双子の兄が幽霊になりまして。

よこすかなみ

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 ……た、祟る?
 祟りって……神様に祟られるとか、罰当たりとかの、あの祟り?
「あの……言ってる意味がよく……」
 聞き返すと、沙耶さんはわっと一気に喋り出した。
「だから! 三咲を祟りたいの! 今までいろんなおまじないとか試してみたけど、全然効果なかったのよ! 三咲を知ってて、しかも幽霊に協力してもらえたら、確実だと思わない!?」
「おまじない……とは……?」
「ノートに名前たくさん書いたり、お守り作ったり、よ。あとは……」
 あ。
 オレの中で、沙耶さんから、心が一歩引いていくのがわかる。
 この人、ちょっと痛い人だ。
「もう、大丈夫です……」
「そう? 他にもあるんだけれど」
 指折り数えながら実践してきたおまじないを思い出す沙耶さんに、ストップをかけた。
 空を見ると、目が合った。空もちょっと複雑そうにしている。
 ……同じこと考えてたな、こりゃ。
 幽霊が見えているオレが、おまじないを否定するのも、なんだかおかしい話だけれども。
 祟るとか、おまじないとか──ちょっと行き過ぎちゃった占い、って感じだろう。
「どう? 手伝ってくれないかしら?」
「いや、さすがに、お世話になってる先輩にそんなことは……」
 占いもおまじないも信じていないオレだけれども、割と仲良しなほうの先輩に向ける祟りを手伝うっていうのは、二つ返事で了承できることじゃない。
 ブンブンと両手と頭を横に振って、拒絶の意思を示すオレに、沙耶さんはぷくっと頬を膨らませた。
 ……そんなかわいい顔したって、無理なものは無理だって……!
「わたしには、空くんが成仏する方法わかるんだけどなー?」
 チラ、チラ、と視線を寄越してくる沙耶さん。
 空が成仏する方法って……。
「それって、オレがスタメンになる以外の方法ってことですか?」
「協力してくれるなら教えてあげなくもないわよ」
 え、えぇ~……?
 予想外の交換条件に、オレは即決できずに、困ってしまう。
 三咲先輩を祟る手伝いをする代わりに、空を早く成仏させることができる──ってことだよな?
 ……空はどうなんだろう?
 そこまでして、早く成仏したいのかな?
「空……」
『…………』
 顔を見ただけで分かった。
 こいつ、沙耶さんのこと、めちゃくちゃ疑ってるわ……。
 早く成仏するしないの問題以前に、沙耶さんを信用していいかどうかを悩んでいるようだった。
 オレが決めるしかないか……。
「どうしてそこまでして、三咲先輩を祟り? たいんですか?」
「…………」
 沙耶さんは目を泳がせる。一呼吸置いて「話したほうがいいわよね……」と、自分を納得させるように、つぶやいた。
「あいつは、三咲は──わたしを裏切ったのよ」
「『裏切った?』」
 空とハモって聞き返してしまった。
「絶対に来るって……何があっても絶対に来てくれるって、約束したのに──三咲は来なかったの」
 ぎゅ、と拳を強く握りしめる沙耶さん。
 会うって約束したのに来てくれなかったって……デートをドタキャンされたってことか?
「……沙耶さんって、三咲先輩と付き合ってたんですか?」
「そんなんじゃないわよ!!」
 ものすごい剣幕で怒られた。
 否定する割には、顔赤くなってるし……恋人だったけど、三咲先輩に振られたとか?
 それなら、約束を破った元カレをちょっと懲らしめたい、なんて気持ちもわからなくもない。
「付き合ってるとか、そんなんじゃなくて……!」
 沙耶さんは、わたわたと言い訳を取りつくろっている。
 ……待てよ?
 三咲先輩とは、もう過去の人っぽいし、めちゃくちゃ大変な思いをさせたいわけでもないっぽいし──ちょっとした祟りとやらに協力すれば、このあと、沙耶さんといい関係になれたりして……!?
『三咲先輩はイケメンなんだから、陸とは天と地ほどの差があるよ』
「う、うるせ~な~!」
 じと~とした目で、空がオレを見ていた。
 何も言ってないのに、考えていることを読まれた……!
 これだから、双子って面倒なんだ……!
「とにかく、三咲の邪魔をしたいの! 協力してくれない!?」
 沙耶さんはオレの襟首をつかんで、ぐいぐいと前後に揺さぶった。
「わ、わわ、わかりました! そんなにひどいことじゃないなら、協力しますから!」
「本当!? ありがとう!」
 もう月も出ている時間だというのに、沙耶さんの笑顔は、とても眩しかった。
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