戦闘力のないハズレ才能【翻訳】で古代魔導書を読み漁っていたら世界最強になってました

蒼乃白兎

文字の大きさ
4 / 31

クローディア第二王女

しおりを挟む
 ノアに助けられた二人は、アルデハイム家の屋敷に訪れた。

「わざわざ我が屋敷までお越しいただき、ありがとうございます。クローディア殿

 ヒルデガンドはノアが助けた女性に向かってお辞儀をした。
 その女性の名はクローディア。
 ──アルデハイム領が属するラスデア王国の第二王女である。

「こちらこそお招き頂き、ありがとうございます」

 クローディアもヒルデガンドのお辞儀に応え、挨拶を返した。

「クローディア殿下、お初にお目にかかります。わたくし、グレン・アルデハイムと申します」

 ヒルデガンドの隣に立つグレンも続け様に挨拶をした。

「ええ、よろしくお願いしますね」

 クローディアはグレンに微笑んだ。

(な、なんて可愛い子なんだ……!)

 その笑顔にグレンは一目惚れしてしまった。

(ふふ……こんな可愛い子が将来は俺の奥さんになるとはなぁ!)

 クローディアがアルデハイム家に訪れた理由はお見合いだった。
 アルデハイム家が更なる地位を築くための政略結婚だ。
 本来ならばアルデハイム家の者が王都へ出向くはずだった。
 しかし、クローディアの我儘で王女側が出向く形となったのだ。

 いつも宮殿内で生活するクローディアにとって、このような遠出をする機会など滅多に無かった。
 だからクローディアはあまり気乗りしなかったお見合いも受け、アルデハイムの屋敷に訪れたわけだ。

「しかし、道中何事もなかったようで何よりです」

 ヒルデガンドは王族のような自分よりも地位の高い者の前では高圧的な態度を一切取らない。
 ノアに対する態度とは真逆だった。

「いえ、それが……実はウィンドタイガーに襲われてしまいまして」
「ウィ、ウィンドタイガーですと!? A級モンスターではございませんか! よくぞご無事で……」
「実は護衛が手も足も出ない中、一人の男性に助けて頂いたのです。魔法で紫の炎を放ち、ウィンドタイガーを一撃で仕留めてしまったのです」

 クローディアはその時のことを思い出すと、少し胸が高鳴った。

「ほう。紫の炎……ですか。そのような魔法使いがいるとは驚きですな」
「とても礼儀の正しい方でした。綺麗な黒髪で真っ直ぐとした目をしていました。その者はノアという名の魔法使いなのですが、ヒルデガンド卿はご存知ですか?」

 クローディアの発言にヒルデガンドは内心焦る。

(黒髪で名前がノアだと……? まさかアイツのことじゃないだろうな……。ふっ、そんなわけがない。アイツは魔法も使えないような無能だ。同一人物であるはずがなかろう)

 そう判断したヒルデガンドは冷静さを取り戻した。

「知りませんなぁ。しかし、火属性の魔法の使い手ならグレンも超一流と言えるでしょう。クローディア殿下のお眼鏡にかなうと思いますぞ」

 ヒルデガンドがそう言うと、グレンは表情を引き締めた。

 彼らの反応を見て、クローディアは冷ややかな気持ちになった。




「──では、アルデハイム家の長男であるノア・アルデハイムはどこにいらっしゃるのでしょうか?」




 クローディアの発言にヒルデガンドとグレンは面を食らった。
 まさか、ここでノアの名前が出てくるとは予想だにしていなかった。

 クローディアは一度ノアの姿を見たことがあった。

 それはノアが才能を鑑定される前のこと。
 城で開催されたパーティにアルデハイム家の長男としてノアは出席していた。
 そのときの記憶をクローディアは思い出したのだ。

 アルデハイムに向かう、という状況下でなければ記憶の引き出しを見つけるのは難しかっただろう。
 クローディアがノアのことを思い出せたのは完全にタイミングが良かった。

「……クローディア殿下、我が家にノアという者はおりません。それに長男はここにいるグレンでございます」
「ええ、そうですとも。そのノアという奴が使った魔法が何なのかは知りませんが、よろしければ私がそれ以上の火属性魔法をお見せして差し上げましょうか?」

 グレンはドヤ顔でそう言い放った。

(決まった……ッ! 今の俺めちゃくちゃカッコいいだろ! これはクローディア殿下も惚れること間違いなしだぜ!)

 ──と、グレンは思っていたのである。
 だが、クローディアはそれを一瞥(いちべつ)して流す。

「そうですか。では、お見合いの話は保留にさせて頂きます。一度王都に戻ってからアルデハイム家の事情を調べ上げてきます」
「な、なにをおっしゃるのですか! そんなことをせずともノアという者は我が家におりません! それに道中で出会した魔物もウィンドタイガーでは無かったのかもしれません。気のせいという可能性も否定できないでしょう。このあたりは滅多にA級モンスターが出現することもないですから。そのノアという者はE級、D級のモンスターを一撃で倒しただけかもしれません」

 ヒルデガンドは慌てて、クローディアの説得を試みた。
 しかし、それはクローディアの逆鱗に触れるだけであった。

「……なるほど、ヒルデガンド様は私の護衛がE級、D級のモンスターに遅れを取る、相手にならない、と言いたい訳ですね」
「い、いえっ! そのような意図は一切ありませんっ……! あくまでも可能性の話をしただけであって……!」
「分かりました。とにかくここでの会話は何も意味を持たないようですね。一度王都に帰らせて頂きます。それではご機嫌よう」

 クローディアは護衛を引き連れて、ヒルデガンドの声を聞くこともなく去って行った。
 ヒルデガンドは地面に伏して、悔しそうに拳を握りしめていた。

「……父上、私の結婚はどうなるのでしょう?」
「バカもんッ! そんなことを言っておる場合ではないわ!」
「は、はいっ! も、申し訳ございません!」
「……これはただちにノアを連れ戻さねばなるまい! くっ……、こうなっては俺が直々に探しに行くしかないか」

 ヒルデガンドに残された時間はそう多くはない。
 クローディアよりも先にノアの居場所を突き止めないと、アルデハイム家が落ちこぼれを追放したという事実が広まってしまい、一気に評判が落ちてしまうことだろう。
 それだけは阻止しなくてはならない。

 ヒルデガンドはアルデハイム家の当主に恥じないレベルの超一流の魔法使いだ。
 ノアをクローディアよりも先に我が家に連れ戻すことぐらい造作もない。
 すぐさま捜索の準備を終え、ヒルデガンドは屋敷を出発するのだった。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...