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第18話 草毟り1
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「何やってんだよ」
森を歩く冒険者達の1人が道端で薬草を採取していた。
「薬草を見つけたので、採取してるんだ」
「ちっ、そんなの『草毟り』に遣らせればいい、俺達は冒険者だ。モンスターを倒してなんぼなんだよ」
「そっかぁ、小銭を貰えるんだけどな?」
「どうせ、買い叩かれて銅貨2、3枚にしかならねえよ」
「それもそうかぁ」
低ランクの冒険者達は薬草の採取を遣らなくなった。採取の仕方が適当で、保管が雑な為、常設依頼で提出する薬草は状態が悪く買取りの値段が極端に安くなるのだ。
ある日、受付でソウタの後ろに並んだ冒険者が、ソウタの買取り値段を盗み聞きして、ビックリした。
「ちょっと待ってくれ、何でソイツの薬草だけ、そんな高額なんだ?」
受付で買取り中のソウタと受付嬢カモリナの会話に割り込んだ冒険者。
「状態が最上級で指名依頼だからよ」
カモリナは素っ気なく答える。
「同じ薬草じゃねえか? 5倍はおかしいだろう!」
食い下がる冒険者。
ソウタは冒険者が手に持っていた薬草をチラ見して、その状態の悪さから「成る程」と納得するが、ここで口を挟むと面倒な事になりそうなので、無言で様子を見る事にした。
もっとも、ソウタはコミュ症なので、受付嬢でもカモリナ以外とは話をしなく、特に冒険者とはまともに話した事がないし話せない。それがまた冒険者達から誤解を生む原因なってるのだが、ソウタにはそんな事を知るよしもない。
冒険者達は薬草を手掴みで毟り、バッグに入れる。その上から、討伐したモンスターの素材を押し込む様に入れる。
当然、薬草は潰れるし、モンスターの素材の臭いや血肉などが染みる。結果受付に提出する頃には最悪の状態なっている。
冒険者が手に持った薬草を鼻を曲がる思いで、顔をしかめて見るカモリナ。
獣人のカモリナは、匂いに敏感なので、ゴブリン臭い薬草は大嫌いだ。
「そんな潰れてゴブリンの血肉が滲む薬草を、高く買い取れる訳ないでしょ! そんな薬草では、低レベル回復薬しか作れないわ」
「あのなぁ、俺達は冒険者なんだ。モンスターを狩るのが主な仕事だ。モンスターの素材と一緒になるのは仕方ないだろう」
「仕方なくないわよ。これがソウタくんが採取した薬草よ。これと同じ状態なら高額で買い取れるわよ」
カモリナが冒険者見せたソウタが採取した薬草は、根元をナイフで綺麗に揃えて切ってあり、採取したての様に瑞々しくどこも潰れたり、傷がついたりしていない。
「ちっ……」
冒険者は舌打ちして、薬草をカウンターの上に放り投げ、受付を離れた。
この話は瞬く間に悪意を伴って冒険者達に広まった。
「アイツだけ薬草の買取り額が高いんだ」「モンスターを狩らないから薬草の状態が良いんだ」
「草毟りしか能がない癖に……」
こうしてソウタの二つ名は、嫉妬がこもった悪評と共に、密かに『草毟り』という名で定着していた。
陰で『草毟り』と言われながらも、ソウタの冒険者生活は数年が過ぎた。
その頃には冒険者達は全く薬草の採取をしなくなっていた。中ランクと高ランクの冒険者達は、元々小銭にしかならない薬草採取はしないし、低ランクの冒険者達はソウタに嫉妬し、「薬草採取は『草毟り』の仕事だ」と揶揄して、馬鹿にする始末。
しかし、ソウタが大量の薬草を定期的に納品する為、都市もギルドも全く問題にはならなかった。
そして、ソウタはDランクに昇格した。
森を歩く冒険者達の1人が道端で薬草を採取していた。
「薬草を見つけたので、採取してるんだ」
「ちっ、そんなの『草毟り』に遣らせればいい、俺達は冒険者だ。モンスターを倒してなんぼなんだよ」
「そっかぁ、小銭を貰えるんだけどな?」
「どうせ、買い叩かれて銅貨2、3枚にしかならねえよ」
「それもそうかぁ」
低ランクの冒険者達は薬草の採取を遣らなくなった。採取の仕方が適当で、保管が雑な為、常設依頼で提出する薬草は状態が悪く買取りの値段が極端に安くなるのだ。
ある日、受付でソウタの後ろに並んだ冒険者が、ソウタの買取り値段を盗み聞きして、ビックリした。
「ちょっと待ってくれ、何でソイツの薬草だけ、そんな高額なんだ?」
受付で買取り中のソウタと受付嬢カモリナの会話に割り込んだ冒険者。
「状態が最上級で指名依頼だからよ」
カモリナは素っ気なく答える。
「同じ薬草じゃねえか? 5倍はおかしいだろう!」
食い下がる冒険者。
ソウタは冒険者が手に持っていた薬草をチラ見して、その状態の悪さから「成る程」と納得するが、ここで口を挟むと面倒な事になりそうなので、無言で様子を見る事にした。
もっとも、ソウタはコミュ症なので、受付嬢でもカモリナ以外とは話をしなく、特に冒険者とはまともに話した事がないし話せない。それがまた冒険者達から誤解を生む原因なってるのだが、ソウタにはそんな事を知るよしもない。
冒険者達は薬草を手掴みで毟り、バッグに入れる。その上から、討伐したモンスターの素材を押し込む様に入れる。
当然、薬草は潰れるし、モンスターの素材の臭いや血肉などが染みる。結果受付に提出する頃には最悪の状態なっている。
冒険者が手に持った薬草を鼻を曲がる思いで、顔をしかめて見るカモリナ。
獣人のカモリナは、匂いに敏感なので、ゴブリン臭い薬草は大嫌いだ。
「そんな潰れてゴブリンの血肉が滲む薬草を、高く買い取れる訳ないでしょ! そんな薬草では、低レベル回復薬しか作れないわ」
「あのなぁ、俺達は冒険者なんだ。モンスターを狩るのが主な仕事だ。モンスターの素材と一緒になるのは仕方ないだろう」
「仕方なくないわよ。これがソウタくんが採取した薬草よ。これと同じ状態なら高額で買い取れるわよ」
カモリナが冒険者見せたソウタが採取した薬草は、根元をナイフで綺麗に揃えて切ってあり、採取したての様に瑞々しくどこも潰れたり、傷がついたりしていない。
「ちっ……」
冒険者は舌打ちして、薬草をカウンターの上に放り投げ、受付を離れた。
この話は瞬く間に悪意を伴って冒険者達に広まった。
「アイツだけ薬草の買取り額が高いんだ」「モンスターを狩らないから薬草の状態が良いんだ」
「草毟りしか能がない癖に……」
こうしてソウタの二つ名は、嫉妬がこもった悪評と共に、密かに『草毟り』という名で定着していた。
陰で『草毟り』と言われながらも、ソウタの冒険者生活は数年が過ぎた。
その頃には冒険者達は全く薬草の採取をしなくなっていた。中ランクと高ランクの冒険者達は、元々小銭にしかならない薬草採取はしないし、低ランクの冒険者達はソウタに嫉妬し、「薬草採取は『草毟り』の仕事だ」と揶揄して、馬鹿にする始末。
しかし、ソウタが大量の薬草を定期的に納品する為、都市もギルドも全く問題にはならなかった。
そして、ソウタはDランクに昇格した。
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