Defense 2 完結

パンチマン

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消えゆく存在と国家

31 暴かれた存在

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襲撃から数週間経ったある日、リストは自分の本来の立場をすっかりと忘れ去っていた。その日もICICLE隊員たちと日を過ごしていた。しかしその夜、リストの電話が鳴った。

『リスト!貴様何を考えているんだ!』

相手は州警の課長だった。

『すぐに帰還せよ。貴様には聞きたいことが山ほどあるからな!』

リストは我に返った。そうだ、俺は警察官だったんだ。

『ですが、まだ続行した方が』

『黙れ!貴様自分の立場を忘れたんじゃないだろうな。』

リストは一方的に切ってマナーモードにして、携帯をしまいこんだ。そしてリストは屋上を離れて中に入った。隊員が大勢いる待機所の入り口で足を止めて見回す。俺が最初に来た時は、捜査官としての自覚と意識があった。ICICLEコイツらの非を暴いてやろうと意気込んでいた。けど、今はどうだろうか。彼らは悪か?彼らを全否定してしまうのは正義なんだろうか。

「どうしたリストー?浮かない顔してからよ。」

立ち尽くすリストを不思議に思った隊員が尋ねた。

「いや何でもないよ。」

リストは作り笑顔で受け答えした。だが入らずに振り返って待機所を出た。強く拳を握りながら再び屋上へと向かった。屋外には月の影が出来上がっていて、リストの心情とはまるで似合わない光景が、そこには広がっていた。しばらく1人で自問自答を繰り返していると後ろから既に聞き慣れた声がした。

「ここにいたんだ。やっと見つけたよ。どうしたの?」

レイだ。この場で1番会いたくなかった存在でもある。

「いや外に出たいと思っただけだよ。ほら綺麗な夜空じゃん。」

リストは普段全く関心のない事を焦ったばかりに口走った。

「そ、そうだよね。ほら月も綺麗だしね。」

不思議に思ったレイも変に気遣ったようだった。変に重い空気が流れる。リストにとっては地獄のような時間だった。

「大丈夫?なんかすごい辛そうな顔してるけど。」

レイがリストの顔を覗き込むように見た。リストはすぐに顔をそらしてレイの前に手をかざした。

「大丈夫なんだ。」

レイは少し戸惑いながらも頷きながら引き下がった。また間が空く。リストはその間にも思考し続けていた。それもこの女が横にいるおかげで余計に考え事が湧き続けていく。少し前に捜査の一環で聞き出した彼女の意思に触れたその日から俺は変わったのかもしれない。リストは大きく、しかしレイには気づかれないようにため息した。

「ねぇ、そういえばさあ。私リストがどこからやって来て、なんのためにICICLEに入ったのか聞いてなかったね。初心に戻って教えてよ。」

突然レイが言った。それもこちらの心の内を読んでいるかのようにジャストミート過ぎる会話だった。

「その質問に答えないといけない?」

リストは小さめの声で言い、それを聞いたレイは少し笑いながら言った。

「どうしたの?まぁ、言いたくないのなら別にいいよ。」

リストは心の内で、理由は分からないが自責の念に陥っていた。

「でもそんなこと言われたら知りたくなっちゃうな~。」

レイがからかうように言ってくる。もうダメだ。リストはレイから離れた。レイが急なリストの動きに戸惑いを隠せないでいた。

「やっぱりおかしいよ。どうしたの?」

リストはレイの問いかけを一切無視して屋内に入って行き、誰もいない室内に電気もつけずに入った。胸が熱くなっている。リストは椅子に座って携帯を取り出した。マナーモードにしていたそれの待ち受けに何件もの不在着信が入っていた。リストは大きく深呼吸して電話をかけ直した。するといきなり課長の怒鳴り声から始まった。

『貴様、帰ってきたら覚悟しておけ。命令に背き、不当に破壊活動の扶助も行いおって。』

『ですが課長』

『黙れ!言い訳など聞きたくないわ!明日の正午までには帰還しろ。いいな?』

リストは中々了解出来なかった。業を煮やした課長はさらにつめ寄る。

『貴様は治安を守る警察官だろうが!なんでそんな事も分からないんだ!自分の口で言ってみろ!お前はなんだ!ICICLEか?』

『....警察官です。』

『分ったならさっさと命令に従え!明日の正午までに帰還しろ!身近な署でいい!復唱しろ!』

『明日の正午までに帰還します。』

『裏切るなよ。』

そう言われてブチ切れられた。リストは酷く後悔した。だが、そんな彼に追い打ちをかける出来事が起きた。
 ドアが開く音。リストは慌てて振り返った。リストは歯ぎしりした。レイだった。レイはリストがいわゆる裏切り者である事を知ってしまった。今にも泣き出しそうな顔をしている。リストは何も言えなかった。

「い、今のって、本当なの?」

レイが震わせながら言った。

「....本当だ。」

「......酷い。じゃあ、今まで騙してたの!?私や、他の隊員たちの想いや願いもあなたにとったらどうでもいい事だったのね!」

「違う!俺は!」

「うるさい!」

レイは勢いよくドアを飛び出していった。リストは携帯を叩きつけた。クソくらえだ。リストは液晶が粉々に砕け散った携帯を閉まって、レイの後を追おうとしたが、結果は変わらないと決めつけて、建物の外に出た。
 リストは歩く。最初にレイと出会った所。拠点から街を一望できる場所。雪を踏み越えてその場についた。リストは1人で夜景を眺めていた。デカイ建物なんて1つも無いくせに、放たれる照明が見せかけの感動を誘惑していた。そんな時後ろから雪を踏む音がした。振り返るとレイがうつむきながらこっちに歩いてくるのが見えた。すると、レイが顔を上げて気がついた。レイがリストを見るやいなや戻ろうとした。

「待ってくれ!レイ!」

レイが足を止めた。

「話を出来ないかな?」

リストがそう言うと、レイは顔を合わせず歩み寄ってきた。

「レイ....聞いて欲しいんだ。俺は、俺は確かに州警の警察官で潜入捜査官としてICICLEにやって来た。最初は、君たちを検挙するために活動していた。手に入れた情報は、その大半は本部にも流した。けど、君と関わってから俺は自分のしている事が本当に正しいのかどうか疑うようになった。俺は君が想うこの島に惹かれていったのかもしれない。俺は昔君が保安庁にいた時と同じように、もう二度と戦争を起こさない平和を作るために警察官として働いていた。けど、俺は気づいたんだ。俺が守ろうとしている物は実は建前だけ立派な空虚なものなんだって、俺は君が本気で思う、目指す世界こそが真の平和だと実感している。気がつけば俺は本部の事なんて忘れてICICLE隊員になったつもりでいたんだ。そんな事していたバチが今当たったんだろうな。」

リストは胸の内を全部吐き出した。レイはうつむいて目をつむり、そして顔を上げてリストを見た。

「私は、私は父を戦争で亡くして、母を私の勤めていた保安庁が殺した。この気持ちは誰にも理解されてこなかったし、私の心に永遠に刻まれた傷だと自分でも思っていた。私はあなたなら心の底から信頼できると思っていた。なのに....ひどいよ。」

リストはただ謝る事しか出来なかった。許しなんか求めることは決して無かった。

「これからどうするの?」

レイはリストに聞いた。

「まだICICLEに居たいんだ。上手くは言えないけど、俺だって5年前は命を張って国防に徹して来た兵士だったんだ。俺は君の言った、この島の真の平和を達成したいんだ。」

「信じてもいいの?」

リストはレイの手を取った。

「信じてくれ!」

強く握りしめた。寒さでヒンヤリと冷たい手だった。そこからレイは何も答えず、建物の方へ歩いていった。後ろ姿を闇夜に消えるまでずっと見ていた。時折目をこするような動きをしていた。リストは大きく深呼吸して、また街を見下ろした。

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