここって言うか、あんたに用があってね。俺と前、MOX社に行ったろ?あの時の社員名簿覚えてるか?」


「ああ、一応ね。あの時の社員名簿はあの後コピーとらせて貰ったしね。それがどうかしたの?」


「あんたの勘が当たったんだよ。見ろ。」


ファレスはそう言うと2枚の紙を出した。


「こっちは、前に訪問した時の社員名簿。そしてこっちは最新のものだ。見ろ。この真ん中の列の右らへんの人間が違うんだよ。」


「お?ホントだ。それに、この3人はインタビュー担当組じゃないか。」


「そう。入れ替わったのがインタビュー3人組。それに、この3人はオーシアの公安調査庁が指名手配していたんだよ!ウチの課長もあんたの事を褒めてたよ。」


「だとしたら本部に伝えなきゃ。今回の訪問の総本部は、ファレスさん方の州警でしょ?どうにかならないの?」


「その事は課長が既に連絡を何回も入れてくれてるんだが、どうも対策本部は動いてくれなさそうでね。困ったもんだよ。」


「そんな。明らかな証拠じゃないか。どうすんの?刺されたりしたら。」


「俺や課長は忠告もしたさ。けどね~。」


2人で話をしていると、サイレンの音が響き初め、前にいた報道陣が慌ただしくカメラを回し始めて、辺りは一挙に騒がしくなった。


「お出ましだな。あんたら特警は、引き続き警備活動だろ?」


「まぁね。ファレスさんは?」


「俺はもう一回対策本部に出向いてくるよ。」


そう言うと、ファレスは州警本部の方へと向かおうとした。


「ちょっと、ファレスさん?」


ケインがすぐに呼び止めた。


「なんだい?善は急げだろ?」


「ファレスさんに調べてもらいたい事があるんだ。」


ファレスは胸の裏ポケットから手帳を取り出した。


「その調べてもらいたい事ってのはなんだい?」


「マクロス財閥の事を全般、調べてくれないかな?」


「マクロス財閥を?そいつはまたどうしてだ?」


「ちょっとね。」


渋々了解して、ファレスは手帳に殴り書いた。そうして、ファレスは対策本部の方へと向かって行った。
 別れたケインは後ろから報道陣を見渡した。端から端まで何往復も見渡した。すると、群衆の先頭付近に黄緑のジャケットで背中にMOXと書かれたカメラマンがいたのが一瞬見えた。だが、すぐにライアンがホテル内に入って行くのを撮ろうと、報道陣が過熱したために、すぐに姿は消えた。ライアンがホテルに入った後に、報道陣が解散し始めたのを狙ってケインは報道陣の群れを掻き分けてMOX社員らしき人物の所へ行った。
 そして、ケインは声を掛けようと思い、その男の肩を叩いた。振り返ってきた男は、新しく社員名簿に書きかえられていたカメラマンだった。そのカメラマンはケインのジャケットの胸に付けられた保安庁バッジを見るや否や、肩に置かれた手を振りほどいて人混みの中を全力で逃げ出した。

してやられた!

ケインはすぐに追おうとしたが、他の会社のカメラマンに思いっきりぶつかり、玄関前に転がり込んだ。すぐに態勢を立て直して、逃走して行った方角を見た。すると黄緑色のジャケットが、人混みに紛れて行くのが見えた。ケインは再度追いかけ始めて、人混みの中を急ぎながらも慎重に掻き分けて走った。そんな中、少し前を行く黄緑のジャケットが左に曲がるのが見えた。ケインは一か八かに賭けて、すぐ裏路地を左に曲がった。狭い裏路地を颯爽と走り抜けて、追って行く。そこまでしていると、辺りの警備に従事していた特殊警備課や警官らも不審に思ったらしく、ケインの後を追い始めた。
 そして遂に裏路地を左折して走っること十数分。ケインの予想通り、角から黄緑色の上着をきた男が飛び出してきた。ケインは反射的に腕を掴み、そのまま技かを掛けて、男を路上に倒した。すぐに倒れた男を抑えつけた。暴れる男を必死に抑えていると、すぐに後ろから追ってきていた警官らが息を切らしながら到着した。


「何をしている!早く手錠を!」


ケインは荒々しく言った。


「何を言っているんだ?」


警官は非常に困った顔をして、ケインを見ていた。その瞬間ケインは我に返った。

しまった。この男の事は俺とファレスさんしか知らないんだ。

すぐに警官はケインを男から引き離して、男を起き上がらせた。その男はケインの顔を見て嘲笑して、警官の容体を案ずる声を無視して、その場から離れて行った。ケインはそのまま、サザールのいた広場に引き連れられた。そこにつくと、カンカンに顔を膨らました幹部職員がケインを睨みつけるように見ていた。


「君は何て事をしたんだ!全く関係のない放送会社の職員を、勝手に暴力で制圧して!何を考えているのだ!」


しかし、ケインは落ち着いた口調で反論した。


「あの男、ロレーヌ州警の捜査課が提出した書類に載っていた、不審な男です。あの男は間違いなくこの訪問で仕掛けてくる。私はそれを阻止しようとしただけです。」


「何を言ってるんだ。あの書類はまだ正式に受理されていないだろ!」


「何をって、あの書類の3人組は公安調査庁が断定している、れっきとした手配犯ですよ?それに捜査課長からも再三の通達があったはずだ。そこまで手順を踏んでいるのに、なぜ取り押さえることがいけないんですか?」


「上層部の命令も受けずに勝手にしておいて、何を言うか!まあいい。特殊警備課課長の嘆願もあって、君を今のところは現場に留めておくが、その後は覚悟しておくんだな。君の処理については、しっかりと検討させて頂こう。」


そう言うと、幹部は立ち上がって、黒のセダンに乗り込んで、去って行った。
 するとシャロンが後ろからやって来て、ケインを、呼んだ。


「ケインさん。なんで、あんな事したの?」


「なんでって、公安系公務員の当たり前の事をしただけさ。」


「当たり前って、何ら証拠は無いんじゃないの?」


「証拠なら揃ってるさ。公安調査庁だって指名手配していた男なんだから。」


それを聞いたシャロンは不審に思った。


「だったらなぜ、上層部は捕まえようとしないの?」


「俺にも分からない。けど、俺はもう、お役目御免だわ。シャロンさん、嘆願、ありがとね。この件が終わったら俺もきっと僻地へ左遷さ。」


「そうね......」


シャロンや周りの特警の課員の辺りを重い空気が立ち込めた。

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