5 / 42
第1章 俺が少女漫画のヒロインに!?
俺、実は男なんだ……
しおりを挟む
「きゃー! 鬼塚くーん! こっち向いてー!」
「鬼塚くんー! かっこいい~!」
綾小路と南雲とのエンカウントを終えてようやく帰路についたところで、悲鳴のような歓声が耳を貫いた。
黄色い歓声は、廊下の先にいる数人の女子のものだった。
四階の窓から身を乗り出して、外にいる誰かに手を振っている。
鬼塚くん……?
嫌な予感がしながらも、彼女たちの視線を追う。
案の定、外を歩いている鬼塚の姿。
「ウルセェ!」
鬼塚は彼女たちを見上げて怒鳴り散らかし、校門へと去ってしまった。
「きゃーーー!!」
それにまた歓声が上がる。
なんだかメロメロのご様子だ。
な、何がいいんだ、あの男の……!?
彼女いない歴=年齢の俺には、女子という生き物と、彼女たちが好む男の良さがまったくと言っていいほど理解できない。
乱暴な男がモテている嫉妬に、歯を食いしばりながら俺は校門へ向かった。
俺はこの学校──私立星空高等学校の一年生だ。
一年生の教室は四階にずらりと並んでおり、登校も下校も一番歩かされる学年となる。
なかなか広い学校で、グラウンドもテニスコートもバスケコートもある。
地元では、なかなか名の知れた高校なのかもしれない。
さて。
「ここはどこだ……?」
校門を出たはいいが、秒で道に迷った。
なんせ来た道と帰る道は景色が違うんだから、方向音痴には辛いものがある。
家のそばに派手な青色の看板をしたドラッグストアがあったことだけは、記憶に残っている。
そのドラッグストアにさえ辿り着けば、道が分かるんだけどな……。
俺は行ったり来たりを繰り返して、登校時に通ったであろう見覚えのある景色を探していた。
「あ」
「お」
ばったり。
鬼塚がコンビニから出てきた。
俺は知らない人のふりをして、回れ右をする。
しかし、鬼塚はそれを許してはくれなかった。
普通に肩を掴まれた。
なんだこいつ、馴れ馴れしいな。
「おい、女子に乱暴すんじゃねえ」
パンッと、その手を振り払う。
「なら、もっと女子らしく振る舞え」
ぐうの音も出ない。
鬼塚は、フンッと鼻で笑って、
「知り合いに挨拶くらいしねぇのか」
面倒臭い親戚みたいなことを言い出した。
こちとら、お前と知り合いになった覚えはない。
「コンニチハ。ソレデハ、サヨウナラ」
流れるように、俺は鬼塚に背を向ける。
「ロボットか、てめーは」
「ぐえ」
後ろ襟をつかまれ、俺は為す術もなくその場にとどまった。
観念して振り返り、鬼塚と向かい合う。
「何か、御用でしょうか……?」
ようやく、俺は愛想笑いを搾り出した。
鬼塚は、俺の早くどっか行けオーラをものともせず話し続ける。
「なんでお前ここにいんの? 家こっち?」
「青い看板の、大きなドラッグストアがあるほうです……」
「じゃあ、学校挟んで、反対側だけど?」
「…………」
「…………」
沈黙が流れる。
「……お前、まさか、学校からの帰り道で迷子になったのか?」
本物のアホを見るような目を向けられた。
俺は無言で踵を返し、来た道を戻る。
そうすれば、もう一度学校に戻れるはずだ。
「そっちは学校じゃねぇぞ」
「…………」
もう一度、踵を返す。
鬼塚の横を通り過ぎようとすると、再び、後ろ襟をつかまれた。
「ぐえ」
何回も潰れたカエルみたいな声を出させるな。
「待てって。お前、すげぇな、マジで」
鬼塚は、もう笑いを堪えきれていなかった。
何も言い返せない自分が悔しい。
「そのドラッグストアまで案内してやるから、ついてこいよ」
「…………」
従うしかない。
俺がうなずくと、鬼塚は歩き出した。
帰りが遅くなれば、きっとあのお母さんに怒られる。
鬼塚の広い背中を急ぎ足で追う。
身長差から発生する歩幅の違い。
鬼塚の一歩は俺の二倍近かった。
足の回転数を上げることで、引き離されないよう、なんとか食らいつく。
「……お前は、他の女子みてぇに、俺に媚びねぇんだな……」
唐突に、鬼塚が失礼なことを言い出した。
「は?」
媚びる?
誰が?
俺が?
お前に?
「自惚れんなよ」
おっと、本音が。
鬼塚が足を止めて、ギロリと俺を睨む。
まずい、力量差を忘れて喧嘩を売ってしまった。
「急に強気じゃねぇか、おい」
「オニヅカクン、カッコイー」
「都合悪くなるとロボットになんのやめろ」
見え透いたゴマスリは、通用しないようだった。
鬼塚はまた歩き始める。
どうやら、生意気な口は見逃してもらえたらしい。
……くそ、鬼塚が速ぇ。
五分ほど歩いて、早歩きゆえに多少息が上がってきた頃──
「おいおい、鬼塚ぁ! なに、お前女連れてんだよぉ!」
スキンヘッドの他校の男子生徒が鬼塚に絡んできた。
その数、五人。
「チッ、めんどくせぇのが来たな」
ちらりと鬼塚を盗み見る。
整った顔立ちをしかめて、心底厄介そうな態度だ。
……まぁ、不良同士のことだ。
きっとくだらない因縁があるのだろう。
俺には関係ないがな!
「あ、じゃあ、お友達が来たみたいだから、俺はこれで……」
俺は手早く美少女スマイルで取り繕って、退散しようとした。
しかし、やはりというか、そう上手くいくものではなかった。
なんせ、ここは少女漫画の世界なのだから。
「おい待てよぉ!」
「ぎゃっ」
他校の不良の一人が、俺の腕を乱暴に引っ張った。
抵抗も虚しく、あっさり両手首を後ろに回される。
おいおい、これって人質ってやつ?
「鬼塚ぁ! この女に痛い思いさせたくなかったら、大人しく俺らのサンドバッグになりなぁ!」
「汚ねぇ……!」
鬼塚は判断に迷う素振りをした。
いや、悩むな悩むな。
俺とお前の関係なんて、悩むほど深くもないだろう。
「へっへ、こうなりゃ、お前もおしまいだなぁ?」
鬼塚は呆気なく不良のひとりに、後ろから羽交い締めにされてしまった。
そんな鬼塚に、別の不良が腹パンをお見舞いする!
「うぐっ!」
鈍い音と呻き声をあげて、鬼塚がパンチに耐える。
二発、三発と、鬼塚を痛めつける手は止まりそうもない。
交代で殴り続ける不良の一人が、鬼塚の胸元に光るものに気づいた。
「なんだよ、このネックレスは!?」
「触んな!!」
ネックレスに手をかけられると、鬼塚の様子が豹変した。
どうやら、大事なものらしい。
「ダッセェな!」
その様子を見た不良は、ニタリと笑みを浮かべてそのネックレスを引きちぎった。
「テメェ!!」
ドゴォ!
鬼塚は一瞬で拘束を解き、背後にいた一人の腹をワンパンした。
「ぐはっ……!」
その一撃で地面に沈む不良その一。
「おい、暴れるな! こいつのこと、忘れたのか!?」
俺の腕を捕える不良その二が、震えた声で鬼塚に呼びかけた。
「……っ」
鬼塚は拘束されている俺と目が合った途端、大人しくなった。
「そうだよ、そうしてればいいんだ、よっ……!」
ガツッ!
不良その三が、鬼塚の頬を殴る。
鋭い眼光で睨みつけるだけで、鬼塚はやり返さない。
……さすがにバツが悪いぞ。
俺を拘束する係の、不良その二の位置を確認した。
喧嘩は慣れてないが、したことないわけじゃない。
「ふんっ!」
「うがっ!?」
不良その二の下アゴ目掛けて、頭突きを食らわせた。
ズシャァ!
ちょうどいいところに入ったのか、不良はそのまま目を回して地面に倒れ込む。
「石頭、舐めんなよ」
卑怯なことしやがって。
ピクピクと痙攣したまま、動かなくなった不良その二に向かって吐き捨てる。
俺の行動に鬼塚含め、男たちが全員目を丸くしていた。
「女、テメェ! なにしやがる!!」
「なにしやがる、はこっちのセリフだっての」
俺はただ、帰り道に迷っていただけなのに。
「ふざけやがって!」
俺の返答に頭の血管が切れた、不良その四が、襲い掛かろうとしたとき。
ガッ!
そいつの右頬に鋭い拳が突き刺さった。
鬼塚だ。
あれ、あいつ、不良その三に殴られてたんじゃ……。
振り返ると、その不良その三はすでに地面に仰向けになって気絶していた。
みんなが俺に注目した一瞬の隙を突いて、鬼塚の周りにいた不良その三を一発でKOさせたようだ。
いや、強すぎだろ……。
「おい、お前はどうするんだ?」
五人中四人が意識を失い、残った一人に鬼塚が視線を向けると、
「ひ、ひいぃぃぃぃ!」
情けない声をあげて、逃げて行ってしまった。
仲間を全員見捨てるとは逆にいい度胸じゃないか。
俺は地面に落ちていた、先ほど千切られた鬼塚のネックレスを拾い上げる。
シンプルなシルバーの十字架があしらわれていた。
「お前、喧嘩めっちゃ強いんだな」
感心しながら、ネックレスを渡す。
「いや、強いんだな、じゃねーよ」
へ?
「なに男の喧嘩に混ざってんだ、あぶねーだろ」
鬼塚はネックレスを受け取りながら、俺に説教した。
感謝こそされど、まさか怒られるなんて。
いや、ここで俺が真実を伝えたら逆に信じてくれるかもしれない。
物は試しだ、言ってみよう。
「オレ、ジツハ、オトコナンダ」
「ロボットじゃねーか」
ピシャリと一蹴されてしまった。
まぁそうだよな。
俺も本気で信じさせようとは思ってなかったさ。
「やっぱお前、変な女だな」
あ。
笑った。
出会ってからずっと仏頂面だった鬼塚の笑顔を、俺は初めて見たのだった。
「鬼塚くんー! かっこいい~!」
綾小路と南雲とのエンカウントを終えてようやく帰路についたところで、悲鳴のような歓声が耳を貫いた。
黄色い歓声は、廊下の先にいる数人の女子のものだった。
四階の窓から身を乗り出して、外にいる誰かに手を振っている。
鬼塚くん……?
嫌な予感がしながらも、彼女たちの視線を追う。
案の定、外を歩いている鬼塚の姿。
「ウルセェ!」
鬼塚は彼女たちを見上げて怒鳴り散らかし、校門へと去ってしまった。
「きゃーーー!!」
それにまた歓声が上がる。
なんだかメロメロのご様子だ。
な、何がいいんだ、あの男の……!?
彼女いない歴=年齢の俺には、女子という生き物と、彼女たちが好む男の良さがまったくと言っていいほど理解できない。
乱暴な男がモテている嫉妬に、歯を食いしばりながら俺は校門へ向かった。
俺はこの学校──私立星空高等学校の一年生だ。
一年生の教室は四階にずらりと並んでおり、登校も下校も一番歩かされる学年となる。
なかなか広い学校で、グラウンドもテニスコートもバスケコートもある。
地元では、なかなか名の知れた高校なのかもしれない。
さて。
「ここはどこだ……?」
校門を出たはいいが、秒で道に迷った。
なんせ来た道と帰る道は景色が違うんだから、方向音痴には辛いものがある。
家のそばに派手な青色の看板をしたドラッグストアがあったことだけは、記憶に残っている。
そのドラッグストアにさえ辿り着けば、道が分かるんだけどな……。
俺は行ったり来たりを繰り返して、登校時に通ったであろう見覚えのある景色を探していた。
「あ」
「お」
ばったり。
鬼塚がコンビニから出てきた。
俺は知らない人のふりをして、回れ右をする。
しかし、鬼塚はそれを許してはくれなかった。
普通に肩を掴まれた。
なんだこいつ、馴れ馴れしいな。
「おい、女子に乱暴すんじゃねえ」
パンッと、その手を振り払う。
「なら、もっと女子らしく振る舞え」
ぐうの音も出ない。
鬼塚は、フンッと鼻で笑って、
「知り合いに挨拶くらいしねぇのか」
面倒臭い親戚みたいなことを言い出した。
こちとら、お前と知り合いになった覚えはない。
「コンニチハ。ソレデハ、サヨウナラ」
流れるように、俺は鬼塚に背を向ける。
「ロボットか、てめーは」
「ぐえ」
後ろ襟をつかまれ、俺は為す術もなくその場にとどまった。
観念して振り返り、鬼塚と向かい合う。
「何か、御用でしょうか……?」
ようやく、俺は愛想笑いを搾り出した。
鬼塚は、俺の早くどっか行けオーラをものともせず話し続ける。
「なんでお前ここにいんの? 家こっち?」
「青い看板の、大きなドラッグストアがあるほうです……」
「じゃあ、学校挟んで、反対側だけど?」
「…………」
「…………」
沈黙が流れる。
「……お前、まさか、学校からの帰り道で迷子になったのか?」
本物のアホを見るような目を向けられた。
俺は無言で踵を返し、来た道を戻る。
そうすれば、もう一度学校に戻れるはずだ。
「そっちは学校じゃねぇぞ」
「…………」
もう一度、踵を返す。
鬼塚の横を通り過ぎようとすると、再び、後ろ襟をつかまれた。
「ぐえ」
何回も潰れたカエルみたいな声を出させるな。
「待てって。お前、すげぇな、マジで」
鬼塚は、もう笑いを堪えきれていなかった。
何も言い返せない自分が悔しい。
「そのドラッグストアまで案内してやるから、ついてこいよ」
「…………」
従うしかない。
俺がうなずくと、鬼塚は歩き出した。
帰りが遅くなれば、きっとあのお母さんに怒られる。
鬼塚の広い背中を急ぎ足で追う。
身長差から発生する歩幅の違い。
鬼塚の一歩は俺の二倍近かった。
足の回転数を上げることで、引き離されないよう、なんとか食らいつく。
「……お前は、他の女子みてぇに、俺に媚びねぇんだな……」
唐突に、鬼塚が失礼なことを言い出した。
「は?」
媚びる?
誰が?
俺が?
お前に?
「自惚れんなよ」
おっと、本音が。
鬼塚が足を止めて、ギロリと俺を睨む。
まずい、力量差を忘れて喧嘩を売ってしまった。
「急に強気じゃねぇか、おい」
「オニヅカクン、カッコイー」
「都合悪くなるとロボットになんのやめろ」
見え透いたゴマスリは、通用しないようだった。
鬼塚はまた歩き始める。
どうやら、生意気な口は見逃してもらえたらしい。
……くそ、鬼塚が速ぇ。
五分ほど歩いて、早歩きゆえに多少息が上がってきた頃──
「おいおい、鬼塚ぁ! なに、お前女連れてんだよぉ!」
スキンヘッドの他校の男子生徒が鬼塚に絡んできた。
その数、五人。
「チッ、めんどくせぇのが来たな」
ちらりと鬼塚を盗み見る。
整った顔立ちをしかめて、心底厄介そうな態度だ。
……まぁ、不良同士のことだ。
きっとくだらない因縁があるのだろう。
俺には関係ないがな!
「あ、じゃあ、お友達が来たみたいだから、俺はこれで……」
俺は手早く美少女スマイルで取り繕って、退散しようとした。
しかし、やはりというか、そう上手くいくものではなかった。
なんせ、ここは少女漫画の世界なのだから。
「おい待てよぉ!」
「ぎゃっ」
他校の不良の一人が、俺の腕を乱暴に引っ張った。
抵抗も虚しく、あっさり両手首を後ろに回される。
おいおい、これって人質ってやつ?
「鬼塚ぁ! この女に痛い思いさせたくなかったら、大人しく俺らのサンドバッグになりなぁ!」
「汚ねぇ……!」
鬼塚は判断に迷う素振りをした。
いや、悩むな悩むな。
俺とお前の関係なんて、悩むほど深くもないだろう。
「へっへ、こうなりゃ、お前もおしまいだなぁ?」
鬼塚は呆気なく不良のひとりに、後ろから羽交い締めにされてしまった。
そんな鬼塚に、別の不良が腹パンをお見舞いする!
「うぐっ!」
鈍い音と呻き声をあげて、鬼塚がパンチに耐える。
二発、三発と、鬼塚を痛めつける手は止まりそうもない。
交代で殴り続ける不良の一人が、鬼塚の胸元に光るものに気づいた。
「なんだよ、このネックレスは!?」
「触んな!!」
ネックレスに手をかけられると、鬼塚の様子が豹変した。
どうやら、大事なものらしい。
「ダッセェな!」
その様子を見た不良は、ニタリと笑みを浮かべてそのネックレスを引きちぎった。
「テメェ!!」
ドゴォ!
鬼塚は一瞬で拘束を解き、背後にいた一人の腹をワンパンした。
「ぐはっ……!」
その一撃で地面に沈む不良その一。
「おい、暴れるな! こいつのこと、忘れたのか!?」
俺の腕を捕える不良その二が、震えた声で鬼塚に呼びかけた。
「……っ」
鬼塚は拘束されている俺と目が合った途端、大人しくなった。
「そうだよ、そうしてればいいんだ、よっ……!」
ガツッ!
不良その三が、鬼塚の頬を殴る。
鋭い眼光で睨みつけるだけで、鬼塚はやり返さない。
……さすがにバツが悪いぞ。
俺を拘束する係の、不良その二の位置を確認した。
喧嘩は慣れてないが、したことないわけじゃない。
「ふんっ!」
「うがっ!?」
不良その二の下アゴ目掛けて、頭突きを食らわせた。
ズシャァ!
ちょうどいいところに入ったのか、不良はそのまま目を回して地面に倒れ込む。
「石頭、舐めんなよ」
卑怯なことしやがって。
ピクピクと痙攣したまま、動かなくなった不良その二に向かって吐き捨てる。
俺の行動に鬼塚含め、男たちが全員目を丸くしていた。
「女、テメェ! なにしやがる!!」
「なにしやがる、はこっちのセリフだっての」
俺はただ、帰り道に迷っていただけなのに。
「ふざけやがって!」
俺の返答に頭の血管が切れた、不良その四が、襲い掛かろうとしたとき。
ガッ!
そいつの右頬に鋭い拳が突き刺さった。
鬼塚だ。
あれ、あいつ、不良その三に殴られてたんじゃ……。
振り返ると、その不良その三はすでに地面に仰向けになって気絶していた。
みんなが俺に注目した一瞬の隙を突いて、鬼塚の周りにいた不良その三を一発でKOさせたようだ。
いや、強すぎだろ……。
「おい、お前はどうするんだ?」
五人中四人が意識を失い、残った一人に鬼塚が視線を向けると、
「ひ、ひいぃぃぃぃ!」
情けない声をあげて、逃げて行ってしまった。
仲間を全員見捨てるとは逆にいい度胸じゃないか。
俺は地面に落ちていた、先ほど千切られた鬼塚のネックレスを拾い上げる。
シンプルなシルバーの十字架があしらわれていた。
「お前、喧嘩めっちゃ強いんだな」
感心しながら、ネックレスを渡す。
「いや、強いんだな、じゃねーよ」
へ?
「なに男の喧嘩に混ざってんだ、あぶねーだろ」
鬼塚はネックレスを受け取りながら、俺に説教した。
感謝こそされど、まさか怒られるなんて。
いや、ここで俺が真実を伝えたら逆に信じてくれるかもしれない。
物は試しだ、言ってみよう。
「オレ、ジツハ、オトコナンダ」
「ロボットじゃねーか」
ピシャリと一蹴されてしまった。
まぁそうだよな。
俺も本気で信じさせようとは思ってなかったさ。
「やっぱお前、変な女だな」
あ。
笑った。
出会ってからずっと仏頂面だった鬼塚の笑顔を、俺は初めて見たのだった。
0
あなたにおすすめの小説
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜
野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」
「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」
この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。
半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。
別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。
そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。
学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー
⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。
⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。
※表紙絵、挿絵はAI作成です。
※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる